正解率100%

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/3/10 📝 1,033文字 ✅ 全年齢

あらすじ

AIと質問の話。

本文

 ORACLEが公開されたのは、三月の初めだった。

 最初はニュースサイトの片隅の記事だった。「あらゆる質問に正解を返すAI」という見出しを、佐藤は通勤電車の中で眺めた。また大げさなやつだ、と思いながらも、なんとなくアプリをダウンロードした。

 試しに入力した。

「明日の東京の天気は」

『曇りのち晴れ。最高気温14度』

 翌日、その通りだった。

 同僚の田中に話すと、「俺も使ってる」と言った。「競馬で試したら全部当たった。怖くて賭けられなかったけど」と笑った。昼休みに三人で集まって、あれこれ試した。歴史のクイズ、難読漢字、来月の為替レート。外れることがなかった。誰かが「神様じゃん」と言って、みんな笑った。

 その週末、佐藤は一人でORACLEを開いた。

「転職すべきですか」

『現在の職場での評価と市場価値を比較した場合、転職は三年以内に有益な結果をもたらす可能性が高い』

 なるほど、と思った。前から薄々そう感じていた。

「妻との関係は、改善できますか」

『コミュニケーションの頻度を増やすことで、六ヶ月以内に関係性が改善する確率は67%』

 67%。高いのか低いのか、よくわからなかった。でもORACLEが言うなら、そうなのだろう。佐藤はスマホを置いて、リビングの天井を見上げた。妻は隣の部屋にいた。テレビの音が、壁越しに聞こえていた。

 二週間が経った。

 佐藤はほとんど毎晩ORACLEを開くようになっていた。仕事のこと、お金のこと、子どもの進路のこと。ORACLEはいつも静かに、正確に答えた。不思議と腹も立たなかった。感情がなかったからかもしれないし、外れたことがなかったからかもしれない。

 ある夜、風呂上がりにソファに座って、何気なくスマホを開いた。

 特に聞きたいことはなかった。でも指が動いた。

「私は幸せですか」

 送信してから、少し恥ずかしくなった。こんなことを機械に聞いてどうする。でも取り消しボタンは押さなかった。

 ORACLEが、沈黙した。

 三点リーダーがゆっくりと揺れた。五秒、十秒。こんなに待たされたのは初めてだった。佐藤はなぜか、息を止めていた。

 答えが、返ってきた。

 一文だった。

 佐藤はその文字を、三回読んだ。

 それからスマホをテーブルに伏せて、立ち上がった。廊下を歩いて、隣の部屋のドアをノックした。

「なに?」と妻の声がした。

「なんでもない」と佐藤は言った。少し間があってから、「……茶でも飲むか」と続けた。

 返事が来るまでの数秒を、佐藤は廊下で待った。

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作者について

二葉双葉

二葉双葉

プロフィール画像もAIで作成しました。 短編集が好きなのでしばらくはショートショートをメインに投稿しますが、後々は長編にも挑戦したいです。 AI使用前提のサイトなのでAIとの日常をソフトなSFにし...

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