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其の八十窮「振り返った先」

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/4/21 📚 シリーズ: 創作怪談:これから広まるかもしれない怖い作り話「復路」 📝 1,425文字 ✅ 全年齢

あらすじ

これから語るのは、もしかするとこれから広まるかもしれない いや、広まってしまうかもしれない「怖い作り話」です。 全部で壱百八話。どれも短い物語です。 しかしその中には、時に背筋に冷たいものが走り抜け、 時にひそひそと誰かの囁きが聞こえ、 時に見てはいけないものが見えてしまうこともあるかもしれません。 そしてひとつだけ、どうしても言っておきたいことがあります。 これらの話は、すべて作り話です。しかし、ただの作り話ではありません。 この話、本当なんです。

本文

これは、私の友人から聞いた話。

この話を聞いた彼が、ある作品を執筆するきっかけになったというお話です。

◇◆◇

それは、ある駅での出来事。

駅構内の安全確認をしていた駅員さん(Hさん)は、

間もなく入ってくる電車を待つ人々の中で、いつも通り安全確認をしていました。

時間は8時。駅構内はこの時間帯らしい混雑ぶり。

5分後には8両編成の電車が駅に入ってきます。

Hさんは駅中央付近、改札口前となる5両目の乗降口付近に立ち、

乗客が黄色い線を越えていないか確認しながら、

上り側から姿を現した電車を目で追いました。

電車が駅に入り、Hさんの立つ中央付近を通過する――その直前です。

Hさんの目の前で、一人の男性が線路へ転落。

次の瞬間、電車は鈍い音を立てながらそこを通過していきました。

一瞬、何が起こったのか分からず、近くの人々は言葉を失いました。

しかし、誰かの叫び声をきっかけに駅構内は騒然となります。

「下がってください!」

Hさんは即座に乗客を後方へ下がらせ、

駅事務所に転落事故発生の連絡をしました。

初めての経験だったにもかかわらず、驚くほど冷静に対応できていたことを、

後になって不思議に思ったそうです。

事故処理が終わるまでの2時間、電車の運行は停止。

Hさんは現場に最も近かった駅員として、警察から事情聴取を受けました。

転落した男性は「後ろを向き、何かに驚いたような顔をして落ちていった」。

Hさんは見たままを話しましたが、警察官は首をかしげました。

「誰かに押されたような様子は?」

「ありませんでした」

それでも警察官は納得していない様子でした。

事情聴取はすぐに終わり、Hさんは業務に戻りましたが、

警察官が首をかしげていた理由が妙に気になっていました。

その日の仕事が終わった後、Hさんはインターネットで調べました。

すると、こんな情報が出てきました。

「自ら駅に飛び込む人は後ろを振り返らない。

駅の中であれば、電車のスピードが落ちていない“駅の端”に立つことが多い。」

駅の中央部、後ろを振り返る――

警察官が首をかしげていた理由が分かりました。

今回の転落事故は、よくある状況と真逆だったのです。

では、なぜ男性はそこから落ちたのか。

「後ろを見て、驚いた顔で転落……まさかな」

Hさんの頭に浮かんだのは、

男性が“自分の背後に何かを見たのではないか”という考えでしたが、

すぐに打ち消しました。

しかし次の勤務日、同僚との会話でこんな話を聞きました。

「この駅、2年前にも同じような事故があったんだよ。落ちたのは50代の女性で、後ろを見ながら驚いた顔で『なんでよ! お母さん!!』って叫んで落ちていった。でも、女性の後ろにいたのは『若い男性』だったんだ」

◇◆◇

「転落した男性の後ろに、この世のものではない“何か”が立っていて、それを見た男性が驚いて足を踏み出した先が線路だった――」

友人はそう締めくくりました。

私は普段あまり電車を利用しないので実感は薄かったのですが、

確かに言われてみれば、どこか納得できる気がしました。

ただ、どうしても納得できないことがひとつ。

「転落した男性は、何を見たのか」

それを友人に尋ねると、彼はこう言いました。

「幽霊たちは、人混みの中に立っているんですよ。その中で、自分のことが見える人をいつも探しているんです。例えば、混雑する駅構内とか……」

であるなら、転落した男性は――

この話、本当らしく、それ以来私は滅多に乗らない電車に乗るとき、

必ず列の“後方”に並ぶようにしています。

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作者について

井越歩夢:IGOSHI/WALKER

井越歩夢:IGOSHI/WALKER

2024年よりkindle電子書籍の個人出版業、Web小説家、AIコラボレーター活動を開始。 kindle無料ランキング2ジャンルで1位獲得経験あり。 小説家になろう・カクヨム・あいぺん・アメブロ...

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