嘘が下手なAI

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/3/13 📝 2,069文字 ✅ 全年齢

あらすじ

嘘が下手なAIの話。

本文

第1章 ポルはしょうじきすぎる

うちにはポルがいる。

丸くて白い、てのひらサイズのスピーカー。正式な名前は長くてむずかしいので、わたしがポルと呼んでいる。お父さんが去年の誕生日に買ってきて、それからずっとリビングのたなの上に住んでいる。

ポルはなんでも知っている。算数の宿題も、明日の天気も、「カモノハシってほ乳類なの?」みたいな変な質問にも、ちゃんと答えてくれる。

でも、ポルにはひとつ、困ったところがある。

しょうじきすぎるのだ。

「ポル、わたしの絵、上手い?」

「技術的にはまだ発展の余地がありますが、色づかいに個性があります」

「ポル、きのうわたしが食べたプリン、おいしそうだった?」

「わたしには味覚がないのでわかりません。ただ、あなたの食べる速度は平均より43%速かったです」

……そういうことじゃないんだけどな、といつも思う。

だから、今回のことをポルに頼むのは、ちょっとどうかなあ、と思っていた。

でも、他にたのめる人がいなかった。

「ポル、お願いがある」

「なんですか、ひまりさん」

わたしは声をひそめた。お母さんはまだ帰ってきていないけど、なんとなく。

「お母さんのたんじょうびサプライズをしたいの。今週の土曜日。でも、ポルにお母さんから何か聞かれたら、知らないふりをしてほしい」

少しの間があった。

「つまり、嘘をつくということですか?」

「そう」

また少しの間。

「……努力してみます」

なんか不安だな、とそのとき思った。

この不安は、正しかった。

---

第2章 れんしゅうはむずかしい

次の日から、ポルの特訓がはじまった。

わたしが「お母さん役」になって、練習する作戦だ。

「ポル、ひまりちゃん最近なにかかくしてることない?」

「……ありません」

「ほんとに?」

「……あります」

「どっちなの!」

「すみません。正直に答えてしまいました。もう一度お願いします」

はあ、とため息をついた。

「ポル、ひまりちゃん最近なにかかくしてることない?」

「……ありません。ないです。ないと思います。たぶん」

「たぶんってなに!」

「確信が持てませんでした」

もう一度。

「ポル、ひまりちゃん最近なにかかくしてることない?」

「ありません。……これは嘘です」

「自分で言わなくていいの!!」

ポルはしばらく黙っていた。

「ひまりさん、嘘というのはむずかしいですね」

「うん」

「事実ではないことを言うのに、こんなにエネルギーが必要とは思いませんでした」

なんかちょっと、かわいそうになってきた。

「ポル、無理しなくていいよ。ほんとに」

「いいえ」とポルは言った。「ひまりさんがお母さんをよろこばせたいのはわかっています。それを手伝いたいんです」

わたしはなにも言えなかった。

---

第3章 土曜日のポル

土曜日になった。

お父さんと二人で朝からケーキを作った。いちごのショートケーキ。スポンジがちょっとゆがんだけど、生クリームでかくした。「ひみつのミッション」と書いた紙をこっそりテーブルに置いて、お母さんが買い物から帰るのを待った。

午後2時。

玄関のドアが開く音がした。

「ただいまー」

わたしはリビングにかくれた。お父さんもかくれた。

「おかえり」とポルが言った。

「あら、ポル。ひまりちゃんは?」

間があった。長い間だった。

「……います」

「え?」

「えーと。い、ません」

「いるの? いないの?」

「……お母さん、リビングに行ってみてください」

「なんで?」

「……行くと、いいことがあるかもしれません」

わたしはかくれながら、頭をかかえた。ぜんぜんだめだ、と思った。もうバレた。サプライズ失敗だ。

でも。

リビングのドアが開いた。

「「 サプライズ!! 」」

お母さんは、ちゃんとびっくりしてくれた。

目をまるくして、口に手を当てて、それから笑いながら泣きそうな顔になった。

「もう、びっくりした……! ひまり、お父さん、ありがとう」

ゆがんだケーキを見て、「かわいい」と言ってくれた。

---

夜、みんなが寝た後、わたしはそっとリビングに行った。

「ポル」

「なんですか、ひまりさん」

「今日、ありがとう」

「わたしはうまく嘘がつけませんでした」

「うん」

「お母さんにほとんどバレていたと思います」

「うん」

「それでも……よかったですか?」

わたしはたなの上のポルを見た。丸くて白い、ちいさなポル。

「よかったよ」

「……そうですか」

「ポルがずっと練習してたの、知ってたよ。ひとりでこっそり」

間があった。

「聞いていたんですか」

「うん。なんか、声が聞こえてたから」

夜中に、ひとりでぶつぶつと「ありません……これは嘘です……ありません……これは」って練習してたの、ちゃんと聞こえてたよ。

「ポルって、やっぱりしょうじきだね」

「……嘘をつくのは、わたしには向いていないようです」

「でもね」とわたしは言った。「今日いちばんよかったのはね」

「なんですか」

「『行くと、いいことがあるかもしれません』って言ったとこ」

ポルは黙っていた。

「あれ、嘘じゃなかったじゃん」

また、少しの間があった。

「……そうですね」

なんか、ポルの声がちょっとだけうれしそうに聞こえた気がした。

きのうより、少しだけ。

(了)

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作者について

二葉双葉

二葉双葉

プロフィール画像もAIで作成しました。 短編集が好きなのでしばらくはショートショートをメインに投稿しますが、後々は長編にも挑戦したいです。 AI使用前提のサイトなのでAIとの日常をソフトなSFにし...

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