同じAI、違う結果

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2025/11/13 📝 3,849文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

家庭教師AIの話。

本文

1僕に合った方法

教科書を開いたまま、僕は窓の外を眺めていた。

「蓮くん、聞いてる?」

家庭教師の先生の声が遠くに聞こえる。聞いてる。ちゃんと聞いてる。でも、今は頭が働かない。言葉が耳を通り抜けて、どこかへ消えていく。

「集中しなさい。もう六年生なんだから」

分かってる。分かってるけど、できない。時計を見る。午後四時。この時間は、いつも頭がぼんやりする。夕方の光が苦手なのかもしれない。それとも、お腹が空いているのかもしれない。理由は分からない。ただ、今は勉強できない。

「次、この問題解いてみて」

先生がノートを指差す。僕は鉛筆を持つ。でも、手が動かない。数字が踊っているように見える。

「どうしたの? 簡単な問題だよ」

簡単……なのかな。午前中だったら、すぐに解けたかもしれない。昨日の夜だったら、できたかもしれない。でも、今は違う。

「蓮、ちゃんとやりなさい」

リビングからお母さんの声がした。

先生が溜息をついた。その音が、胸に刺さる。

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「もう無理です」

先生が帰った後、お母さんはそう言った。

「三人目よ。三人目の家庭教師。もう、どうしたらいいのか……」

お母さんは疲れた顔をしていた。僕のせいだ。僕がちゃんとできないから。

「蓮は頭が悪いわけじゃないのよ。学校のテストだって、できるときはできてるじゃない」

そう、できるときは、できる。でも、「このとき」と決められると、できなくなる。それが、僕の問題だった。

「これ、試してみない?」

お母さんがタブレットを見せてくれた。画面には「家庭教師AI」と書いてある。

「AIが先生になってくれるの。時間は決めなくていいんですって。蓮が勉強したいときに、使えるの」

僕の目が輝いた。

「本当?」

「一日二時間までって決まりはあるけど、その二時間をいつ使うかは、蓮が決めていいって」

それは、僕が求めていたものだった。

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家庭教師AIは、思った以上に良かった。

朝、目が覚めて、「今なら勉強できる」と思ったら起動する。夜、お風呂上がりに「やりたい」と思ったら使う。

AIは怒らない。急かさない。僕のペースに合わせてくれる。

「蓮くん、よくできました。では、次の問題に進みましょう」

声は優しく、説明は分かりやすい。何度聞いても、同じトーンで答えてくれる。

一週間後、お母さんが驚いた顔をした。

「蓮、この模試の結果……すごいじゃない!」

僕の偏差値が、五ポイント上がっていた。

「本当?」

「本当よ! すごい、すごいわ!」

お母さんは僕を抱きしめた。久しぶりに見る、お母さんの笑顔だった。

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次の日、学校で。

教室で、隣の席の颯太が声をかけてきた。

「なあ、蓮。最近、すごくね?」

「え?」

「模試の結果。めっちゃ上がってたじゃん。どうやったの?」

颯太は僕と同じ塾に通っている。中学受験を目指す仲間だった。颯太の成績は、いつも僕より上だった。

「あ、うん……家庭教師、変えたんだ」

「人間の先生?」

「ううん、AIの」

「AI?」

颯太の目が大きくなった。

「家庭教師AIってやつ。時間が自由に決められるんだ」

「へえ……」

颯太は何か考え込むような顔をした。

「それ、いいな」

僕は特に何も言わなかった。ただ、颯太がどこか興奮しているのが分かった。

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2君に合わなかった自由

それから一週間後、颯太が嬉しそうに話しかけてきた。

「蓮! 俺も家庭教師AI使うことになったわ!」

「そうなんだ」

「親に『蓮が使ってるやつ、俺も使いたい』って言ったらさ、『それなら専用のスマホが必要ね』って! やっと、やっとスマホ手に入れた!」

颯太は新しいスマホを見せびらかした。画面はピカピカで、最新機種だった。

「良かったね」

「だろ? 実は受験終わったらもらえる約束だったんだけど、前倒しだわ。ラッキー」

颯太は笑っていた。

「人間の家庭教師、やめたんだ。もう必要ないって」

「そうなんだ」

僕は少し不安になった。颯太の家庭教師、すごく評判が良い人だったはずだ。

「颯太、今までの先生、良かったんじゃないの?」

「まあね。でも、AIの方が便利じゃん。それに、俺もう合格圏内だし。余裕余裕」

颯太は自信満々だった。

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最初の一週間は、颯太も真面目に家庭教師AIを使っているようだった。

