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間章 健太(上)

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/3/20 📚 シリーズ: にくゑ-本編 📝 1,247文字 ✅ 全年齢

あらすじ

にくゑ - 間章 健太(上)

本文

翌日の昼休み。健太は本を閉じてぼんやりと窓の外を見ていた。子どもたちが机を寄せ合ってわいわい話している声が耳に入る。

 あゆみが梓の隣で何か楽しそうに話しているのが目に留まり、ついつい目で追ってしまう。屈託のない笑顔で梓の手を取り、何かを教えているあゆみ。

 自分にはない積極性と明るさが眩しい。あゆみの弾むような笑い声に、健太の胸が少しきゅっとした。美穂も輪に加わって座ったようだった。

 「昨日の畑作業、お疲れさまじゃった」

 美穂が優しく声をかける。

 梓は少し躊躇してから口を開いた。

 「あの……昨日の畑で、土の中に変なものを見たの。目のような……それに、帰り道で変な子供も……」

 健太は顔を上げた。目? そういえば梓は昨日、土を見つめて青ざめていた。

 あゆみが首を振って笑う。

「ええ? 目? そんなん、ただの根っこじゃけぇ。それに村の子供は都会の人から見たから変かも知れんけどなぁ」

「そうそう、気のせいじゃ」

 美穂も口を揃える。

「畑なんて、いろんなものが埋まっとるとよ」

 健太は眉をひそめた。みんな、梓の話をまともに聞いていない。

 「それに掟をちゃんと守っとれば、何も怖いことはないけぇ」

 美穂は安心させるような笑顔を浮かべながら言った。

 ――掟。また掟だ。健太の胸に苛立ちがこみ上げる。梓が不安がっているのに、掟さえ守れば大丈夫だなんて。そして、あゆみの前で情けない自分を見せるわけにはいかない。あゆみの明るさに釣り合うような、強いところを見せたかった。

 梓は不安そうな表情を浮かべたまま、「でも、本当に見えたの……」と食い下がろうとした。

 その時、健太は椅子から勢いよく立ち上がった。もう我慢できなかった。

 「そんなん守らんでも、何も起こりゃせん」

 吐き捨てるような声だった。ざわめきが止まる。教室の空気が張り詰める。

 健太は挑むように、笑顔を一度だけ作って見せた。

 「ほら、一回で十分じゃろ」

 子どもたちの笑顔が固まり、不安げな視線が交錯する。梓はその異様さを初めて体で感じ、背中に冷たい汗が流れた。

 清音がゆっくり立ち上がる。健太を見つめる瞳は、氷のように冷たい。

 「健太、今ならまだ間に合うわ。ちゃんとやり直しなさい」

 声は静かだが、底に冷たさを含んでいる。健太は顔を赤くして突っぱねた。

 「大げさなんじゃ。何も起きんじゃろ」

 清音はほんの一瞬、悲しそうに目を伏せる。

 「……きっと報いがあるわ。でも、今はまだ大丈夫」

 健太は美穂が何かを言いたげにこちらを見ているのに気づいたが、あゆみが「どうしよう」と小声で呟くのが聞こえると、つい強がってしまった。

 「なんともありゃせんよ。ただの決まりごとじゃろ」

 健太は強がって見せたが、清音の冷たい視線が背中に突き刺さるのを感じていた。教室に重い空気が漂い、皆の視線が健太に集まっているのが分かる。あゆみの心配そうな顔を見ると、胸の奥で何かが痛んだ。でも、もう引き返すことはできなかった。

 「ほぅ……」

 教室の隅で、清音が物憂げにため息をついたのを見て、健太の胸には言い知れない不安がわき上がってくるのだった。

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作者について

カクナ・ノゾム

カクナ・ノゾム

カクナノゾムと申します。 趣味の小説を細々と書いてます。 面白いことは間違いないので是非是非ご一読くださいませ。

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