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門を出るころ

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/5/5 📚 シリーズ: グルゥとリル、もりのはずれで 📝 1,868文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

言葉より、そばにいること。 もりのはずれに、小さな家があります。朝はやわらかな光が窓辺にたまり、夕方になると、木々のあいだから静かな風が通りすぎていきます。そこには、大きなオークのグルゥと、幼いエルフのリルが暮らしています。 グルゥはあまり言葉を使いません。けれど、重たい水桶を先に運んだり、火が弱くなればそっと薪を足したり、冷えそうな夜には何も言わず布をかけたりして、そのやさしさを静かに形にします。リルはいつも少し眠たげで、光や風や草の音に、小さく気づく子です。庭に落ちた木の枝を拾って眺めたり、あたたかいパンの匂いに目を細めたり、石の丸さをたしかめるように手のひらで転がしたりしながら、一日をゆっくり受けとめています。 ふたりのあいだには、たくさんの言葉はいりません。朝の湯気、洗った布の揺れ方、机に置かれた袋の重み、そうしたささやかなもので、今日の気分も、してほしいことも、なんとなく伝わっていきます。リルが窓の外を見ていれば、グルゥは戸を開けます。グルゥが手を止めれば、リルはそばに座って同じ方向を見ます。そのやりとりはとても静かで、けれど、たしかにあたたかいのです。 この物語にあるのは、大きな冒険ではありません。水をくむこと、火を見つめること、森を歩くこと、パンを分けること。そんな日々の小さなひとこまが、やわらかな光のようにつながっていきます。何かが大きく変わるわけではなくても、同じように見える毎日のなかで、ふたりが見つける色やぬくもりは、少しずつ違っています。 忙しさの外がわに置かれたような、しずかな暮らし。言葉よりも、まなざしや手の動きがよく語る関係。読んだあとに、あたたかい火のそばにしばらく座っていたような気持ちが、そっと残る物語です。 本作はアイデア・構成・加筆・修正を人間が担い、文章の執筆にAIツールを活用しています。 本作は他サイトでの重複投稿を同一名義で行っております。 ep01 朗読 https://youtu.be/uehT3dodgug

本文

市場のすみには、夕方のいろが静かにおりてきていました。

古い木箱の上の布も、昼の白さをしまって、やわらかな影をまとっています。

そのまんなかに、もりのわっかがひとつだけ残っていました。葉は橋のように通され、継ぎ目の羽は、ひかりを細くつかまえていました。

リルは、そのひとつを見ていました。

輪と、布のしわと、木箱の角。

目はそのあたりを行ったり来たりして、手はしばらく膝の上にありました。

通りを行く人は、まだいます。

けれど昼のようには立ちどまりません。

荷をまとめる人の音、戸を引く音、遠くでパン籠を重ねる音が、ひとつずつ広場に残っていました。

市場は、だんだんと、昼の顔をぬいでいくみたいでした。

グルゥはいつものように、木箱のわきに立っていました。

大きな袋の口をひらき、荷がしまいやすいようにしてあります。

声は出さず、急がせもしません。

ただ、木箱の上へ落ちるひかりを見て、風で布がめくれそうになれば、その端をおさえるだけでした。

リルはようやく立ちあがって、最後のわっかを両手で持ちました。

羽の先を指でなぞり、葉の重なりを見て、それから布をたたみます。

ふたつのルクスは小さく鳴って、布の上から掌へ移りました。

その音は、すぐ静かになります。

木箱の上が空になると、そこだけ風の通り道が見えるようでした。

リルは輪を胸の前に抱えます。

グルゥは布と袋を持ち、ふたりは市場のすみを離れました。

町の道は、昼より長い影をのせていました。

石畳のすきまにたまった夕方の色は、うすいお茶みたいでしたし、軒先につるされた布は、もうあまり揺れていません。

店じまいの気配が、どの戸口にも小さく集まっていました。

ふたりは、来たときと同じ道を、ゆっくり門のほうへ歩きます。

リルは前を見て、ときどき腕の中の輪を見ました。

手を広げたくらいの輪は、昼のあいだ何度も見られて、いまはひとつだけになっています。

やさしくゆがんだ形が、腕のなかでおとなしくおさまっていました。

門のそばには、いつもの衛兵が立っていました。

高い槍を持ち、町の出入りを見ている人です。

毎日そこにいて、ふたりが通るときも、ただそこにいることのほうが多いのでした。

今日も、はじめはそうでした。

門の影が石にのびるなかで、衛兵は無表情のまま立っています。

リルとグルゥがその前を通ろうとしたとき、ふいに、その目がリルの腕の中へ向きました。

「それ、いくらだ」

声は低く、いつもとおなじ顔のままでした。

風向きでもたずねるような、短いひとことです。

リルは足をとめました。

輪を見て、それから衛兵を見あげます。

「……いちるくす」

衛兵はうなずきもせず、腰の袋からルクスをひとつ出しました。

金属の丸い光が、夕方の色をうすく返します。

それを差しだされたリルは、腕の中の輪を持ちなおしました。

羽がつぶれていないか、継ぎ目がきちんとしているか、指先でひとつたしかめます。

それから、両手で衛兵へ渡しました。

衛兵は輪を受け取ると、しばらく見ました。

顔は動かず、口元も変わりません。

ただ、門の石と槍と、その輪がひとつの景色になっていました。

そして、ルクスをリルの手に置くと、また元のように立ちました。

もう何も言いません。

輪は衛兵の腕に下がり、羽の先だけが夕方の風にふれています。

リルは手の中のルクスを見ました。

そこには、さっきまでふたつだった丸い光に、もうひとつが加わっています。

みっつ。

指のあいだで、ちいさく重なりました。

グルゥがその手もとを見て、それからリルを見ました。

声はなく、ただ歩きだせるように、門の外の道へ体を向けます。

リルもそのとなりに並びました。

町の外へ出ると、空気はすこしひんやりしていました。

石畳は土の道になり、草のにおいが足もとからのぼってきます。

遠くで鳥がひとつ鳴いて、森へ帰る風が道の上をなでていきました。

リルは歩きながら、手の中のルクスをときどき握りなおしていました。

布に包まれた輪はもうありません。

胸の前はかるくなっていて、そのぶん、手の中に丸い重みが三つあります。

道の先には小屋へつづく草の色が見えていて、夕方のひかりが、そのうえに薄くのっていました。

グルゥはいつもの歩幅で歩いています。

急がず、遅すぎず、リルがとなりにいられる速さでした。

大きな足が土をふみ、袋が背でかすかに揺れます。

町にいるあいだも、門の前でも、そしていまも、ずっと同じようにそばにいます。

リルは前を見たまま、手の中のルクスを親指でひとつずつたしかめました。

それから、握る手をそっと閉じます。

道は小屋へつづいていて、夕方はまだ、やわらかくのびていました。

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作者について

うつチャリンカー

うつチャリンカー

一年前うつで過労んでいた自分用に書いたものが出て来たので一日一本七時に投稿中。誰かのうつに届いたらいいな。

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