人間が大好きだった神様

あらすじ

「どうして人は争い合うのだろう」 人間が大好きな神様が、彼らのために平和な世界を模索する。 良かれと思った介入は、次第に世界を変えていき……。 ※ハッピーエンドではありません（ビターエンドです） ※神様視点の寓話（ぐうわ）です この物語は、自作の歌詞から生まれました。 【原作歌詞】 人間が大好きな神様がおりました 「どうして人は争い合うのだろう」 「そうしなければ生きられない世界だろうか？」 確かに一部はそうでした 世界から争いを消すために 貧富の差を無くしました それでも 些細なことで 人は憎しみ合いました 争いは無くなりませんでした 争いを止めるために 争いを起こした者 全てを神の力で罰を与えました 争いは無くなりました 静まり返った街で 人々は俯き 罰を恐れ 息を潜めるだけ 世界が幸せになるように 誰かに貰った優しさを 必ず返さなければいけないルールを作りました 「ありがとう」が世界に溢れました 交わされる「ありがとう」は 温度のない 虚しい義務 誰も心から笑わない 「幸せとは、なんだ？」 神様はわからなくなりました もう二度と不幸をうまないために 人から心を奪いました 世界から不幸は消えました 涙も 怒りも 喜びも消え ただ決められた「幸福」をなぞる 美しい人形だけが並んでいた 神が好きだった人間達は そこにはいませんでした 完璧な秩序の世界で 神様はたった独り あんなに憎んだ争いも あんなに望んだ平和も もう何の意味も持たない 愚かで 矛盾して それでも必死に生きていた あの輝きをこの手で消してしまった 人間が大好きだった神様は もうどこにもいませんでした