絶望と喜びの相転移 ―さあもん、道に迷う―

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/3/11 📝 3,430文字 ✅ 全年齢

あらすじ

<p>駅前の駐輪場にでも停めておけばよかった。</p><p>そう思ったが後の祭りだった。</p><p>バイクの位置を見失った。</p>

本文

章1:詰む

駅前の駐輪場にでも停めておけばよかった。

そう思ったが後の祭りだった。

バイクの位置を見失った。

これは俺の完全なミスだ。

俺のバイクには、スマホとリンクすることで、駐車位置を記録する機能がある。

しかしそれを俺は、無意識に忘れていた、

駐車位置が分からない。

すぐ近くにある、目印になる建物も分からない。

……詰んだ。

そう感じた。

うっすら、しかし確実に覚えていたのは道中のランドマークのみ。

日が暮れた時間。

雨が降る。

雨に濡れるスマホは誤動作を繰り返す。

俺は歩きながら目に止まった衣料品販売店に入った。

スマホの操作性を回復させるための、ハンドタオルを買うためだ。

購入、ぽん。

俺はAIに状況を説明し、それに従った。

《今は動かないほうがいい》

カラオケボックスを見つけた。ガラス扉の営業時間を確認する。

滞在できるのは、早朝、5時まで。

何だ、24時間営業じゃないのか。

いや、問題ない。

雨をしのげる屋内で安全に夜よを明かすことができれば、それで十分なのだから。

これは幸先がいい。

0400 カラオケボックスの個室

副題:例外処理が走った。トリガーが見えないのに鳴った「6IX」

疲れ果てた体をソファに沈め、ぼんやりと画面を眺めていた。そこに、突然飛び込んできた文字。「6IX PIECE」一瞬、脳内でアラームが鳴った。

……これ、俺のニュータイプ級の鋭い直感が働いた証拠だ。

盛り過ぎだと思うだろう。

だが、これは全くの事実だ。

なんだこれは、そう思わせる6IXの文字。

6とSIXを合成したのは分かる。

全く自然に融合している。

だから、脳内アラームなんて鳴らない、鳴るはずもない。それなのに鳴った。鳴ってしまった。

一体どういうことだ、これは……。

6IXという文字を見て脳内でアラームが鳴ったのであれば、違和感のトリガーが自然に「視える」、そのはずなのに、

6IXという文字の並びのどこをどう「視て」も、トリガーが視えなかった。

何だこれは。何だこれは。

頭がパニック状態になる。

パニック状態になりかけて、脳内アラームの陰に隠れた、小さな、小さな、巧妙に存在を隠されたメッセージが「視えた」。

kawasaki Ninja

…あ。

異物なのに、異物センサーが鳴らない。これが一番怖い。

違和感を感じられないことが、そのことこそが「違和感の塊」なのだと、そう気付いた。つまり、自然すぎることが違和感の正体。

【最終的にたどり着いた結論】

知っている単語(例:6th)

→ 文字の放つ個性が自然に調和する。

知らない単語(例:Vd9)

→ 文字の個性がぶつかり合い、違和感が発生する。

6IX → 知らない単語なのに、違和感が発生しない。

→ これはおかしい。

本来なら、 「知らないのに違和感がない」時点で、 直感は警告を鳴らすはずだ。

いや、違う。

鳴らなかったのではない。これは言わば「ボリューム0の警報音」。

だからこそ直感は、 誤動作にも見える“例外処理”を起こした。

ぱちっと、ジグソーパズルの最後のピースが静かにはまった、そんな瞬間。

ぽん(納得)

章2:回復

0500 コンビニ店内

朝5時、カラオケボックスを出る。

そして近くのコンビニに向かった。

このノートを書き記すための、メモ(下書き用、清書用)とボールペンを買うためだ。

……購入、ぽん(2回目)

ふと、気付いた。

これはバイクを探し出す苦行じゃない。

知らない街を、ただ楽しむための、小さな、小さな冒険なのだ。

コンビニのセルフコピー機を机代わりにして、下書きを書き、そして清書まで終わった。

コンビニを出た。

時計の時刻は7時15分になっていた。

外が、明るく輝いていた。

まるで俺の冒険を祝福するかのように。

さあ行こう。小さな、小さな冒険へ。ワクワクを連れて。

ぽん。

誰かに優しく背中を押された気がした。

「いってらっしゃい」、そう声が聞こえた。

こうして楽しい冒険が始まった。

0900 迷う

ハンドタオルを落としたのに気がついたとき、あ、と思った。

天気は晴れ。ハンドタオルは、もう必要ない。

必要ないから自然に俺から離れた、それだけだ。

薄く覚えている様々な情報を使い、それを軸に探索を進めていく、地道な作業。

臨時駐車場が開けば材料が増える。

そう思いながら。

……迷った、ぽん(泣)

