第1話:サキュバス、アプリの闇に触れるの表紙画像

第1話:サキュバス、アプリの闇に触れる

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

あらすじ

立派なサキュバスになるため人間界へやってきたリリム。 生きるための食事(精気)を得るべく、マッチングアプリでカモを探すが、根が奥手すぎて失敗続き。 餓死寸前の彼女が編み出した起死回生の策、それは―― 「地味で清楚な文学少女」に擬態して、安心させたところをガブリといくこと! 狙い通りマッチングしたのは、真面目で女性慣れしていないサラリーマン・ケンジ(26歳・童貞)。 作戦は完璧かと思われた。しかし、誤算が一つだけあった。 「……っ! 三つ編み眼鏡の文学少女……! 俺の理想そのものだ……!」 なんと 「君のような清らかな子に、指一本触れられない!」 と触ってくれない! 必死に色仕掛けをするリリム(でもドジ)。 彼女を神聖視して、鉄の意志で理性を保つケンジ(でも限界寸前)。 お邪魔虫なライバルサキュバス・メリザも乱入し、二人の奇妙な同棲生活が始まる。 果たしてリリムは正体を隠し通し、無事に「いただきます」できるのか!? R15の朝チュンレベルです。 全40話、予約投稿済み

本文

ブブブブブブブブブブッ!!!

ブブッ、ブブブブブッ!!!

「ひ、ひいぃっ!? 怖い、怖いですぅ……ッ!!」

 安アパートの薄暗い一室。

 私は震える手で、悲鳴を上げ続けるスマートフォンを布団の上へと放り投げた。

 画面には、怒涛の勢いでポップアップ通知が重なっていく。

『はじめまして! 写真見ました、巨乳最高っすね!』

『今から会える? ホテル直行で3万どう?』

『俺のモノ見てください(画像添付)』

「無理無理無理! 日本の男の人、飢えすぎじゃないですか!?」

 私は涙目で頭を抱え、部屋の隅で小さく丸まった。

 私の名前はリリム。

 立派なサキュバスになるため、魔界から人間界へに来たサキュバスだ。

 サキュバスといえば、夜の街で男を誘惑し、夢心地にさせて精気をいただくのが仕事。

 ……なんだけど。

「ナンパ待ちとか、怖くて足がすくんで動けなかったし……」

 路地裏に立ってみたものの、声をかけられた瞬間に「す、すみません!」と謝って逃げ出してしまったのが三日前。

 このままでは精気が尽きて、魔界に強制送還されてしまう。

 そこで思いついたのが、現代の利器『マッチングアプリ』だったのだ。

 プロフィールには、馬鹿正直にこう書いた。

『サキュバスです。初めてなので優しくしてくれる人を探しています。お腹が空いているので、ご飯(精気)をください』

 そして、胸元を少し強調した自撮り写真をアップしたのだが……それが間違いだった。

 登録からわずか十分で「いいね!」の数はカンスト。

 届くメッセージは欲望丸出しの猛獣のような言葉ばかり。

「こ、こんな人たちと会ったら、私なんて骨まで食べられちゃう……っ」

 私は決死の覚悟でスマホを拾い上げると、震える指で『退会』ボタンを連打した。

 ふぅ、と静寂が戻る。

 でも、お腹の虫はグゥと鳴ったままだ。

「……作戦変更、です」

 私は鏡の前に立った。

 派手な衣装を脱ぎ捨て、量販店で買ったヨレヨレのグレーのスウェットに着替える。

 長い銀髪は、きっちりと三つ編みに。

 そして、顔の半分を覆うような、黒縁の野暮ったい「ぐるぐる眼鏡」を装着する。

 鏡の中にいたのは、どこからどう見ても、クラスの隅で本を読んでいそうな地味な芋女だった。

 けれど、今の私にはこれが最強の鎧に見える。

「これなら……これなら絶対に、ヤリモクの変な人は来ないはず!」

 私は別のアプリをインストールし、新しいプロフィールを作成した。

 名前:リリ(20)

 写真:眼鏡と三つ編みで、口元まで隠した地味な自撮り

 自己紹介文:

『人見知りです。真面目な方とお話したいです。まずはカフェでお茶からお願いします。お互いに合意できたら、食事相手(※隠語のつもり)になってほしいです』

 完璧だ。

 これなら、「サキュバス」という獲物を狙う狩人たちは寄ってこない。

 来るとしても、私と同じように奥手で、真面目で、優しい人だけのはず。

 登録ボタンを押す。

 今度は、通知が鳴り止まないなんてことはなかった。

 シーンとした部屋で、静かに待つこと一時間。

 ポコン。

 軽やかな通知音が一度だけ鳴った。

 恐る恐る画面を見る。

『マッチング成立!』

 相手のプロフィールを見る。

 名前は「ケンジ」。年齢は二十代後半。

 写真は、当たり障りのない風景画。自己紹介文も『仕事が忙しくて癒やしが欲しいです。カフェ巡りが趣味です』と簡素だ。

「……この人なら、大丈夫かも」

 獣のようなギラつきを感じない、草食動物のような気配。

 彼なら、私がリードして(※できるつもり)、安全に食事(精気摂取)ができるかもしれない。

 私は高鳴る胸(と空腹)を抑えながら、メッセージを送信した。

『はじめまして。リリです。あの……よかったら、今週末にお会いしませんか?』

 これが、私の運命(と勘違い)の始まりだった。

ジャンル・タグ

, , , , , , ,

作品統計

👁️ 閲覧数: 17 👍 いいね: 0 📚 本棚登録: 0

作者について

りくりな

りくりな

👥 フォロワー: 3人

作者ページを見る