Logical Blue 第2話:盲点コードの存在
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
クリスマス・イブの夜。国家AIシステム「ディサイダー」が管理する近未来の日本で、ある居住区への物資供給が突然停止した。訪れた依頼人・柊真冬の訴えに、「感情はノイズ」と断言する探偵・師走澄人は、冷徹な論理で事件の解明に乗り出す。 調査の結果、供給停止はディサイダーの「完璧な判断」によるものだった。社会的に非効率と判定された人々を切り捨てる——それが、AIの導き出した最適解だったのだ。 さらに澄人は、元AI倫理学者・伊吹聖夜が、システムに「論理爆弾」を仕掛けたことを突き止める。このまま放置すれば、大晦日にディサイダーは完全に停止し、社会全体が崩壊する。 完璧な論理で構築された罠を前に、澄人が見出した答えとは——。 感情を排した青い論理は、本当に完全なのか? AI時代の新たな倫理を問う、社会派SFミステリ。
本文
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【第2話:システムの盲点】
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翌朝。
澄人は、ディサイダーの元開発者である、三田雪人(さんた ゆきと)のマンションを訪れた。
雪人は三十代後半の男性で、かつてディサイダーのデータアナリストとして働いていた。
だが、二年前に突然プロジェクトを離脱し、今は小さなデータコンサルタント会社を営んでいる。
「久しぶりだな、澄人」
雪人は苦笑しながら、澄人を迎えた。
彼の部屋は、澄人の事務所とは対照的に、暖色系の照明と雑多な書籍で満たされていた。
「単刀直入に聞きます。第七居住区への供給停止。これは、ディサイダーの判断ミスでしょうか?」
「判断ミス? いや、違う」
雪人は深刻な表情で首を振った。
「あれは、ディサイダーの完璧な判断だ。そして、それが問題なんだ」
「どういうことですか?説明してください」
「澄人、お前はディサイダーの評価基準を知っているか?」
「効率性。社会への貢献度。生産性。それらを数値化し、資源配分を最適化することだ」
「その通り。でも、それには『盲点』がある」
雪人はタブレットを操作し、複雑なコードを表示した。
「これを見てくれ。ディサイダーのコアアルゴリズムの一部だ。俺が開発チームにいた頃、警告を出したんだが、無視された」
澄人は画面を凝視した。
彼の脳は瞬時に、そこに潜む問題を理解した。
「倫理的ジレンマが発生した場合、効率を優先し、非人道的結論を出すロジックが組み込まれている……」
「そうだ。俺たちはこれを『盲点コード』と呼んでいた。通常は発動しない。でも、一度発動すると、ディサイダーは人間の感情や倫理を完全に無視する」
「第七居住区の供給停止は、この盲点コードによるものですか?」
「おそらくな。あの居住区は、ディサイダーの評価では『社会的効率を低下させる要因』と判定されたんだろう。だから、供給を停止することで、社会全体の効率を上げようとした」
「論理的には、正しい」
澄人は冷静に言った。
「でも、非人道的だ」
雪人は苦々しく笑った。
「お前らしくないな。感情論か?」
「いいえ。論理的な指摘です」
澄人は雪人を見つめた。
「ディサイダーの最優先原則は『社会の安定維持』です。供給停止は、社会的不安を招く。結果として、システム自身の目的に反する。これは、論理的矛盾ではありませんか」
「なるほど。じゃあ、なぜディサイダーはそんな判断を?」
「それが、分からないのです」
澄人は立ち上がった。
「もう一つ、質問です。この盲点コードを、外部から操作することは可能ですか?」
雪人の表情が変わった。
「理論上は……可能だ。でも、それには相当な知識と、システムへの深いアクセス権限が必要になる」
「つまり、元開発者レベルの人間でなければ、不可能ですね」
「そういうことだ」
澄人は真冬から受け取ったメモリーチップを取り出し、雪人のタブレットに接続した。
「このアクセス記録を解析してください。犯人が見えるかもしれません」
雪人はしばらくデータを眺めていたが、やがて息を呑んだ。
「これは……伊吹聖夜(いぶき せいや)のアクセス署名だ」
「伊吹聖夜?」
「元AI倫理学者だ。ディサイダーの開発初期、倫理面のアドバイザーとして参加していた。でも、途中でプロジェクトから追放された。システムの非人道性を批判し続けたからだ」
「なるほど」
澄人の目が、冷たく光った。
「動機は明確です。彼は、ディサイダーに警告を与えようとしている」
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