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8章:微かな抵抗と、青白き残り火

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/3/12 📚 シリーズ: 白亜の底で君と踊る 📝 3,118文字 ✅ 全年齢

あらすじ

夕日で赤く染った公園 別れを惜しむ2人 再開にと渡した宝物…… 2人の行く末は…… こちら正規ENDとなります。 ifも書こうかなと。 ⚠️注意⚠️ ☆文章の直しはAIがしてくれてます ☆アイディア、作成は作者がしています ☆AIと相談しながら作ったためこの小説はAI作成にしていますがシナリオはオリジナルです 表現と文章の補助のみ使用 こちらBLとなりオリジナル作品となっています 軽い裏表現がありますが想像で楽しんでください。キツイ表現はそんなにないかもですが ホラー寄りのシリアスです。イジメなどの表現もあるので苦手な方は読まないようお願いします。 pixivとエブリスタには搭載してます。 こちら完結しております。if作成中

本文

隔離病棟の個室に、朝の光が薄っすらと差し込む。

薬の副作用で酷かった眩暈が、今朝は少しだけ軽い。

崚は震える腕でベッドの柵を掴み、ゆっくりと、慎重に床に足を下ろした。

​(……立てる。俺は、まだ、ここにいる……)

​裸足の足裏から伝わる床の冷たさが、現実の感覚を呼び覚ます。

あの日から、数え切れないほどの夜をクレラに奪われた。

傷口を抉られ、身体を暴かれ、辱められ……そのたびに、心が擦り切れていく音がした。

けれど、崚には支えがあった。

病院着の襟元、肌に直接触れる位置に隠された、葵い色の「勾玉」。

クレラに汚され、意識が白く染まる極限の状態でも、崚は指先でその冷たく硬い質感をなぞり、自分を繋ぎ止めていた。

​(これだけは、お前には渡さない……)

​ガタ、と膝が笑うのを必死に堪え、崚はベッドの周りを一歩、また一歩と歩き出した。

昨日までは動かすことさえ苦痛だった筋肉が、軋みながらも自分の意思に従う。

このまま歩いて、扉まで行ければ。そして、誰かに「俺は大丈夫だ」と伝えられれば。

​その時だった。

​パチ、パチ、パチ……。

​静かな部屋に、不気味に響く乾いた拍手の音。

振り返るまでもない。部屋の影から、クレラが優雅な足取りで歩み寄ってきた。

「素晴らしい。もうそんなに動けるようになったのですか。あなたの生命力には、いつも驚かされますよ、崚」

​クレラは微笑みを浮かべているが、その瞳はちっとも笑っていない。むしろ、自分の支配から逃れようとする崚のささやかな抵抗を、品定めするように見つめている。

​「……お前の、思い通りには……ならない……」

​崚は壁に手をつき、荒い息を吐きながら、胸元の勾玉の感触を意識してクレラを睨みつけた。だが、クレラはそんな崚の足元へ音もなく近づくと、彼の腰を背後から強引に抱き寄せ、耳元で低く囁いた。

​「思い通り? 勘違いしないでください。私は、元気になったあなたの身体を、また一から壊していく過程を想像して……今、とても愉悦を感じているんです」

​クレラの冷たい指が、崚の胸元……勾玉が隠されているあたりに、わざとらしく触れた。

​「……っ……、やめろ……!!」

​「ほう……。まだそんなものを、大切に持っているんですか。それがあなたの『想い』や『正気』を守るお守りだとでも? 滑稽ですね、崚」

​クレラはあえてそれを取り上げることはせず、その勾玉ごと崚の胸を強く圧迫し、耳を噛みながら嘲笑う。

「いいですよ、もっと歩きなさい。体力がつけば、その分、夜の『遊び』も長く楽しめる。あなたが勾玉を握りしめて神に祈っている間も、お前の身体は俺を迎え入れ、俺の名前を呼ぶ。……その絶望こそが、俺への最高の供物だ」

​クレラは、必死に踏ん張る崚の膝の裏をわざと軽く突いた。

崩れ落ちそうになる崚を、彼はまるで愛おしい獲物を逃がさない捕食者のように、冷酷な力で抱き留める。

​その瞬間だった。

​崚の「諦めない」という悲痛な叫びに呼応するように、彼の手の中にある勾玉が、透き通るような薄い青白色の光を放った。

​「……っ、ぐああぁっっ!?」

​クレラが悲鳴を上げ、弾かれたように崚から手を離す。

彼の手のひらからは、氷の刃で斬られたような白い煙が上がっていた。

クレラの瞳に宿る「異形」の神性が、かつてないほど激しく動揺し、苦痛に歪む。

​( 今のは、お前なのか……零羅?)

