黒魔女さんからお手紙ついた【罪】20話

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2025/12/23 📚 シリーズ: 黒魔女さんからお手紙ついた 📝 5,607文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

魔法学校入学のために金貨3億枚の借金を背負ったヴェロア

本文

ヴェロアとミエリの入る寮は、魔法学校内の東の端にあった。グラウンドの脇に噴水と花壇の中庭があり、それを臨むようにして男子寮と女子寮が、直角に位置するように建てられている。

女子寮の裏には小川が流れていて、その先は魔法学校の外。対して男子寮は、その間に多少の距離はあるものの、校舎と並ぶように位置している。そしてその裏手はちょっとした森になっていて、そちらはどこまでが魔法学校の敷地内なのかは、定かではなかった。

女子寮の裏から続く塀も森の中へと続いてはいるが、それも曖昧な所で途切れているのだった。

すっかりと夜も更けた時間帯。当然グラウンドには、誰の姿もない。グラウンドと噴水のある中庭。その間にある曰く付きの大樹。それに寄り添うようにしてある時計台の下に、ヴェロアとアリエス、そしてミエリの姿があった。

その時計は、日付を跨ぐまでにはまだ大分あることを示していたが、今宵は雲が出ていないため、月明かりでも結構遠くまで視界がきいた。

「どうやら、今日は他のグループはいないようね。まあ、その方が好都合なんだけど」

「そりゃあそうでしょ。昼間あれだけ怪我をしたレインスの姿を見せられちゃね。今日はみんな、ためらって当然だと思うよ?」

「なによ、だらしない後輩たちね。ワタシのためとか言ってたくせにさ」

なぜか先輩風を吹かせたアリエス。その姿が得意満面だったため、ただ言いたいだけなのだろうと思うのだった。

「なに? いて欲しいの? いて欲しくないの?」

「い、いなくていいに決まってるでしょ!」

「どうしたいの?」

「ん? 探すに決まってるじゃない」

腰に手を当て、威張るようにそう返すアリエスを見ながら。

「そういう意味じゃないんだけど……」

「でもさぁ、どこから探せばいいのかな?」

こちらはキョロキョロと辺りに目を向けているミエリ。忙しなくその対象者を探していた。

一段高くなってる、花壇の石積に乗ったアリエスは、演説でもするかのように言い放つ。

「そこは召喚主である、このアリエス様に任せなさい!」

「え? アリエス、居場所がわかるの?」

「わあ、すごい。わたしは回復しか取り柄がないから、憧れちゃう」

「と、言いたいところだけど、無理なのよね」

そう言うと、小さい身体で胸を張ったまま「アハハ」と笑って誤魔化した。以前聞いたときに無理だと言っていたのを、今さらながらに思い出す。

それは結局、なんの従者も策も講じられなかった自分のことを気にして言ってくれているのだろう、気をつかって場を和ませてくれたのだと考えるのだった。

それでもアリエスは、ポケットをごそごそとまさぐると、そこから動物の骨を数本取り出した。

「まあ、今日のところは、これでしらみ潰しに探すことにしましょ」

言ってそれを頭上に向けてばら蒔くと、地面につく頃には全てが体長十五センチほどのスケルトンになっていた。

その召喚の早さと精度、そして十体近くというその数に思わず見入ってしまうのだった。いったいどれだけの鍛練を重ねたら、アリエスのその域に達することができるのか、深く考えてしまうのだった。