「けっこういいわ、これ。蓮の言う通り、時間が自由なのがいい」

でも、二週間目から、颯太の様子が変わった。

「昨日、新しいゲームダウンロードしちゃってさ。めっちゃ面白いんだわ」

休み時間、颯太はずっとスマホを見ていた。

「勉強は?」

「あ、うん。やってるやってる。後でやるから」

三週間目、颯太はゲームの話ばかりするようになった。

「このキャラ、レア度最高なんだぜ。ガチャで出たんだ」

「……」

「あ、勉強? ちゃんとやってるって。一日二時間って決まってるし」

でも、僕には分かった。颯太の目に、疲れが見えていた。夜遅くまでスマホを見ている顔だった。

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一ヶ月後、模試の結果が返ってきた。

僕の偏差値は、さらに二ポイント上がっていた。お母さんは大喜びだった。

「蓮、すごい! この調子よ!」

一方、颯太は青い顔をしていた。

「どうしたの?」

「……いや、なんでもない」

でも、颯太の手に握られていた成績表が見えた。偏差値が、五ポイント下がっていた。

「颯太……」

「なんでもないって!」

颯太は僕を睨んだ。初めて見る、颯太の怒った顔だった。

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それからの颯太は、僕を避けるようになった。

話しかけても、素っ気ない返事しか返ってこない。休み時間は、一人でスマホを見ている。

塾の先生が颯太を呼び出していた。

「颯斗くん、最近、宿題が……」

先生の声が廊下まで聞こえた。

颯太は、叱られていた。

教室に戻ってきた颯太の顔は、真っ赤だった。

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受験まで、あと一ヶ月。

最後の模試で、僕は志望校の合格圏内に入った。お母さんは泣いて喜んでいた。

「蓮、本当によく頑張ったわね」

僕も嬉しかった。家庭教師AIのおかげだった。自分のペースで、自分のタイミングで勉強できたから。

でも、颯太のことが気になった。

最後の模試で、颯太の偏差値はさらに下がっていた。もう、志望校は厳しい数字だった。

颯太の席は、いつも空っぽだった。塾を休んでいるのかもしれない。

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3それぞれのペース

受験当日。

会場で、颯太を見かけた。

「颯太」

僕は声をかけた。

颯太は振り向いた。目の下に、濃いクマができていた。

「……蓮」

「頑張ろうね」

颯太は何も言わなかった。ただ、小さく頷いただけだった。

試験は、難しかった。でも、僕は落ち着いて解けた。家庭教師AIと練習した問題が、たくさん出た。

颯太は、どうだっただろう。

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合格発表の日。

僕の受験番号は、掲示板にあった。

「あった! 蓮、あったわ!」

お母さんが叫んだ。僕も、思わず笑顔になった。

「やったね、お母さん」

「蓮が頑張ったのよ。本当に、本当によく頑張った」

家に帰って、お母さんは家庭教師AIに向かって言った。

「ありがとうございました。蓮のペースに合わせてくれて」

AIは答えなかった。でも、画面には「おめでとうございます」の文字が表示されていた。

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その日の夕方、颯太から電話がかかってきた。

「蓮……受かった?」

「うん」

「……そっか。おめでとう」

「颯太は?」

沈黙。

長い、長い沈黙。

「……ダメだった」

僕は何も言えなかった。

「なんでだよ……俺、ちゃんとやってたのに……」

颯太の声が震えていた。

「家庭教師AI、全然合わなかった。相性が最悪だった。だから、俺……」

「颯太……」

「親には、AIのせいだって言った。そしたら、親がログ見たんだよ。使用時間とか、全部記録されてるんだって」

「……」

「バレた。全部バレた。ゲームばっかりやって、勉強ほとんどしてなかったって。嘘ついてたのも、全部」

颯太は泣いていた。

「スマホ、取り上げられた。約束してたんだ。受からなかったら没収って。自業自得だって、親に言われた」

僕は、何も言えなかった。

「蓮は……ちゃんとやってたんだな」

「うん」

「俺、ダメだったわ。人間の先生の方が良かった。あの先生、厳しかったけど、ちゃんと見ててくれたんだな。サボれなかったから、やってたんだ、俺」

颯太は笑った。泣きながら、笑っていた。

「俺には、合わなかったんだな。自由って」

電話は、そこで切れた。

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僕は、タブレットを見た。

家庭教師AIの画面。僕にとっては、最高の先生だった。

でも、颯太にとっては、違った。

同じAI。同じシステム。

なのに、結果は正反対。

お母さんが言っていた。

「人には、合う方法と合わない方法があるのよ」

僕には、自由が合っていた。自分のペースで、自分のタイミングで。

颯太には、管理が合っていた。決まった時間に、誰かに見てもらって。

AIは、道具だった。良いものでも、悪いものでもない。

使う人次第。その人に合っているかどうか。

僕は、運が良かっただけなのかもしれない。

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春。

僕は新しい中学の制服を着て、鏡の前に立った。

「似合ってるわよ、蓮」

お母さんが笑っていた。

スマホが鳴った。颯太からだった。

『俺、地元の中学行くことになった。また頑張るわ』

僕は返信した。

『うん。頑張ろうね』

颯太なら、きっと大丈夫だ。今度は、自分に合った方法を見つけられる。

窓の外、桜が咲いていた。

僕は、タブレットを閉じた。家庭教師AIとは、もうお別れだ。

「ありがとう」

小さく呟いた。

AIは答えなかった。でも、それでよかった。

僕は、前を向いて歩き出した。

それぞれの道を、それぞれのペースで。

**(完)**

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作者について

二葉双葉

二葉双葉

プロフィール画像もAIで作成しました。 短編集が好きなのでしばらくはショートショートをメインに投稿しますが、後々は長編にも挑戦したいです。 AI使用前提のサイトなのでAIとの日常をソフトなSFにし...

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