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第26話 未来に向かって(終)

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/4/26 📚 シリーズ: 王女の一言から始まる、異世界野球リーグ設立奮闘記 📝 2,349文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

王女の一言から始まる、異世界野球リーグ設立奮闘記 - 第26話 未来に向かって(終)

本文

タイトル発表。

本当の意味でリーグが「数字」と向き合う時間が始まった。

「これより、個人タイトルの発表を行います」

風魔法で増幅された司会の声がスタジアムに響く。

ざわめきはある。

でも、どこか落ち着いている。

勝敗を巡って争う時間は終わった。

今は積み重ねた一年を受け取る時間だ。

⸻

最初に発表されたのは守備の賞。

「ゴールデン・グラブ賞」

この言葉が初めて公式の場で宣言される。

「な、なんだったかの?」

「守備で最もチームに貢献した選手に贈られる賞です。各ポジションから一人ずつ選ばれます」

「ほほぅ!」

まず、二遊間。

名前が呼ばれたのは、エルフの内野手だった。

滑るような動き。

送球の正確さ。

一年を通して失点を防ぎ続けた存在。

拍手は最初は控えめだった。

でも、数字とその瞬間を切り取った写真が示されるにつれて、確かなものになる。

続いて、レフト。

「……バードマン?」

一瞬のざわめき。

けれど、誰もが思い出す。

高い打球。

他の誰も追いつけない位置で、翼を広げた姿。

否定する人は居なかった。

⸻

次はベストナイン。

ここから空気が一段重くなる。

投手部門。

「ルメルーナ・ブリッジズ、バルト選手」

歓声。

それは派手すぎない。

奪三振王ではない。

剛球派でもない。

それでも、最多勝。

最優秀防御率。

試合を壊さず、勝ちを積み上げた投球が評価された。

バルト選手は静かに一礼する。

⸻

ショート。

再びエルフの選手の名が呼ばれる。

「……二冠じゃな」

エステル様が感心したように呟く。

守備で評価され、打撃面を含めた総合でも評価された。

数字と内容、その両方で力を示した。

⸻

レフト。

「コナ・ラピッドファング、マクセルダ選手」

一瞬空気が止まる。

でも、すぐに拍手が起きた。

打率も本塁打も、トップではない。

それでも両方を高い水準で維持し、勝敗に直結する一打を放ち続けた。

疑似的に味方だったオールスター。

あの時間が、観る側の心を少し変えていた。

マクセルダ選手は照れたように頭を掻き、深く頭を下げる。

⸻

打撃タイトルも発表される。

首位打者は、人間の打者。

安定感と対応力で、一年を通して数字を残した。

ホームラン王は、オークのスラッガー。

荒々しく、それでいて観客を沸かせる一発の連続。

誰も異を唱えなかった。

⸻

特別席でエステル様が胸を張る。

「うむ! 皆、見事じゃ!」

「そうですね」

ナオが、腕を組んで言う。

「結局さ、成績って正直だよね」

「まぁね」

グラウンドを見下ろす。

そこに立っているのは種族単位で語られる存在ではなく

……一年を戦った選手達。

まだ完全じゃない。

不満も、偏りも、残っている。

それでも。

この国で初めて、「種族」ではなく「結果」で語られる場所が生まれた。

次は、契約。

次は、助っ人の選別補強。

次は、また争い。

けれど、今日だけは。

誰もが同じ拍手を送っていた。

シーズンは終わった。

球場の芝は養生に入り、選手達はそれぞれの故郷へ戻る。

それでも、リーグ本部の灯りは夜遅くまで消えない。

私も、球団も、もう来季を見ている。

⸻

机の上には紙の束。

外国から届いた戦績表。

映像は無い。

あるのは、数字だけだ。

登板数、防御率、打率、本塁打。

相手リーグの水準も分からない。

それでも首脳陣は真剣に睨み合う。

「この投手、成績は安定してますが……年俸要求が高いですね」

「こちらは安いが、リーグレベルが低い可能性がある。

発足したばかりの我がリーグと比べたら特段低い訳では無いだろうが……」

売り込みに来る者もいる。

自分の武器を言葉とプレーで必死に説明する。

他には年俸の齟齬。

評価基準の違い。

それらは、来季も確実に問題になる。

⸻

別の机ではまた別の議題。

「今回のリーグを見て、国外から魔族やハーフが流入するのではないか、という声があります」

「不安視する層も、まだ多いです」

「制限と受け入れ、両方を明文化しましょう。感情論ではなく、制度で対応します」

完全な安心なんて存在しない。

けれど、曖昧さは火種になる。

⸻

そして。

一番大変なのは、この人だ。

「イオリ! 聞いたか!」

振り向いた瞬間、嫌な予感がした。

エステル様が翼をぱたぱたさせながら近づいてくる。

目がキラキラと輝いている。可愛い。

「ナオが教えてくれたのじゃ! ニホンでは、6つに分けて12球団あるとな!」

「それは……はい」

「つまりじゃ! 我が国ももっと増やせる!」

「エステル様。段階というものがありまして……」

「他の都市にも作るのじゃ! 要望も来ておるぞ!」

「はい、それは把握しています」

「レオマーリにも作るのじゃ! 完全なる蟠りの解消に進むのじゃ!」

「それは外交案件になります」

「大丈夫じゃ! 野球は平和の象徴じゃからな!」

ふんすふんす、と鼻息が荒い。

完全に成功体験に味を占めている。

可愛いけど……頭を抱えたくなるのを必死で堪えた。

⸻

それでも。

思い返せば、全てはここから始まった。

エステル様の思い付き。

種族代表との長い説得。

荒れに荒れた会議。

夜通し続いたスタジアム建設の調整。

鉄道。

球団。

ルール。

年俸。

抗議と圧力。

慌ただしくて、面倒で、正直逃げ出したくなる事もあった。

でも。

充実していた。

⸻

夜。

私は椅子に座り新聞を広げている。

その肩に、重み。

「何を見ておるのじゃ?」

エステル様がのしかかってきた。

銀色の髪が視界を塞ぐ。

「ファン感謝祭のインタビューです」

紙面の中央。

困惑しながらも、僅かに微笑む魔族の男性。

大勢の子供達に囲まれ、裾を引っ張られ、腕を掴まれている。

バルト選手。

エステル様はその写真をじっと見つめてから、満足そうに頷いた。

「……良い写真じゃな」

「はい。本当に……」

リーグはまだ未完成だ。

問題は山ほど残っている。

それでも。

確かに、何かは始まった。

新聞を畳み、エステル様を前に抱え直して静かに息を吐く。

来季もきっと大変だ。

でも、それでいい。

この国の野球は、もう止まらないのだから。

完

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作者について

生獣(ナマ・ケモノ)

生獣(ナマ・ケモノ)

ほのぼのな百合も過激な百合も好き。

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