ご臨終です。

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2025/12/25 📝 691文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

夜になると鳴る呼び出し音。 母子家庭の『私』は敢えて出なかったが……。

本文

 電話は、夜にだけ鳴った。

 廊下の突き当たりに置かれた黒い電話が、家の中で一番静かな時間を選んで鳴る。鈴の音ではない。硬いものが床を転がるような、重い音だった。

 ゴリン。

 ジュウ。

 デス。

 そう聞こえた。

 意味は分からなかった。

 ただ、その言葉を知ってはいけない気がした。

 母は動かなかった。

 私も動かなかった。

 電話はしばらく鳴り、何事もなかったように止まった。

 その夜も、朝も、家は変わらなかった。

※※※

 鳴った瞬間に、私は目を閉じた。

 あの音は、言葉じゃない。

 数でもない。

 出れば、何かが決まる。

 それだけは分かっていた。

 廊下の奥で、電話が鳴っている。

 子供の気配が、背中にある。

 私は振り返らなかった。

※※※

 いつの頃からか、あの電話は鳴らなくなっていた。

 私は大人になり、

 母は年を取った。

 冬の夜、病院の廊下で呼ばれた時、あの家の廊下を思い出していた。

 医師は低い声で言った。

 「……御臨終です」

 その言葉が、あの音と同じ高さで落ちてきた。

※※※

 葬儀の夜、誰もいない実家に泊まった。

 廊下の突き当たりは、今も空けてある。

 電話はない。

 それでも、耳の奥で一度だけ鳴った。

 ゴリン。

 ジュウ。

 デス。

 私は立ったまま、

 それを聞いていた。

 何も起きないまま、音だけが、静かに遠ざかっていった。

※※※

 翌朝、家を出る時、向かいの家の前に、人だかりができていた。

 昨夜、急だったらしい。

 詳しいことは、誰も知らない。

 私は、挨拶もせず通り過ぎた。

 振り返らなかった。

 角を曲がるとき、

 なぜか分かった。

 あの音は、去ったのではない。

 ただ、次の廊下を探しに行っただけだ。

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作者について

絢雲 蒼雪

絢雲 蒼雪

ホラーとファンタジーが好物! 小野不由美といえば十二国記ですが、個人的には残穢が好きです。 超ビビリのくせに読破。 怖くてガチで1週間寝付けなかった。 映画も観たよ。 もちろん十二国記も...

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