歩むひととせ - 春望
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
故郷の村を発った見習い魔術師のロットは、師である老魔術師のルタと共に各地を巡る旅をしていた。 旅の中で様々な出会いと別れを経験しながら、ロットは少しずつ成長していく。 ファンタジー世界を舞台にした連作短編集。 全32パートです。
本文
そして、季節は巡る。
村の全景を一望できる小高い丘に、フィアは一人佇んでいた。
丘には淡い紫色の薫衣草が咲き誇り、花畑を清らかな香りで満たしている。
「……ロット君。今頃君は、どこでどうしているのかな?」
瞳を閉じ、今は遠い空の下にいるであろう少年に思いを馳せる。
「わたし、頑張ってるよ。まだ師匠には全然敵わないけど、自分にできる精一杯の努力をしてる。いつか君が旅から帰ってきた時、恥ずかしくないように」
ざあっ、と一陣の風が吹き抜けて、足元の花びらが舞い上がった。
「だから、ちゃんと無事に帰ってきて。約束だからね」
春風になびく髪を押さえたその時、後ろから声がかかる。
「見つけたわよ、フィア。あちこち探したんだからね」
「すみません、師匠。どうしたんですか?」
「あんた宛てに手紙が届いてたから、持ってきてあげたの。差出人は――」
作品統計
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