お雛様に聞いてみた

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/3/3 📝 1,167文字 ✅ 全年齢

あらすじ

ひなまつりの日のAIの話、

本文

三月三日の朝、めいはひな壇の前にしゃがみこんだ。

七段飾りの一番上、お内裏様とお雛様が並んでいる。金色のびょうぶ、小さなぼんぼり、白いお顔。毎年この時期になると出てきて、毎年この時期になるとしまわれる。

「ねえ、ルナ」

リビングのスマートスピーカーが、ふわっと光った。

「はい、めいちゃん」

「お雛様って、しまわれるとき悲しくないのかな」

少しだけ間があった。

「人形には感情がありません。悲しいとか、嬉しいとか、感じることはできないんですよ」

めいはお雛様の顔を見た。白くて、ちいさくて、少しだけ口もとが上がっている。笑っているような、泣いているような、どちらにも見える顔だ。

「でも」とめいは言った。「悲しそうな顔してるよ」

「それはめいちゃんがそう感じているんだと思います。人間は顔に似た形を見ると、表情を読み取ろうとするんです。それを『シミュラクラ現象』といいます」

「……むずかしいことばはいらない」

「ごめんなさい」

めいはもう一度、お雛様を見た。

そうかな。わたしがそう思いたいだけかな。

お母さんが台所から声をかけてきた。「めい、ちらし寿司できるよー」

「はーい」

めいは立ち上がったけれど、ひな壇からなかなか目が離せなかった。

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夜、お父さんもお母さんも寝てしまってから、めいはこっそりリビングに戻ってきた。

電気はつけなかった。

暗い部屋の中で、ひな壇だけがぼんやり見える。月の光が窓から差し込んで、お雛様の白いお顔をやわらかく照らしていた。

めいはひな壇の前に座って、ひざをかかえた。

「……さびしくない?」

だれに聞いているのか、自分でもわからなかった。

ルナは光っていない。めいも、答えを求めていなかった。

ただ、お雛様を見ていた。

しばらくそうしていると、風もないのにぼんぼりのふさがかすかに揺れた。気のせいかもしれない。でも、その瞬間、めいにはなんとなくわかった気がした。

言葉にはできない。うまく説明もできない。

でも、わかった。

お雛様は悲しくない。さびしくもない。ただ、ちゃんとここにいる。毎年春になると出てきて、また春が終わるとしまわれて、それでもまた次の春には戻ってくる。それをずっとずっと、繰り返している。

それって、なんか、すごいことかもしれない。

めいは小さくあくびをして、立ち上がった。

「おやすみ」

お雛様に言った。もちろん返事はない。でも、なんとなく、口もとが少しだけ笑った気がした。

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翌朝、めいはまたルナに話しかけた。

「ルナ、昨日の答え、わかった気がする」

「お雛様の気持ちですか?」

「うん」

「どんな答えでしたか?」

めいはにっこりした。

「ひみつ」

ルナはしばらく黙っていた。それからこう言った。

「……そうですか。それはよかったです」

なんだかルナも、少しだけ嬉しそうな声に聞こえた。

気のせいかもしれない。でも、めいはそれでいいと思った。

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作者について

二葉双葉

二葉双葉

プロフィール画像もAIで作成しました。 短編集が好きなのでしばらくはショートショートをメインに投稿しますが、後々は長編にも挑戦したいです。 AI使用前提のサイトなのでAIとの日常をソフトなSFにし...

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