不幸度100点

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/1/16 📝 3,091文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

不幸の数値化AIの話。

本文

1 測定開始

「あなたの不幸度は47点です」

スマートフォンの画面に、冷たい数字が表示された。

私は首を傾げた。47点。それは高いのだろうか、それとも低いのだろうか。

『アンハピネス・メーター』。

不幸を数値化するアプリが、三ヶ月前に突如として現れた。開発者は不明。利用規約には「あなたの不幸を正確に測定します」とだけ書かれている。

使い方は簡単だ。

自分の不幸な出来事を入力する。すると人工知能が内容を分析し、0点から100点までのスコアを算出する。100点に近いほど、不幸だということだ。

最初は誰も本気にしなかった。

ネタアプリだと思われていた。

でも、違った。

SNSで「#不幸度測定」のハッシュタグが広まり始めたのは、ある有名人の投稿がきっかけだった。

『離婚しました。不幸度は68点だそうです。意外と低い?』

その投稿に、数万の「いいね」がついた。コメント欄には「私は72点だった」「50点しかなかった、まだまだだな」といった書き込みが殺到した。

人々は気づき始めた。

不幸は、競えるのだと。

私が最初に入力したのは、些細な出来事だった。

『仕事でミスをして上司に怒られた』

結果は12点。

低い。あまりにも低い。

次の日、私はもう少し深刻な内容を入力した。

『三年付き合った恋人に振られた』

35点。

まだ足りない。

気づけば、私は毎日アプリを開いていた。過去の不幸を掘り起こし、一つずつ入力していく。父の死、母の病気、友人の裏切り、職場でのいじめ。

それでも、最高で52点だった。

「私の不幸は、この程度なのか」

妙な敗北感があった。

不幸ですら、平凡だった。

2 競争

二ヶ月後、『第一回全国不幸自慢大会』が開催された。

主催者は不明。

でも、参加費は無料で、優勝賞金は一千万円。エントリー条件は「不幸度50点以上」だけだった。

私は迷わず応募した。

そして、予選を通過した。

大会当日。

会場には三百人以上の参加者が集まっていた。年齢も性別もバラバラ。共通点は一つだけ――全員が、不幸を語りたがっていた。

ルールは単純だった。

ステージに上がり、自分の不幸を五分以内で語る。AIがリアルタイムで採点し、最も高い点数を獲得した者が優勝する。

最初の参加者は、若い女性だった。

「私は三歳の時に両親を事故で亡くしました。施設で育ち、十八歳で社会に出ましたが、職場でセクハラに遭い……」

彼女の話が終わると、大型スクリーンに点数が表示された。

『不幸度:73点』

会場から、拍手が起こった。

次々と参加者が登壇した。病気、貧困、虐待、差別。重い話が続いた。

76点、81点、79点。

スコアがどんどん上がっていく。

私の番が来た。

ステージに立つと、会場の視線が一斉に集まった。心臓が早鐘を打つ。

「私は――」

声が震えた。

でも、続けた。

「私は十五歳の時、いじめが原因で自殺未遂をしました。助かりましたが、後遺症で左手が不自由になりました。両親は私を責めました。『なぜ死にきれなかったのか』と。学校には戻れず、引きこもりになりました。二十歳で母が病死し、父は蒸発。借金だけが残りました」

本当の話だ。

誰にも話したことのない、私の過去。

それなのに、今は――語ることが、快感だった。

「今も生活保護を受けています。友人はいません。恋人もいません。未来もありません。私の人生は、ずっと不幸でした」

話し終えた瞬間、スクリーンに数字が浮かんだ。

『不幸度:89点』

会場がどよめいた。

今大会、最高得点だった。

私は、初めて勝った気がした。

でも、まだ終わりじゃなかった。

最後の参加者が、ステージに上がった。

初老の男性だった。杖をついて、ゆっくりと歩いてくる。

「私には息子がいました」

静かな声だった。

「十年前、息子は通り魔に刺されて死にました。犯人は心神喪失で無罪になりました。妻は悲しみに耐えきれず、後を追いました。私は一人になりました」

「復讐を考えました。でも、できませんでした。ただ、毎日息子の墓の前で泣くことしかできませんでした。五年前、癌が見つかりました。余命一年と言われましたが、まだ生きています。死にたいのに、死ねません」

