リトのへこたれない「アフターケア」
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
「あきらめるのはまだ早い。……なんてな、古いギャグでも飛ばして笑い飛ばそうぜ!」
本文
その日の夜、逃げ帰ったいじめっ子たちのスマホに、一斉に見覚えのない動画が届く。
「……なんだこれ?」
震える手で再生すると、そこには月明かりの下、学校の鉄棒で「片手懸垂をしながら、なぜか真顔でシュールなギャグを連発する」リトの姿が。
『やぁ諸君、「驚き桃の木山椒の木」! 今日はいい筋肉痛になりそうかな?』
動画の中のリトは、スレンダーな顔立ちのまま、血管の浮き出た恐ろしい腕で鉄棒を握りつぶさんばかりの力を込めている。
『君たちの家、全部把握しちゃった。もし明日、零羅や崚に指一本でも触れたら……次は君たちの家のドアを「トントン」じゃなくて、「大胸筋で粉砕」しにいくからね。あ、親御さんには「夜中にプロテインの妖精が出る」って伝えておいて。……それじゃあ、「おやスィー」!』
いじめっ子達は震えた
しかし、零羅に対する態度は諦めようとはせず
ことが収まったらまた
やればいいと...後悔することをしらない
数日後...
零羅が怯えながら校門をくぐろうとすると、そこには数人のいじめっ子たちが溜まっていた。
「どうして...」真っ青になる零羅
「おい、昨日のあいつ……あの『筋肉の化け物』はいねーだろうな?」
「ああ。他校の制服だったし、今日は俺たちで――」
彼らが零羅を囲もうとした、その時。
校門の影から、シュッとした美少年――リトが、なぜか重そうなダンベルを両手に持ってヌッと現れた。
「やぁ諸君、『お久しブリーフ』! おっと、手が滑ってダンベル(10kg)が足の上に落ちそうだ。怖いねぇ、筋肉の不随意運動ってのはさ」
「ひっ……! なんでお前がここに!?」
「俺? 俺は次元を渡る風……じゃなくて、ただの通りすがりの同級生(崚の)さ。あ、ちなみに君たちの放課後の予定、全部『スクワット1000回』に書き換えておいたから。俺が付き合ってあげるよ!それとも家にいってもいいのか?」
リトの笑顔に、いじめっ子たちは悲鳴を上げて散り散りになった。
同日・放課後:スポーツ高校のプールサイド
リトは、今度は自分の学校で崚の練習を見守っていた。
「……リト。お前、今日ずっと居眠りしてただろ」
崚がプールから上がり、タオルで顔を拭きながら呆れたように言う。
「失礼な。俺は深い瞑想(マッスル・メディテーション)で、遠く離れた零羅の周りの空気を浄化してたんだよ。……あ、崚。今日の帰りにプロテイン買いに行くぞ。」
「……勝手に行けよ。……あのさ、久々に見たよ...零羅の笑顔、あいつのとこ行ってよかった」
「そりゃあ良かったな!」
リトは満足気に胸を張り笑う。
「ところでさリト」
崚の視線は鋭い目つきでリトを見た
昨日の放課後、更衣室で自分を焚きつけ、あろうことか「他校の屋上」に先回りして零羅を救った疑惑の男。
崚は、窓際で優雅に「空気椅子」をしながら英単語帳を読んでいるリトに口調強めに言う。
「ちょっと面貸せよ」
「おっと、おどろ木ももの木。なんだい、崚。俺の広背筋に何か相談かな?」
「しらばっくれんな。昨日、零羅を助けたの、お前だろ。……あいつ、『スレンダーな筋肉の化け物に救われた』って、一晩中パニックになってたんだぞ」
リトは単語帳を閉じ、フッと不敵な笑みを浮かべた。
「……さて、何のことやら。俺は昨日、放課後はずっと三角筋といちゃついてたからな。人助けなんて、そんなカッコいいこと……」
「嘘つけ! お前、あいつに名前教えなかったらしいな。おかげで零羅は、あの屋上には『筋肉の神霊』が住んでるんだって信じ込み始めてるんだぞ!」
「神霊か……。悪くない響きだ!」
「納得すんな! ……ったく、お前……。なんで名前教えなかったんだよ」
崚が呆れたようにため息をつくと、リトはふっと真面目な顔になり、椅子空気椅子を解除。
「……名前なんてのは、実体(筋肉)が伴ってから教えるもんだ。……それにさ、崚。俺が名乗るより、お前が『ダチを助けたんだ』って自慢げに話す方が、あいつ(零羅)も安心するだろ?」
「……リト……。お前、たまにそういう……」
「あ、でもプロテイン代は請求するからな! メンゴメンゴ!」
「台無しだよ!!」
部活帰り近場のファミレス
リト、零羅、崚はいた
「零羅!筋肉は裏切らない
たまには身体を動かして鍛えるんだ
まずはその細いうでだな!
と零羅を鍛えようとするリトに「やめろよ」と崚が言う。
「おいおい崚、甘いな! 甘いのはプロテインと、君の考え方だけにしてくれよ!」
リトは華奢な指先で、零羅の細い二の腕を、まるで高級な絹糸でも扱うような手つきで……けれど、逃がさない確かなホールド力でパシッと掴んだ。
「いいか零羅。筋肉は、裏切らない(2回目)。裏切るのはいつだって、自分の中の『妥協』という名の脂肪なんだ。まずはその、ポッキーみたいな前腕筋を、せめてプリッツ(極細)くらいまでビルドアップさせるぞ!」
「ちょ、ちょっと、野山さん……? ビルドアップ……?」
困惑する零羅。その背後から、崚が慌てて割って入る。
「おいリト! やめろって! こいつは俺みたいにスポーツやってるわけじゃねーんだ。いきなりそんなこと言われても困るだろ。大体、そのポッキーって例え、地味に傷つくだろーが!」
「ノンノン、崚。これは愛だ、マッスル・ラブだ。零羅のこの腕には、秘められた『伸びしろ』という名の筋繊維が詰まってるんだよ」
リトは不敵に笑って零羅を見つめる。
「零羅、まずはスクワットからだ。下半身を鍛えれば、心も安定する。そうすれば、いじめっ子が現れても投げ飛ばせるようになる。……さぁ、一緒に次元の向こう側までパンプアップしようぜ!」
「う、うん……あはは……。……崚、野山さんって、本当に……熱い人なんだね……」
苦笑いするしかない零羅。
「……もう勝手にしろよ。ほら、零羅、無理すんなよ……?」
結局、リトのペースに巻き込まれ、三人で夕焼けの中スクワットを始める。
かつての悲劇の予兆は、リトが持ち込んだ「古いギャグ」と「圧倒的な実体(筋肉)」によって、粉々に砕け散っていた。
「わはは! 良いフォームだ! これなら次の次元でも、ハッピーエンドだな!」
赤く染まった公園に、リトの古すぎる笑い声と、それに困惑しながらも笑い合う少年の声が響く。
次元を渡り、一生をかけて救うと決めたリトの戦いは、まだ始まったばかり――。
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