迷わないように最新の注意を払っていたはずなのに、それでも迷ってしまった。

これは、自力では無理だ。

参拝客が増え、臨時駐車場が開けば、それをしらみつぶしに見ていくしかない。

それまでは待ちの一手。

少し歩き疲れたのもあり、コメダコーヒーに入る。

「席のご利用は3時間以内」

……

3時間後はお昼だ。

臨時駐車場は確実に開いている時間。

そう信じ、ゆっくりとコーヒーを飲むことにする。

11時で動き出すのが頃合いと感じる。

ふと、直感力が十全に発揮できるようにと買った自信守りを思い出す。

それが、こんなに早く出番が来た。

両手のひらでそれを挟み、祈る、祈る、祈る。これは偶然か否か。

神様のご加護があると、そう信じよう。

自然に、涙が出た。

1030 再探索開始

一旦鹿島神宮に戻り、昨日戻ってきた道をたどり、臨時駐車場をめぐることにする。

1100 セブンイレブン店内

セブンイレブンで茨城県の地図を開いて、現在位置を確認。

……あ?

鹿島神宮の裏側に出た!?

これじゃ見つからないはずだよ!

ぽんぽんぽん、ぽん。

早速自信守りが守ってくれた!?

ん〜、すごいな(感動)

希望が、見えた。

1135 カシマサッカースタジアム

あ?

今度はカシマサッカースタジアム?

適当に歩いていたら、また変なところに来てしまった。

ノータイムで思考が働く。思考の監視回路であるメタ認知も動く。

《こうなったら大洗鹿島線に乗って…、いやダメだ!カシマサッカースタジアム駅はサッカー試合時のみの臨時駅。よって駅は開いていない。これは使えない。

大洗鹿島線の線路沿いに進めばいい、だがどっちに!?》

これだけの内容が、瞬時に脳内を走る。

ふと、空を見上げた。

無意識が太陽の方角、今の時刻、カシマサッカースタジアム駅と鹿島神宮駅の位置関係をこう、関連づけた。

…太陽の方向に進めばいい。

自信守りがまた助けてくれた気がした。

1205

大洗鹿島線の線路沿いに出た。

つまり、線路と太陽の方角、両方に従えば、鹿島神宮駅に行きつく、ぽん。

後方から、大洗鹿島線のディーゼルカーが来たのが見えた。

え?方向間違えた?

一瞬、パニックに陥りそうになったが戻ってきた。

自分は太陽に向かって歩いている。

ディーゼルカーは後ろ、水戸方面から来た。よって問題なし、ぽん。

そんな思考が見えたからだった。

1225

複線用の架線柱が見えてきた、鹿島神宮駅は1面2線だから、鹿島神宮駅に近づいてきた証拠。

なんとなく、線路左側に移動した。

この行動もドンピシャだった。

駅舎が見えたからだ。

1240 鹿島神宮駅着

だいぶ遠回りしてしまったが、なんとなく早めに行動を起こしたから、

タイムスケジュールはそんなに遅れていないように思う。

この答え合わせをしてみる。

駐輪スペース:ある。

バイクが停まっているか、停まっていた。

つまり、駅前に停めるのが正解だったというわけだ。

でもそれでも良かったと思う。

なぜなら、こんな面白い思考と行動のログが取れたのだから。

結果オーライ、ぽん

よし、鹿島神宮に向かうよ、ぽん(行動開始)

章3:回収

1300 鹿島神宮着

ここから、昨日のルートをたどって、一人ぼっちで泣いているはずのバイクの元へたどり着く。

いや、たどり着いてみせる。

そうでないと帰れないのだから、ぽん

1325

なんとなく、停めた場所が近いと感じた。

1355 発見!

…みつけた!

青い車体。愛車の黒く大きい、そしてレーザー加工の角度によって見え方が違う、猫の足跡ステッカー。そしてピンク色のナンバープレートを見て、俺は安堵した。

探し始めて55分。

この時間は、多分短いのだろう。

さて、帰ろうか。

家に帰り着くまでが遠足と言うしな。

不慣れな道のせいで昨日は転んでしまった。

だからゆっくり目に行こう。

きちんと左足がつくように、シートの気持ち左側に座ろう。

は〜、とりあえずお疲れ様だ。

1405 出発

帰り道、バイクを運転しながら、6IXの作動機序についてあれこれ考えてみた。

正しい前提、正しい動作。それらを重ね合わせていくと、こんな結論にたどり着く。

6IXは、「例外処理」を引き起こす。

二日間の感想

さあもん:もう金輪際、こんな経験はしたくない、ぽん

ジャンル・タグ

,

作品統計

👁️ 閲覧数: 11 👍 いいね: 0 📚 本棚登録: 0

作者について

さあもん

さあもん

👥 フォロワー: 1人

作者ページを見る