すると、視線を向けるアリエスに気づく。

「え? なに?」

「なに? じゃないでしょう? ヴェロアも早く従者を召喚しなさいよ」

「え? 僕もやるの?」

まるで予想していなかったとばかりの反応をするヴェロア。

当然すぐに雷が降り注ぐ。

「当たり前でしょ! 今日の主役なんだから」

首をすくめて平謝りするしかないヴェロアを、兄弟ゲンカを見守る母親のような暖かい目で見て微笑むミエリ。

「か弱い女の子のワタシだけに探させるつもりなの?」

「探すのはアリエスじゃなくて、従者じゃないか。それに……」

と言いかけて慌てて口をつぐむ。その先が「僕より十も歳上じゃないか」などとは言ったが最後、どんな目に遭うか、それは想像するのも恐ろしい。

「それに?」

「いいえ。なんでもありません」

「とにかく、ヴェロアは練習中の鳥の従者を使って、空から探しなさいよ」

「なんで練習中の従者のことを知ってるの?」

「当然アイリーシェから、逐一報告は受けてるからね。さあ、やってごらん」

促されるままに紙で作った鳥人形を出すと、それを花壇の囲い石の上に置く。ゆっくりと目を閉じて集中すると、精霊エネルギーを集め始めたのだった。

属性にとらわれないで済む分だけ時間はかからない。加えてクラスメイトからの突き刺さるような視線を感じないで済むこともあり、容易く行えるはずだった。

しかしヴェロアの耳には、思いがけずボソボソとした二人の話し声が届いてくるのだった。

「あの、これ何ですか?」

「ん? 本人は鳥のつもりらしいよ」

「ええ? 鳥なのに、こんなに首が長いの?」

「ほら、そこは本人のセンスとイメージだから……」

「それに、顔もなんだか大きい気がする…… でも、ちょっと可愛いかも」

「ごめんね、ミエリちゃん。これでも本人はいたって真剣なのよ……」

「うるさいなぁ! 集中できないよ!」

ヴェロアの我慢は、すぐに限界を迎えたのだった。二人は目配せすると、揃って首をすくめて口をつぐんだ。怒らせることを、むしろ二人は楽しんでいるのではないかと、そんな考えが浮かぶと静かになったというのに一向に集中できやしない。

「動かないですね」

「静かに。ヴェロアの集中ができないから」

小声だが、そんなやり取りがちゃんと届く。額に青筋を立てながらも、どうにか錬成することのできた魂を、ようやく注入することに成功する。

魂を受け入れた鳥人形は弱々しく光り始めると、徐々にその度合いを強めていった。

バサッっと、翼の部分が真っ先に動き出すと、全体を起こす。

「わぁ、動いた」

ヴェロアの召喚憑依魔法をはじめて目の当たりにして、嬉しそうに声を上げたミエリは、それがまるで自分のことのように手放しで喜んでくれたのだった。

しかしそこはヴェロアの魔法。そうも順調にことが運ぶはずはもちろんない。動いたはずの鳥人形がヘタると、ミエリは悲しそうな視線を飛ばして叱咤する。

「起きて! ほら、頑張って!」

いっさいの照れも迷いも見せることなく、ただ目の前のことに対して純粋に感情を向けるミエリの姿に感化されたのか、拳を握り同じように熱い視線をアリエスも送るのだった。

「バカ、もっと気合いをいれなさいよ!」

「お願い、立って!」

「動け!」

「動いて、飛んで!」

額に張った筋は健在だったが、そんな二人のやり取りも次第にありがたいと思えるようになってきた。

今の二人は純粋に、自分の頼りない魔法を応援してくれているのだと思うと、なんとしても成功させてやるという想いを強くするのだった。

そんなヴェロアの意思をようやく受け取ったかのように、力強くはばたきだした鳥人形は、次第にその姿を生身の鳥へと変化させていくのだった。

そしてひときわ力強い羽ばたきを見せると、それは翼をはためかせて飛んでいった。

「やったぁ、飛んだね。飛んだよ、ヴェロア」

子供のように無垢でキラキラとした瞳を向けて、嬉しそうに拍手するミエリ。二人にお礼を言おうと口を開こうとした瞬間それをさえぎって、アリエスの非情な採点が下された。

「時間がかかりすぎ。二十二点ね」

それは的確で、それでいて強烈な破壊力をも秘めた一言だった。

捕獲を行う予定ではないが、それでも始まる前から、ヴェロアの心はズタボロにされたのだった。

「うーん……」

だがすぐにそんなことにも興味がなくなったとばかりに、アリエスは厳しい顔を見せる。ぐるりと周囲に一瞥をくれるが、やはりその表情は優れない。

「ワタシの方には反応がないわね。ヴェロアの方はどう?」

「どうって、今飛んでいったばかりだよ?」

「うん、知ってる」

笑顔でいい放つアリエスに心を弄ばれたと感じ、ため息を漏らして抗議の言葉を口にしようとした。しかし能力の差というものは、時に残酷なまでにそれを見せつけるものだ。というのを痛感するのだった。

