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3節 選ばれる者(終)

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/3/12 📚 シリーズ: 共感性知能アプリNestTalk(ネストーク) 📝 1,283文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

ある刑事の叙事詩 《夜の王国 ~選択と調整の病理~》

本文

## 【第1章 失われた日常】

### 【3節 選ばれる者(終)】

 未遂事件の一報は、瞬く間に捜査本部を駆け巡った。

 第三の殺人は防がれた。

 だが、それは“勝利”ではなかった。

 会議室の空気は重く、誰もが言葉を選びあぐねている。現場の判断、警護体制、命令系統――すべてが検証対象になった。

「独断専行だな」

 上司の声は、感情を削ぎ落としたものだった。

「規則違反は明白だ。朝霧、君は持ち場を離れ、対象者に直接接触した」

「……はい」

 朝霧は立ったまま、視線を落とさずに答えた。

 恐怖はある。だが、後悔はない。

「結果的に、殺人は防がれました」

 別の幹部が言う。

「それは“結果論”だ」

 即座に切り捨てられる。

「一歩間違えれば、君自身が人質になっていた。刑事が事件を拡大させてどうする」

 朝霧の唇が、わずかに震えた。

 反論したい言葉は、いくつもあった。だが、それを口にすれば、自分の正義を振りかざすだけになる。

 そのとき、小坂凌が口を開いた。

「責任は、俺にあります」

 会議室の視線が、一斉に集まる。

「彼女を制止できなかった。現場判断も含めて、俺の監督不行き届きです」

「小坂……」

「ただし」

 小坂は、一歩も引かなかった。

「朝霧の行動がなければ、高瀬は死んでいた。犯人は、我々の“待ち”を読んでいた。今回の未遂は、犯人の想定外です」

 沈黙。

 それは、否定できない事実だった。

 上司は、短く息を吐いた。

「……処分は保留だ。だが、次はない」

「承知しています」

 会議は、それで終わった。

 廊下に出た途端、朝霧は深く息を吐いた。

 全身の力が、抜けていく。

「……すみませんでした」

「何に対してだ」

「全部です」

 小坂は、しばらく黙ってから言った。

「怖かったか」

「はい」

 即答だった。

「でも……それ以上に、見過ごすのが怖かった」

 小坂は、その言葉を否定しなかった。

 否定できなかった。

「朝霧」

「はい」

「次に同じことをしたら、止める」

「……分かってます」

「力ずくでだ」

 朝霧は、少しだけ笑った。

「それでも、行くと思います」

 小坂は、わずかに目を細めた。

 その夜。

 小坂は一人、未遂現場近くの路地に立っていた。昼間の喧騒は消え、ネオンも落とされ、街は別の顔を見せている。

 犯人は、ここにいた。

 ほんの数秒、目が合った。

 あの視線を、小坂は忘れられない。

 憎しみでも、狂気でもない。

 ――確認する目。

 自分が、何者かを。

 小坂はポケットから、紙片を取り出した。未遂現場で見つかった、もう一枚の紙だ。

『次は、選ばせない』

 短い一文。

 だが、意味は重い。

 犯人は、理解されたと感じている。

 そして次は、“納得”を必要としない段階へ進む。

 暴力は、より純粋になる。

 小坂は夜空を見上げた。

 東京の空は、相変わらず光に濁っている。星は、ほとんど見えない。

 それでも、この街で、人は生きている。

 誰かの判断に傷つきながら。

 誰かの正義に救われながら。

 小坂凌は、静かに誓った。

 ――この事件の“答え”は、殺しでは終わらせない。

 朝霧の正義も、

 犯人の歪んだ使命感も、

 すべてを引き受けた上で。

 必ず、止める。

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冥界焔つむぎ

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