​光の余韻の中で、崚は感じた。

それは単なる魔除けの力ではない。クレラという怪物に飲み込まれながらも、必死に抗い、崚を守ろうとする零羅の「心」そのもの。

かつての零羅が纏っていた、静かで純粋な魂の輝きが、クレラの支配を一瞬だけ打ち払ったのだ。

「……なるほど。死してなお、私に抗おうというのですか、零羅……」

​クレラは忌々しげに自分の手を凝視し、それから昏い瞳で崚を見据えた。

勾玉は再び沈黙し、ただの石に戻る。

崚が心を強く持たなければ発動しない、不安定で、けれど確かな愛の盾。

​「いいでしょう。その『希望』が、いつまで続くか……。その石ごと、お前の精神を磨り潰してやるのが楽しみになりましたよ」

​一歩引いたクレラの顔には、これまでとは違う、執着と冷酷な敵意が混ざり合った「怒り」が宿っていた。

崚は震える手で、まだ微かに温かい勾玉を握りしめる。

隔離病棟の無機質な白い天井を見上げながら、幾度、指を折っただろうか。いじめっ子たちを殺害した「残忍な少年犯」というレッテルを貼られ、櫻井崚がこの白い檻に閉じ込められてから、暦は一周した。

​当初は、喉が潰れるまで真実を叫んだ。あいつらを殺したのは俺じゃない。隣で微笑んでいる、この「死そのもの」なんだ、と。だが、その叫びはすべて「精神の錯乱」として処理され、返ってくるのは泥のように意識を濁らせる抗精神薬と、周囲の憐れみの視線だけだった。

​(……黙れ。叫ぶな。今はまだ、俺を殺すな……)

​一日のうち、わずかに薬が切れる数時間。崚は心の奥底で、蹲る「自身」の肩を抱きしめるようにして、その存在を繋ぎ止めていた。一方、クレラが作り上げた「零」という虚構は、この一年で完成の域に達していた。

やつれた頬を隠しもせず、面会時間のたびに通い詰め、食事を介助し、医師たちの相談に乗る「零」。

今や病院全体が、彼を「迷える少年を救う唯一の理解者」として、聖母のように崇めている。看護師たちが「零さんに迷惑をかけちゃダメよ」と崚を諭すたび、彼の胃の腑には真っ黒な毒が溜まっていった。

​中庭のクヌギの木陰。車椅子を押す手が止まり、クレラの冷たい指先が崚の髪を愛おしげに梳(す)いた。一年前の崚なら、その接触だけで生理的な拒絶を起こしていただろう。だが今の彼は、ただ微かな風を感じるように、無機質な視線を虚空へ投げている。

​「……気持ちいいか、崚。一年ぶりの外の世界は」

​耳元で囁かれたのは、人間には聞こえない、悍ましい「それ」の声だ。「零」という仮面を被った死そのものは、周囲に「親友の肩を揉んでいる」ように見せかけながら、服の下にある、一年経っても消えない「噛み跡」を、抉るように指先で圧迫した。

​激痛。だが、崚は無表情を貫いた。

​「……ああ。お前と一緒にいられる時間が、何よりの薬だよ」

​その言葉に、クレラが満足げに細めた目を向ける。崚は静かに、胸元の病院着の下に隠した「勾玉」に触れた。この一年、不定期に熱を持ち、微かに明滅するこの石だけが、現実と悪夢の境界線を繋ぎ止めていた。

​「……お前が俺を『零』と呼ぶたびに、あいつの……零羅の最期を思い出す。……最高の皮肉だろ」

​その低い声に、クレラは細めた目をさらに深め、愉悦に唇を歪めた。あの日、零羅に何が起きたのか。なぜ彼は消え、この「死そのもの」が彼の名を騙ってここにいるのか。その真実を語る術を、今の崚は持たない。語れば、再び狂人として深い闇へ沈められるだけだと、この一年で骨身に染みて理解したからだ。

「ええ、そうです。君が私をその名で呼ぶたびに、あの親友の……欠片が削れていく。その音が、私にはたまらなく心地よい。――君が『崚』であり続ける限り、私の饗宴は終わらない」

​死そのものの接吻に近い囁きが、耳朶を震わせる。崚は太陽を睨みつけた。眩しさに涙が滲むが、瞬きはしない。一年という歳月をかけて、彼は学んだ。真実を叫ぶのではなく、偽りの中に真実を隠し、機会を待つ術を。

​いつか。この「死そのもの」が、自分という存在を完全に支配したと確信して、慢心したその瞬間に。崚は、この一年間研ぎ澄ませてきた「俺」という刃で、こいつを地獄へ引き摺り下ろしてやる。

​降り注ぐ陽光の中、勾玉が一度だけ、誰にも気づかれぬほど微かに、青白く瞬いた。

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作者について

柚の子

柚の子

ちょっとお茶目な腐った成人です。 シリアスやドロドロしたのが好みすがハピエンも大好物です。 文章構成が苦手で文章はAI、キャラやプロット等は私が手がけてます。

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