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3節 選ばれる者(続)

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/3/11 📚 シリーズ: 共感性知能アプリNestTalk(ネストーク) 📝 1,570文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

ある刑事の叙事詩 《夜の王国 ~選択と調整の病理~》

本文

## 【第1章 失われた日常】

### 【3節 選ばれる者(続)】

 朝霧が人混みに紛れた瞬間、小坂凌は舌打ちをした。

「朝霧、戻れ」

 イヤーピースに低く鋭い声を落とす。

 だが、返答はない。

 銀座の夜は、音が多すぎる。ヒールの音、タクシーのクラクション、笑い声。すべてが雑音となって、通信をかき消していく。

「くそ……」

 小坂は即座に動いた。

 朝霧の進行方向、高瀬の位置、周囲の人流。頭の中で地図を組み立てる。

 ――犯人は、これを待っていた。

 高瀬は歩きながら、通話を続けている。相手の声は聞こえないが、受話器越しの沈黙に耳を澄ませているような表情だった。

「……はい。分かりました」

 その言葉が、やけに穏やかだったのが、小坂の胸をざわつかせた。

 納得している。

 いや、**受け入れている**。

「高瀬さん!」

 朝霧が、ついに声をかけた。

 高瀬は振り返り、驚いたように目を見開く。

「あなたは……?」

「警察です。少し、お話を――」

 その瞬間、通話が切れた。

 高瀬のスマートフォンの画面が暗転する。

 小坂は、人混みをかき分けながら二人に近づいた。

「朝霧、離れろ!」

 だが、朝霧は高瀬の前に立ち、真っ直ぐに向き合っている。

「今、危険な状況です。あなたは――」

「分かっています」

 高瀬は、遮るように言った。

 声は震えていない。

「……私は、選ばれたんでしょう」

 その言葉に、朝霧が息を呑む。

「誰に、何を言われたんですか」

「“説明”を受けました」

 高瀬は、どこか安堵したように微笑んだ。

「私が、どれだけの人を切り捨ててきたか。数字の裏に、どんな顔があったか」

 小坂が、二人の間に割って入る。

「それを理由に、命を奪われる筋合いはない」

 高瀬は、小坂を見た。

 その目には、恐怖よりも疲労があった。

「刑事さん。あなたは……自分の判断で、誰かを壊したことはありませんか」

 小坂は、答えなかった。

 答えられなかった。

 沈黙を破ったのは、朝霧だった。

「それでも、生きてください」

 声が、わずかに震える。

「あなたがしたことを、全部否定はしません。でも……死んで償うなんて、誰も救われません」

 高瀬は、しばらく彼女を見つめていた。

 そして、ゆっくりと首を振る。

「……あなたは、まだ“こちら側”にいない」

 その言葉の意味を問う前に――

 高瀬が、一歩後ずさった。

「高瀬さん!」

 背後は、路地へと続く細い通路。

 ネオンの光が届かない、影の溜まり場。

 小坂は、直感的に叫んだ。

「行くな!」

 遅かった。

 路地の奥、黒い影が動いた。

 人の形をしているが、存在感が希薄だ。

 高瀬が、影に向かって歩き出す。

 まるで、呼ばれるように。

 朝霧が、腕を掴んだ。

「ダメです!」

 一瞬、力が拮抗する。

 その隙を突くように、影が近づいた。

 ――刃物の鈍い光。

 小坂は、全速力で駆けた。

「伏せろ!」

 叫びと同時に、影が振り下ろす。

 だが、刃は空を切った。

 高瀬が、朝霧の力で体勢を崩したからだ。

 次の瞬間、複数の足音。

 待機していた刑事たちが、路地になだれ込む。

「警察だ! 動くな!」

 影は、一瞬だけこちらを振り返った。

 フードの奥、目だけが光る。

 そして――

 煙のように、逃げた。

 残されたのは、膝をついた高瀬と、肩で息をする朝霧。

 小坂は、二人に駆け寄った。

「怪我は」

「……ありません」

 朝霧が答える。

 だが、その手は震えていた。

 高瀬は、静かに言った。

「……彼は、正しかったのかもしれない」

 小坂は、その言葉を、強く否定した。

「違う」

 短く、だが断定的に。

「正しさは、人を殺す免罪符じゃない」

 その夜、**第三の殺人は未遂に終わった**。

 だが同時に、確かな事実が残った。

 犯人は、実在する。

 近くにいる。

 そして――**対話する意志を持っている**。

 朝霧は、その中心に、足を踏み入れてしまった。

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冥界焔つむぎ

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