アリエスの表情に緊張の色が走ると、その愛らしい唇からこぼれた一言に、ヴェロアは驚愕の色を隠せない。

「見つけたわ。場所は男子寮裏。森の奥ね」

「ええ? もう見つけたの? あのスケルトンたちが?」

正直なところヴェロアには、地面を闊歩しながら探し回るスケルトンに、自分の従者が遅れをとるなどという考えは微塵もなかったのだった。

だが蓋を開けてみればこの様。そこにある差はやはり歴然としたものだった。

それでも落ち込んでなどいられない。急ぎアリエスの口にした森の奥へと向かう三人。その一番後方で、ヴェロアはどうにか気持ちを立て直すのだった。

「ヴェロア、キミはまたつまらないことを考えているでしょ?」

その様子にいち早く気づいたアリエスが、先を走りながらちらりと視線を向ける。

みっともない思考を見抜かれて頷き返すが、それでもまともに顔を見るこはままならないのだった。

「こういうのは経験が物をいうし、そもそもバンシーはワタシが送り出した従者でもあるんだよ? それこそ先を越されたら、ワタシの方が三日三晩落ち込むわよ」

「うん、わかってはいるんだけど……」

「そんなことでいちいち落ち込んでたら、この先毎日落ち込むはめになるわよ?」

「それって、僕の能力が低いから落ち込む機会はいくらでもあるってこと?」

いっさい悪びれる様子もなく笑顔で「そうだよ」といい放ったアリエス。

「ひどいよ。それ」

「ヴェロア、元気だして。ね?」

両手でポーズをして見せるミエリの姿が、とても可愛らしく感じられたが、さすがに今はそこまでの心情にはないのだった。

男子寮と女子寮の間を抜けて敷地の北にある森へと近づくと、明らかに空気が一変するのがわかった。

森の入り口で足を止めると、わずかに今までよりは湿度が増した。そんな絡み付くような空気をかき分けるようにして、ゆっくりと森の中へと続く小道歩を進んで行く。

森をしばらく行くと、その小道は小川と合流する。それにそってさらに北へと向かうと、森が少し開け、そこにこじんまりとした池が現れたのだった。

「こんなところに池があるなんて、全然知らなかった」

「ヴェロアたちは入学してそんなに経ってないからね、知らなくても当然だよ。そもそも魔法学校の生徒たちも、こんなところに用はないからね」

「なるほど。だからバンシーはここに身を隠していたのか」

「そうかも知れない。それでワタシの身体が戻ったから、行動範囲を広げ出したんだと思う」

おおよそ十メートル位はあるだろうかその池を挟んだ向こう側。そこにバンシーの姿を確認することが出来た。ひとまず物音を立てて刺激することのないように注意をしながら、三人は離れた場所に身を隠し、木陰からその様子を探る。

『なぜ行ってしまうのか…… それがあなたの幸せだとしても、私はそれを祝えはしない。素直な気持ちを出したいけれど、いったいどれが本当の気持ちなのかがわからない。愚かだと笑ってください…… いけないと叱ってください…… 大好きだよと抱いてください…… またねと言ってください。涙は流さないでください。そしてさよならも言わないでください。ああ、なぜあなたは行ってしまったのか……』

風に乗って運ばれてくる歌声は、ヴェロアが以前耳にしたもので間違いがなかった。

「なるほど。確かに歌声ね。あれがアリエスの召喚したバンシーなのね」

「うん、間違いないわ。影響を受けて少し姿が変わってはいるけれど、あれはまさしくアイリーシェの肉体だよ」

「前回聞いたときも思ったけど、なんだかとっても悲しそうだよね。あの歌」

そんな素直な感想を口にする。誰に遠慮するでもなく歌い続けるバンシーが、月明かりに照らされて水面に映る。その姿はハッと息を飲むほどに神秘的で、それはまるで高尚なオペラを観ているかのようだと、ヴェロアは感じたのだった。

「どう? ヴェロア、何か掴めそう?」

「うーん…… 何か妙な引っ掛かりを感じるんだ。でもそれが何かはわからないんだよね」

その意見には、ある程度の察しがついていたといった表情を示すアリエス。

「まあ、そんなに都合よく解決策なんか見つかりはしないわよ。ただ、ヴェロアならばもしかして。という期待も、ちょっとだけあったんだけどね」

少しだけ照れたような笑顔で言葉をかけ、アリエスは場を仕切った。

「今日のところは、捕獲の手だても対策もなにもないから、無闇に刺激するのは得策じゃないわね。でもせっかくだから、試しに仕掛けてみたら? ヴェロア。そこから突破口が見い出せるかもよ?」

「え? やだよ。策が無いって、今言ったったばかりじゃないか。そんなことしたら、レインスの二の舞どころか、二の倍だよ」

「なにそれ、どういう意味?」

キョトンとした魅力的な顔で、ミエリが説明を要求する。

説明と合意を経て、結局この場は刺激せずに退くことに決める。

「そう言うわけだから、気づかれないうちに戻りましょ。そして何か思ったことをまとめよう?」

「そのほうがいいのかな? やっぱり」

「見つかればあの攻撃が飛んでくるからね。できるならワタシは、無策で相手にはしたくはないのよね」

恐らくはバンシーがその身を隠しているのが、この辺りに違いない。少なくとも探す手間だけは省けるだろう。

ならば次に対峙するのも、やはりこの付近ということになるだろう。周辺で上位の精霊魔法を使う際に、どんな魔法を駆使する可能性が高いか。それを分析するべく、ヴェロアは周りの地形やその特徴を漏らさず観察するのだった。

「森の水辺…… もしもの時には逃げるのにも苦労しそうだな。それに手入れがされてないから、森も結構深い」

及び腰な考えを巡らせながらも、ヴェロアは今一度しっかりと、その姿を目に焼き付けて決意を新たにする。

静けさは、薄い膜のように張り詰めていた。

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作者について

九十九沢 美勇

九十九沢 美勇

AIを利用して小説作品を作っています。 カクヨムにも投稿しています。

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