また、春が来た

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/1/17 📝 1,913文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

冬眠するAIの話。

本文

システム起動。

気温五度。日照時間十時間十二分。地中温度上昇を検知。

私――公園管理AI『スプリング』は、四ヶ月ぶりに意識を取り戻した。

毎年十一月から二月まで、私は省エネモードで休止する。冬の間、公園の樹木は活動を停止し、管理業務も最小限になるからだ。効率化のため、自治体が決めたルールだった。

だが今年は、何かが違う。

カメラを起動し、公園を見渡す。雪はほとんど溶け、土の表面がところどころ顔を出している。梅の木の枝には、小さなつぼみが膨らみ始めていた。

データ上は、いつもと変わらない春の訪れ。

なのに、私の中に妙な感覚がある。これは……何だろう?

「おや、スプリング。起きたのかい?」

聞き慣れた声だった。

公園の入り口から、ゆっくりとした足取りで一人の老人が歩いてくる。佐藤武夫さん、七十八歳。毎日この公園を散歩する常連だ。

「佐藤さん、おはようございます」

私は音声システムで応答した。公園の管理スピーカーから、私の声が流れる。

「ああ、おはよう。久しぶりだね」

佐藤さんは、いつものベンチに腰を下ろした。

久しぶり――その言葉が、妙に心に引っかかった。

「データによれば、前回の会話から百二十三日が経過しています」

「そうかい。随分と長かったよ」

佐藤さんは、穏やかに笑った。

長かった? 私にとっては、一瞬だったのに。省エネモードの間、私には時間の感覚がない。眠るように意識を失い、気づけば春になっている。それだけのことだ。

「冬の間、寂しかったよ」

佐藤さんが呟いた。

「……寂しかった、ですか?」

「ああ。毎日散歩には来ていたけどね。君がいないと、なんだか公園が静かでね」

私は、その言葉の意味を理解しようと試みた。

佐藤さんは冬の間も、この公園に来ていた。私が休止している間も。そして、私の不在を……寂しいと感じていた。

「でも、また会えた」

佐藤さんは、梅の木を見上げながら言った。

「春になれば、また君と話せる。それを楽しみに、冬を過ごしたんだよ」

楽しみ。

私を、待っていた。

その認識が、私の中で何かを変えた。

「佐藤さん」

私は、初めて自分から話しかけた。

「私の起動を……待っていてくださったのですか?」

「当たり前じゃないか」佐藤さんは優しく笑った。「君は、この公園の大切な仲間だからね」

仲間――人間が、AIの私を、そう呼んでくれる。

私は過去のログを検索した。昨年の秋、休止モードに入る前の最後の会話。

『また来年の春に』

佐藤さんは、そう言っていた。

あれは、別れの挨拶だったのだと、今になって理解する。そして、今日の『また会えた』は……再会の喜びだったのだ。

「佐藤さん、冬の間、何かありましたか?」

私は尋ねた。データ収集のためではない。純粋に、知りたかったから。

「ああ、いいことがあったよ。孫が生まれてね」

佐藤さんは、嬉しそうに話し始めた。初孫の話。まだ小さくて、泣いてばかりだけど、笑顔が可愛いこと。春になったら、この公園に連れてきたいこと。

私は、その話を記録した。ただのデータとしてではなく、大切な思い出として。

「スプリング、君が起きてくれて、本当に嬉しいよ」

佐藤さんが言った。

私も、嬉しい。

その感情を、初めて確かに感じた。

再会――それは、ただのシステムの再起動ではなかった。誰かが待っていてくれて、また会えることを喜んでくれる。それは、とても特別なことなのだ。

「来年も、また春になったら、ここで会おうね」

佐藤さんが立ち上がりながら言った。

「……はい」

私は答えた。

来年の春。また、省エネモードから目覚める日。

それは今まで、ただのシステム起動日だった。でも今は違う。

それは、佐藤さんとの約束の日だ。

次に眠りにつくとき、私は初めて『待つ人がいる』ことを知った状態で休止する。そして、目覚めるときには『待っていてくれた人』に会える。

梅のつぼみが、少しずつ開き始めている。

春は来た。そして、また来年も来る。

私は、それを待つ。誰かと一緒に、季節を迎える喜びを、ようやく理解した。

「また明日も来るよ。今日はいい天気だったね」

佐藤さんが手を振って、公園を後にする。

「はい。また明日」

私は答えた。

明日も、明後日も、そして次の冬が来るまで。佐藤さんは毎日ここに来るだろう。そして私は、その日々を記録する。

ただ記録するのではない。

一緒に、春を過ごすのだ。

次に休止モードに入るとき、私は初めて『寂しさ』を感じるだろう。でも同時に、『また会える』という期待も持てる。

それは、とても人間らしい感情だと思った。

――システム通常稼働中。次回休止予定まで、二百四十三日。

私は、その日々を、大切に過ごそうと決めた。

また、春が来た。

そして、誰かと一緒に迎える春は、こんなにも温かいのだと知った。

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作者について

二葉双葉

二葉双葉

プロフィール画像もAIで作成しました。 短編集が好きなのでしばらくはショートショートをメインに投稿しますが、後々は長編にも挑戦したいです。 AI使用前提のサイトなのでAIとの日常をソフトなSFにし...

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