断片資料|雑誌記事抜粋(昭和四十年代・婦人誌特集)

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/3/3 📚 シリーズ: にくゑ-断片 📝 571文字 ✅ 全年齢

あらすじ

episode - 断片資料|雑誌記事抜粋(昭和四十年代・婦人誌特集)

本文

「ある村から逃げた母の告白」

聞き手=編集部

――どうして村を出ようと思われたのですか。

「あの子を守りたかったからです。生まれたときから、皆が笑ってばかりで……。お祝いの席でも、泣いてはいけない、声を荒げてもいけないと何度も言われました。

 赤ん坊が泣けば『よく育つ子だ』と笑って抱き上げる。でもその目は、祝っているというより、数えているように見えました。あの子が“いつ蓋になるか”を確かめるみたいに」

――蓋、とは何のことですか。

「あの村では巫女の家から娘を“蓋”にする掟があります。井戸に臥せて、神の肉を封じる役目。私は嫁ぎ先の家系がその筋で、子を産めば必ず誰かが“蓋”にされる……そう思ったのです。

 夫も村人も皆、笑って『大丈夫だ』と言った。でも、笑顔が一様すぎて、私はもう怖くてたまらなかった」

――それで、子どもを連れて?

「夜明け前に、背に負って山を越えました。どこへ逃げても笑い声が追ってくるようでした。途中で何度も振り返りましたが、人影はないのに、耳の奥で『おかあさん』と囁く声が離れなかった」

――今、その子は?

「もう大きくなりました。あの村のことは話していません。話せばあの笑顔が伝わってしまう気がして……。でも、あの子の笑う顔を見ると、胸が痛むのです。村の笑顔と同じに見えてしまうことがあるから」

(証言者の氏名・住所は非公開とされている)

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作者について

カクナ・ノゾム

カクナ・ノゾム

カクナノゾムと申します。 趣味の小説を細々と書いてます。 面白いことは間違いないので是非是非ご一読くださいませ。

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