磯のプライド
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
これは、あまりにストイックすぎた昆布と、その硬すぎるプライドを目撃した男の、噛み応えのある真実の記録である。
本文
ある日、佐藤さんは究極の選択を迫られていた。コンビニの棚の前で、残り一個となった「昆布」のおにぎりを見つめていたのだ。
「今日はツナマヨの気分だったが……この昆布、なんだか妙に『こちらを見て』いる気がする」
佐藤さんは意を決し、その昆布おにぎりを手に取った。
レジに持っていこうとしたその時、隣にいた見知らぬおじいさんが佐藤さんの腕を掴んで叫んだ。
「よせ! そいつは罠だ! そいつは昨日からずっと、誰かに買われるのを待って、袋の中で**『腕立て伏せ』**をしていたんだ。あまりにストイックすぎる!」
見ると、確かにおにぎりのパッケージの中で、具の昆布がバッキバキのシックスパックに割れ、包装フィルムを内側からパンパンに押し返していた。その時である。
「フンッ!」
おにぎりが野太い声を上げた。
次の瞬間、おにぎりは自力で包装フィルムを弾き飛ばすと、米粒をプロテクターのように変形させ、レジカウンターへと猛ダッシュした。
おにぎりは自らバーコードを店員に見せると、どこから取り出したのか、正確に145円(税込)をレジ横のトレイに叩きつけた。そして、自動ドアを頭突きで突き破った。
「海に……帰るんだ……!」
そんな残響を残して、おにぎりは国道1号線を時速80キロで爆走し去っていった。
呆然と立ち尽くす佐藤さんの肩に、先ほどのおじいさんが優しく手を置いた。
「……まあ、あいつにも、守らなきゃいけない磯(プライド)があるんだろうよ」
佐藤さんは深く頷き、結局、棚に残っていた「全く動かないし、腹筋も割れていないツナマヨ」を買って帰った。
自宅でひと口食べた佐藤さんは、静かに呟いた。
「……やっぱり、筋肉質じゃない方が、噛み切りやすいな」
作品統計
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