第11話 始動
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
無垢な王女と貧民少女のスラム改革〜培った人脈で魔鉱石採掘労働者の職場環境を改善せよ!!〜 - 第11話 始動
本文
「うぅ〜! うぅ〜……!」
レオノーラの自室にて。
レオノーラはベッドに腰掛けたリアの膝に顔を埋ずめながら足をバタバタとさせていた。
「皆酷いわ! スラムの人達を消耗品だなんて……っ!
それにお兄様もお兄様よ! 力を付けろって何よ! もっと具体的で建設的なアドバイスをくれてもいいじゃない! うぅ〜……っ!」
「どうどう、御立派でしたよ」
「うぅ……リアは分かってたの? 皆がスラムの人達の事をどう見ているのか……」
「まぁ……鉱夫は現地募集なので。私も働かせて貰おうと何度か行きはしましたが、やっぱり女の身では採用されませんでした。
その折に現場責任者を見た事がありますが、やはり私達の事を見下してやがりましたよ」
「ごめんなさい、私が力不足なばっかりに……っ!
彼等の善意に期待した私が馬鹿だったわ……!」
「仕方ありませんよ。奴等の口振りではこの構図は何百年も変わっていないそうですし、レオノーラ様のお気持ち一つで変えられる物でも無いのでしょう」
「だからこそ、積極的に動かなければいけないわ。これがお兄様の言う力なのかは分からないけど……」
「何か策がおありですか?」
「えぇ、私も鉱山を拓くわ。ミルラ!」
「はっ」
「うわ……っ!?」
レオノーラが呼ぶと何処からともなくミルラが現れた。
リアも護衛の為の訓練は受けているが、全く気配に気付かなかった事に思わず声を上げる。
「ミルラ、鉱山……魔素溜まりを調査してちょうだい。距離や地形は問わないけど、生活に使える水脈が近くにあるのが好ましいわ」
「はっ!」
魔鉱石という名称から一般的に鉱山と言われているが、実際に魔鉱石があるのは山や地下、稀にだが森や街中でも発生する。
事実ヴェールバルドの鉱山も山と呼べる物は一箇所だけで、残りの三箇所は地下へ掘り進められている。
要は魔素が固まった物なので、魔素が濃い場所なら何処にでも発生し得るのだ。
勿論、魔素が密集しやすい坑道等の閉所が殆どではあるが。
「ですが姫様。魔素溜まりを探して、以降は如何なされるのです? 採掘準備を調えるにも資金が必要となりますが」
「私の貯金。そしてドレスや宝石……私の私物で売れる物は全て売って資金を調達しなさい!」
「レオノーラ様それは……っ」
「えぇ、そうよリア。これは私の財産という限りあるリソースを使った一発勝負。
本当はこんなギャンブル染みた手は使いたくなかったんだけど……覚悟を決めなきゃね」
「レオノーラ様……」
「さて、私も動かないと。リアにもお願いしたい事があるの」
「俺……私にですか?」
「えぇ、これはリアにしか出来ない事なのよ」
「何なりと」
「ありがとう。貴女にしてほしいのはね……」
レオノーラの鉱山開発は順調に進んだ。
無論ミルラの手腕と潤沢な資金を注ぎ込んだ故ではあるが。
「姫様、鉱山に成り得る魔素溜まりを三箇所程ピックアップ致しました」
「ありがとう。内約を教えてくれる?」
「はい。まず1つ目。城から見て南方に位置しています。
城から比較的近いですが魔素量は候補の中で最も少ないです」
「うぅん、ハズレの可能性もあるわね……」
「ハズレ、ですか?」
「あぁ、リアは知らなかったわね。鉱山を探すに当たって、まずは魔素溜まりを探すの。
そこの魔素量が多ければ、その先にも多くの魔素が眠っているかも……という事ね」
「かも、ですか?」
「えぇ、一見大きな魔素溜まりだと思って掘り進めても、その先はすっからかん……という事も有り得るわ。
勿論、観測した魔素量が多ければ多い程、当たりの確率は上がるけど」
「成る程……」
「2つ目は……城から見て東方。これは候補の中では2番目に魔素量が多いです。
また近くに水脈もあり、飲料に使える可能性も高いです。ですが城からはかなり離れてしまっていますね」
「ふむん……3つ目は?」
「西方に位置しています。魔素量は候補の中で最も多く、距離も1つ目と2つ目の中間です。ですが近くに水脈はありません」
「そう、ありがとう」
「この内のどれかになさいますか? それとも調査を続行致しますか?」
「そうね……では2つ目、東方の魔素溜まりを掘りましょう。
やはり鉱山の近くにコミュニティが形成される以上、飲水はあった方が良いもの」
「ですがこの距離では行き来するだけでかなりの時間を消費してしまいますが?」
「近くに拠点となる家を建てられないかしら? 簡素な物でも良いから」
「姫様が泊まり込みで指揮を取るという事ですか?」
「それが必要な事もあるでしょう? 特に稼働初期はね」
「では、レンガの発注もしなければなりませんね。水道も引かなければ」
「待って! スラムでは木の板や布を使った簡易的な家が殆どなのよ。
私だけ贅沢な暮らしをしていては浮いてしまうし、信用も得られないわ。せめてこちらも木材で……」
「私は反対です」
「リア……?」
硬い声と表情でリアがレオノーラに反対の意を示す。
「レオノーラ様、スラムの連中は危険です」
「そんな、事……」
「レオノーラ様も王族に対する憎しみは体験したでしょう?
それに目に映る所に綺麗な木材で建てられた家があったら、こっそりその板を剥がして自分で使うか売るかしますよ」
「そう、なのかしら……?」
「そういう奴等です。いくらレオノーラ様が奴等に配慮した所でそれに感銘を受けて態度を軟化させるような連中でもありません。
奴等の信用を得たいのであれば、奴等にメリットを示すしかありません。
そしてそれが鉱山ならば、少なくとも成果が出るまでの安全は確保すべきです」
「そうね……分かったわ。拠点に関してはミルラに一任します」
「かしこまりました。坑道を掘るに当たり土魔法使いは手配致しますか?」
「お願い」
「魔法で掘る……んですか?」
「あくまで道だけね。それをすると道中の魔鉱石も潰れてしまうけど、その分早く採掘に取り掛かれるから。
魔法無しの場合、魔鉱石に辿り着くまで年単位の時間と労力が必要になる場合もあるから、多少の損失には目を瞑ってでも道を作った方が良いの」
「なるほど。もっと勉強します……」
「ふふ、頼りしているわよ、私のリア?」
「……!は、はいっ!」
しょげていたリアの弾ける笑顔にレオノーラも釣られて笑う。
それだけで重責や将来の不安が吹き飛ぶ思いのレオノーラだった。
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