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3節 選ばれる者

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/3/10 📚 シリーズ: 共感性知能アプリNestTalk(ネストーク) 📝 1,373文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

ある刑事の叙事詩 《夜の王国 ~選択と調整の病理~》

本文

## 【第1章 失われた日常】

### 【3節 選ばれる者】

 第三の被害者候補――そう呼ばれた時点で、その人物はすでに“日常”の外に足を踏み入れている。

 名前は**高瀬 泰徳**。

 都内の総合病院で事務部長を務める五十代の男だった。医師ではない。だが、医療現場の「判断」を一手に引き受ける立場にある。人員配置、予算配分、契約更新。救われる命と、切り捨てられる命の狭間で、数字を選び続けてきた男。

「……また、同じだな」

 小坂凌は、モニターに映し出された高瀬の経歴から目を離さずに呟いた。

「罪ではない。でも、“誰かを落とす役割”にいた」

 朝霧が、唇を引き結ぶ。

「医療現場なら、なおさらです。感情論じゃ回らない。でも……」

「でも、その“でも”を許さないのが、犯人だ」

 捜査本部は緊張に包まれていた。

 今回は違う。

 まだ、間に合うかもしれない。

「高瀬は今、自宅ですか」

「いえ。今夜、病院関係者との会食予定があります。場所は――銀座です」

 銀座。

 整然とした街。豊洲とも歌舞伎町とも違う、管理された夜。

「……呼び出しやすい」

 小坂は、そう判断した。

 犯人は、被害者を“選ぶ”だけではない。

 **選ばれた者が、納得してその場に来る状況**を作り出している。

 それは、単なる暴力ではない。

 対話だ。歪んだ、対話。

「警護を付けますか?」

 若手刑事の問いに、小坂は即答しなかった。

 警護を付ければ、犯人は引く。

 だが、それは“次”を許すことになる。

「……付ける。ただし、目立たせるな」

 曖昧な命令だった。

 だが、それしか選べなかった。

 夕方。

 朝霧は、小坂のデスクに近づき、声を潜めた。

「私、直接会いに行きたいです」

「誰に」

「高瀬さんに」

 小坂は、即座に首を振った。

「ダメだ」

「でも、本人に警告しないと――」

「犯人は、警告されることを織り込んでいる可能性がある」

 朝霧は一歩も引かなかった。

「それでも、何も言わずに見張るだけなんて……それ、正しいんですか」

 その言葉に、小坂の胸が僅かに痛んだ。

 正しさ。

 この事件において、最も扱いにくい言葉だ。

「朝霧」

「はい」

「お前が行けば、感情が動く」

「それが、いけないんですか」

 真正面からの問い。

 逃げ場はない。

「……今は、な」

 朝霧は、しばらく黙っていた。

 そして、静かに言った。

「分かりました」

 だが、その声は、納得していなかった。

 夜。

 銀座のレストラン街は、洗練された光に満ちている。黒塗りの車、控えめな笑顔、計算された距離感。

 人は多いが、孤独だ。

 高瀬は、予定通り会食を終え、店を出た。

 その背後、数十メートルの距離で、小坂たちが動く。

「今のところ、接触なし」

 イヤーピース越しの報告。

 だが、小坂は、違和感を拭えなかった。

 静かすぎる。

 高瀬が、スマートフォンを取り出した。

 画面を見つめ、立ち止まる。

「……来たな」

 朝霧が息を呑む。

 高瀬は、通話ボタンを押した。

 その表情が、徐々に変わっていく。驚き、戸惑い、そして――理解。

「……どうしますか」

 小坂は、拳を握りしめた。

「近づくな。まだだ」

 犯人は、見ている。

 警察が“どこまで踏み込むか”を。

 そのとき、朝霧が小さく言った。

「……小坂さん」

「何だ」

「私、行きます」

 制止する間もなかった。

 朝霧は、人混みの中へ踏み出していた。

 ――一線を、越えた。

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冥界焔つむぎ

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