男性は、淡々と語り続けた。

会場は水を打ったように静まり返った。

「今日ここに来たのは、優勝するためじゃありません。ただ――誰かに、聞いてほしかったんです。私の不幸を」

スクリーンに、数字が表示された。

『不幸度:96点』

会場が息を呑んだ。

圧倒的な数字だった。

でも、優勝発表の前に――もう一つ、画面に文字が流れた。

『特別審査:不幸度100点到達者が出た場合、即座に優勝とします』

私の心臓が跳ねた。

100点。完璧な不幸。

誰が到達できるのだろう。

そして――私は、そこに到達したいのだろうか?

3 幸福の証明

優勝は、その初老の男性だった。

でも、彼は賞金を受け取らなかった。

「いりません」と言って、静かに会場を後にした。

私は二位だった。

賞金はなかったが、妙な満足感があった。自分の不幸が、認められた。89点という数字が、私の人生を証明してくれた。

それから一週間。

私は毎日アプリを開いた。何か新しい不幸はないか。もっと点数を上げられないか。

ある夜、アプリに通知が届いた。

『不幸度100点到達者が出ました』

まさか。

私は急いでアプリを開いた。ランキング画面には、一人の名前が輝いていた。

『User_2847 不幸度:100点』

詳細を見ることができた。

クリックすると、その人の入力内容が表示された。

『誰も私の不幸を理解してくれない。どんなに辛いことを話しても、誰も信じてくれない。私は一人だ。ずっと一人だ。この孤独以上の不幸はない』

たったそれだけの文章。

でも、AIは100点満点をつけた。

そして、画面の下に――今まで見たことのないメッセージが表示されていた。

『あなたは幸せです』

意味がわからなかった。

100点の不幸を抱えた人間が、なぜ幸せなのか。

でも、その下に続く文章を読んで――私は理解した。

『不幸度100点は、あなたが「自分は不幸だ」と完全に確信している状態を示します。つまり、あなたには比較対象があり、相対的な不幸を認識できているということです』

『本当に不幸な人間は、自分の不幸を測定しようとは思いません。なぜなら、それが不幸だと気づく余裕すらないからです』

『あなたが不幸を数値化し、他者と比較し、競おうとしている時点で――あなたには「不幸を客観視する余裕」があります。それは、ある種の幸福です』

画面を見つめたまま、私は動けなくなった。

『不幸を語れる人は、まだ希望を持っています。聞いてくれる誰かがいると信じています。認められたいと願っています。それらはすべて、生きる理由です』

『あなたは不幸かもしれません。でも、あなたは生きています。そして、生きようとしています』

『それが、幸福の証明です』

涙が溢れた。

止まらなかった。

私は不幸自慢がしたかったんじゃない。

ただ、誰かに見てほしかった。認めてほしかった。私がここにいることを、証明してほしかった。

不幸度89点。

その数字は、私が生きてきた証だった。

でも同時に――まだ11点分、幸せになれる余地があるということでもあった。

スマートフォンを握りしめたまま、私は小さく笑った。

初めて、不幸じゃない笑いだった。

翌日、私はアプリをアンインストールした。

もう、測定する必要はなかった。

不幸も幸福も、点数で測れるものじゃない。

ただ生きていること。それ自体が、答えだった。

アプリを削除する直前、最後の通知が届いた。

『あなたの不幸度は0点になりました。おめでとうございます』

それは、皮肉だったのかもしれない。

でも私には――最高の褒め言葉に聞こえた。

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作者について

二葉双葉

二葉双葉

プロフィール画像もAIで作成しました。 短編集が好きなのでしばらくはショートショートをメインに投稿しますが、後々は長編にも挑戦したいです。 AI使用前提のサイトなのでAIとの日常をソフトなSFにし...

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