第11節「“黒紋の道化師”クラヴァスの嘲笑」
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
《蒼真、神殿に立つ ― 異界の剣聖は、美しき仲間と共に》
本文
# ◆ 第2章「影の騎士と白銀の舞姫」
## ――第11節「“黒紋の道化師”クラヴァスの嘲笑」――
湯気の向こうから響いた笑い声は、乾いた鈴の音のように耳障りだった。
蒼真は女湯の入口へ向き直り、三人を庇うように一歩前に出る。
「……誰だ?」
返答はすぐに来た。
『はぁい、初めましてぇ……**蒼の勇者**さん』
声は楽しげで滑らか、しかし寒気がするほど冷たい。
湯気が風に流されるように割れ――
そこに現れたのは、奇妙な姿の男だった。
---
## ◆ ● 道化の刺客
全身黒地のマント。
胸元には不気味な“真っ黒の紋章”が刻まれている。
仮面はまるでピエロのように白黒で裂けた笑顔を象り、
目の位置は深く暗く沈んでいる。
男は湯上り客のように、柱にもたれながら手をひらひら振った。
「名前は――**クラヴァス**。
影王様の“特急指令”を預かるトップエージェントで〜す」
(……トップ……!?)
(さっきの影より、ずっと強い……!)
(蒼真様でも、危険……)
三人は湯に肩まで沈みながらも、肌の粟立つ感覚をごまかせなかった。
クラヴァスは女湯の結界を見回し、楽しげに指を鳴らす。
「へぇ〜、この結界……
君だね? 白銀の香りのする、お嬢さま」
彩香は湯の中で静かに立ち上がり、白銀の気配を高める。
「接触目的は何ですか?」
「もちろん、“蒼真くんの捕獲”だよぉ。
それと……ついでに可愛い三人も回収するよう命じられてねぇ」
三人が一斉に身をすくめる。
「か、回収ってどういう……」
「ついで……って……」
「……軽く言ってますけど、犯罪者の言い方ですよ」
クラヴァスは喉を鳴らして笑う。
---
## ◆ ● 影王の狙い
「心当たりあるでしょ?
君たち、日本から“呼ばれた”――特別な素材なんだよ」
「素材……?」
蒼真がわずかに目を細める。
「うん。“勇者因子(ソウル・コア)”ってやつ。
この世界の神様が、君たち日本人にだけ与える特別な魂の欠片さ」
クラヴァスが指先で弧を描くと、黒い霧が形を成し、
日本列島のような影が浮かび上がった。
「要は、神の“おもちゃ”ってやつ。
影王様はね、それを全部集めて――
“この世界の神を殺す”つもりなんだ」
(……!)
(神を……!?)
(そんな……スケールが……)
三人の表情が強張る。
一方、蒼真は相手の言葉を冷静に解析しようとする。
(勇者因子……だから日本人の男女ばかりが転移してくるのか……
影王ってやつは、俺たちの魂そのものを狙っている……)
「つまりお前ら影の勢力は――
日本人を“狩っている”ってことか」
「そういうこと! 理解が早い〜〜♪」
クラヴァスは無邪気に手を叩いた。
---
## ◆ ● 刺客の“本気”
「さて――それじゃあ第一段階。
“蒼の勇者”の戦闘データ、取らせてもらおっか」
クラヴァスが指を鳴らした瞬間、
廊下の床から黒い影が一斉に立ち上がった。
十体。
二十体。
三十体……!
「なっ……!?」
「多すぎ……!」
「……侵入経路が全方向……!」
砂月とみのりが震える。
彩香でさえ、息を呑んだ。
「数で押す気か……!」
「君ならできるでしょ?
――だって、“本物の勇者の原型”なんだから」
クラヴァスが楽しげに両手を広げる。
蒼真はタオルの端を結び直した。
「……いいぜ。
やるなら――かかってこい」
蒼い気配が湯気を一瞬で吹き飛ばす。
「“蒼剣・奥義系”――
**解放してやるよ、影ども……!!**」
---
## ◆ ● しかしクラヴァスは“狙っていた”
「ふふっ……そう、それそれぇ……
本気の蒼真が見たかったんだよ」
クラヴァスがわざとらしく後ずさる。
「ほら、やってごらん。
でも――忘れないでね?」
仮面がこちらを見た気がした。
“君の背中には、守らなきゃいけない三人がいる”
――その瞬間。
影の兵が三方向から**女湯へ侵入**しようと動いた。
「ッ――!!」
「きゃあ!!」
「来た……!!」
「蒼真様!!」
クラヴァスはからかうように舌を出した。
「ぼくを殴れば、後ろの三人が死ぬ。
後ろを守れば、ぼくが逃げる。
さぁ勇者くん、**どっちを選ぶの?**」
蒼真は歯を食いしばった。
(この……!!)
選ぶべき答えは一つしかない。
だが――クラヴァスはそれを“分かっていて”仕掛けてきている。
そのとき。
「……選ぶ必要はありません」
蒼真の背後から。
湯の中にいた彩香が、静かに立ち上がった。
「私たちも――蒼真様と共に戦います」
白銀の水面が、眩しく光った。
---
作品統計
📚 本を探すなら「よみどき」(あいぺんが運営する本の発見サイト)
130万冊を超えるコミック・小説・書籍の順位と値段を毎日みて、いま読むものを決められます。