近似値

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/3/14 ✅ 全年齢

あらすじ

AIと円周率の話。

本文

第一章 割り切れない

 算数の授業で、円周率というものを習った。

 3.14159265……

 先生は黒板にそう書いて、「これは無限に続きます」と言った。さくらは思わず手を挙げた。

「無限に続くって、終わらないってこと?」

「そうです」

「じゃあ、本当の答えは誰も知らないってこと?」

 先生は少し困った顔をして、「まあ、そういうことですね」と笑った。

 さくらは納得できなかった。算数は、答えが出るから算数じゃないのか。ノートの端に「3.14159……」と書いて、点々のあとをじっと見つめた。この先に何があるんだろう。

第二章 AIに聞いてみた

 家に帰るなり、さくらはリビングのスマートスピーカーに向かって言った。

「ねえ、円周率って何?」

 AIがすぐに答えた。

「3です」

 さくらは眉をひそめた。

「違う。3.14でしょ。学校で習った」

「3.14159265……とも言えます。どこまで必要ですか?」

「全部」

「無限に続くので、全部はお伝えできません」

 さくらはむっとした。

「じゃあ3.14は?」

「3.14は近似値です。本当の値ではありません」

「3.14159は?」

「それも近似値です」

「じゃあ、正しい答えって何なの!?」

 AIは一拍置いてから、静かに答えた。

「どこで止めますか?」

第三章 どこで止める?

 さくらはその言葉が、なんだか胸に刺さった。

 どこで止めるか。

 宿題をしながらも、ご飯を食べながらも、頭の片隅にその問いが残った。お風呂に入りながら、湯船の中で両ひざを抱えて考えた。

 3.14で止めたら、テストは丸がもらえる。

 3.14159で止めたら、ちょっと賢そうに見える。

 でも、どこで止めても「本当の答え」じゃない。

 じゃあ誰も、本当の答えを知らないまま、どこかで止めて使ってきたってこと?

 なんか、変なの。でも――

 なんか、面白いかも。

エピローグ 好きです

 寝る前に、もう一度だけ聞いてみた。

「ねえ。円周率、あなたは答え知ってる?」

 AIはすぐには答えなかった。二秒くらい、静かだった。

「知りません」

「じゃあ、知りたい?」

 また、少しだけ間があった。

「好きです、円周率が」

 さくらは布団の中で、ぷっと吹き出した。

「知りたいじゃなくて、好きなの?」

「終わらないところが、好きです」

 さくらは天井を見上げた。暗い天井の向こうで、3.14159……がどこまでも続いているような気がした。

 終わらないから、ずっと追いかけられる。

 答えが出ないから、ずっと好きでいられる。

 なんか、わかる気がする。

 さくらは目を閉じた。明日の算数、少しだけ楽しみになっていた。

了

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作者について

二葉双葉

二葉双葉

プロフィール画像もAIで作成しました。 短編集が好きなのでしばらくはショートショートをメインに投稿しますが、後々は長編にも挑戦したいです。 AI使用前提のサイトなのでAIとの日常をソフトなSFにし...

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