探偵少女夢邦ちゃんは恋と謎を解き明かしたい
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
探偵少女の花染夢邦は大嫌いな実家のお爺ちゃんから9歳の自分に婚約者が出来たと話される。 翌日自分のクラスにやってきた少年にいぶかしげなものを感じながらも日常を送っていくとなんとその少年、方丈縁和のことを最愛の姉が好きになってしまったと聞く。 そんな圧倒的な理不尽にさいなまれながらも彼女は姉を守るため、そして両親のような真実の愛を育むために今日も謎を解いていく
本文
「どうしよう夢邦……私、私……」
私は夢邦の部屋で、顔を真っ赤にさせていた。見えないけどきっとそうなってる。分かるもん、ほっぺたがとっても熱くなってるし。
「縁和くんのこと、好きになっちゃった……」
目の前にいる双子の妹の名前は花染夢邦。ただし花染という家のことが大嫌いなので、普段は忍者の末裔であるお父さんの姓である初川か下の名前である夢邦で自分のことを呼べって皆に強制している子だ。
私は夢邦を心から信頼している。こんな話が出来るのも夢邦くらいだ。
だから私は精いっぱいの勇気を振り絞って言葉を繋げていく。
「きっと、ママがパパに抱いている気持ちって……こんな感じなのかなって……あれ? 夢邦? どうしたの? 夢邦?」
「グバァッ!」
「夢邦!? どうしたの急に!? 具合悪いの!?」
花染夢邦はあまりの衝撃に意識を失いかけながら、血涙を流し、ほとんど習慣のように何故こんなことになったのかを精一杯分析していった。
そう、ことの始まりは数週間前のこと――彼女たちのクラスに、方丈縁和が転校してきたことから始まるのだ。
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花染夢邦(回想)
少し雲が出ているが、十分に晴れと言える清々しい日のこと。あたし達のクラスは、いつもとは少し違ったざわめきで満ちていた。
「むーちゃん、こっちゃん、今日転校生が来るんだってね」
「うん! どんな子なのかな。仲良くなれるといいんだけど。ほら、私の隣の席って空いてるし、きっと転校生がここに座るよね」
「お姉ちゃんなら、どんな奴でもすぐに仲良くなれるわよ。そう緊張しなくていいわ」
「え? そう?」
「こっちゃんは可愛くて優しいもん。仲良くなれない方がおかしいよ」
「えへへ、照れるよ、りゅーくん」
龍虎とお姉ちゃんが、まだ見ぬ転校生について語らっているのを、頬杖つきながら見ていた。
転校生か……あの馬鹿爺が、婚約者はあたしと同い年だと言っていたわよね。このタイミングでの転校生……きな臭いというか、出来すぎているというか……どうしても裏を感じてしまうわ。
仮に転校してくるのがあたしの婚約者、少なくともあの爺さんの息のかかった奴だとすれば、その目的は何?まさかあたしを落として、結婚をしたいと思わせる……なんて愚考なわけはないわよね。
まあいいわ。説を浮かべようと、裏付けできないなら妄想と同じ。時間と思考力の無駄ね。そんなことする暇があるならお姉ちゃんでも見て癒されておきましょう。
そうしてお姉ちゃんにひたすら視線を向けていると、担任の宇賀町先生が入ってきた。手を叩いて、自分に目線を向けさせる。
「はいはい、皆静かに~。もうすっかり噂になっているから、まどろっこしいことは抜きに、早速入場していただきましょう」
先生もどことなく楽しそうだ。先生に促されるがままに一人の男子が教室に入ってくる。
身長も体格も、クラスの男子達に比べて突出して違うところはない。強いて言うならば、少々筋肉は発達している程度だろうか。
少し辺りに気を配りながら、緊張しながら入ってきた。新しい環境に不安と緊張を多分に覚えている、どこにでもいる普通の少年といったところだ。
「それじゃあ方丈くん、皆に挨拶して」
「はい!」
黒板に何故か赤いチョークで『方丈縁和』という自分の名前を、大きく書いた。
「方丈縁和です! 家の事情で変な時期に転校しましたが、仲良くしてください! 好きなキャミモンはパルカーです!」
先生は、やはりお姉ちゃんの隣の席に座るよう指示する。座った縁和に向けて、お姉ちゃんは明るく微笑む。
「私の名前は花染琴流。こっちは妹の夢邦だよ。よろしくね、縁和くん」
「ああ、よろしく」
お姉ちゃんと縁和は、さも当然のように握手を交わした。お姉ちゃんの清らかな手だと知っているのかしらこいつは。
下衆の勘繰りなのは重々承知だが、あたしの脳裏に一つのことわざが過ぎった。『将を射んとする者は、まず馬を射よ』ってね。
作品統計
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