第11話 近づく‥‥
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
田中が病室から出ていき、数十分後に彼女が。
本文
病室のカーテン越しに、午後の光が差し込んでいる。
消毒液の匂いにも、少しずつ慣れてきた。
ベッドに腰を下ろしたまま、
下川大智はぼんやりと天井を見つめていた。
(……色々ありすぎだろ……)
仮面ライダー。
エンジギア。
ヨシケンさん。
クロム。
頭が追いつかない。
そんな中——
「失礼します」
カーテンがそっと開いた。
白河莉沙だった。
白衣ではなく、今日は私服。
落ち着いた色のカーディガンに、
ラフなパンツスタイル。
それだけで、
なぜか病室の空気が一気に柔らぐ。
「……あ、白河さん」
「大智さん、体調どう?」
「え、あ……まあ……
生きてはいます」
自分でも間抜けな答えだと思った。
莉沙は小さく笑い、
ベッドの横の椅子に腰を下ろす。
「それなら合格かな」
その距離が、近い。
意識すると、
急に心臓の音がうるさくなる。
(やめろ、俺……
今は心臓エンジギアだろ……
変な動きすんな……)
しばらく二人とも黙ったまま。
先に口を開いたのは莉沙だった。
「……怖かった?」
大智は一瞬迷ってから、正直に答える。
「……はい。
めちゃくちゃ」
「だよね」
否定しない。
笑いもしない。
それが、妙に救われる。
「……でも」
莉沙は少しだけ視線を落とし、続けた。
「それでも、
私の前に立ってくれた」
「……」
「正直……
ちょっと……
いや、かなり……」
そこで言葉を切る。
大智「……?」
莉沙は少し頬を赤らめ、
小さく咳払いした。
「……かっこよかった」
――ドクン。
エンジギアが変なタイミングで
存在感を主張した気がした。
「っ……」
大智「そ、そんなこと……
な、ないです……!」
思わず視線を逸らす。
耳が熱い。
「……ふふ」
莉沙が笑う。
「顔、赤い」
「気のせいです!」
莉沙は、
ふと大智の胸元を見つめた。
「……そこ」
「え?」
「エンジギア……
違和感ない?」
「……ありますよ。
常に“何か入ってる感”あります」
「……そっか」
一瞬、
彼女の表情が曇る。
「……私が……
巻き込んだよね」
大智は慌てて首を振った。
「ち、違います!
俺が勝手に……」
「……でも」
莉沙は言葉を遮るように、
そっと手を伸ばした。
大智の胸元——
エンジギアの上に、
軽く、指先が触れる。
一瞬の、静電気みたいな感覚。
「っ……!?」
「……ごめん」
すぐに手を引っ込める。
「でも……
生きててくれて、よかった」
その声は、
研究者でも、指導者でもなく。
ただの“女の子”のものだった。
「……白河さん」
「なに?」
「……これ、
仕事ですか?」
莉沙は一瞬きょとんとしてから、
くすっと笑った。
「……さあ?」
「……ずるい」
「ふふ」
「でも……
嫌じゃないでしょ?」
「……」
大智は、
観念したように小さく頷く。
「……嫌じゃないです」
莉沙の笑顔が、
少しだけ柔らかくなる。
「よかった」
二人の間に、
さっきより自然な沈黙が流れた。
病室の時計が、静かに時を刻む。
戦いはまだ終わっていない。
ネオクレイドも、危険個体も、クロムも。
それでも、この一瞬だけは——
「……大智さん」
「はい」
「退院したら……
ちゃんと、話そう」
「……はい」
その約束が、
次の戦いへの小さな支えになる気がした。
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