ツンデレことりは諦めないっ!
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あらすじ
高校のテニス部員・真部ことりと野球部員・竹田真一。顔を合わせれば罵詈雑言の嵐、一見どこにでもある「犬猿の仲」の二人でしたが………。
本文
真部ことり「ちょっと何よ!アンタ!!私達テニス部の邪魔なんですけど!?」
竹田真一「ここは俺たち野球部のグラウンドだろ!?テニス部はテニスコートに行けよ!?」
真部ことり「うるさいわね、私はアンタみたいなバカが大嫌いなのよ!!!!!!」
竹田真一「は…!?バカってお前失礼じゃないか?いいからどけよ。なんでテニスコートでやらないんだよ?」
真部ことり「だって、アンタ達のボールが当たっちゃうじゃない。それにアンタ達臭いし。こっち来ないでくれる?汚いのよ。この野球野郎!!!!!!」
竹田真一「……じゃあ尚更こんな所でやるなよ。別の場所へ行け。話にならねーから俺らは練習続けるぞ。」
真部ことり「あっそ、勝手にすれば。でも、もう二度とここには来ないでよね。アンタ達は目障りだから。じゃあね。バーカ!!!(笑)。(泣)。(怒)。(激おこぷんぷん丸)。(号泣)」
そして二人は顔を合わすたびに喧嘩を続けていた。
そんなある日…。
竹田真一「よーし放課後は久々に焼肉でも行こうかな!ゲーセンもいいな。」
真部ことり「あら?また女の子をナンパしてるのかしら?まぁどうせダメでしょうけど。」
竹田真一「…は?なんでお前がここにいるんだよ?」
真部ことり「別に私がどこに居ようが関係ないでしょ!?それより今日も女子生徒とデートかしら?お盛んな事ねぇ。やっぱりモテるのは顔なのかしら?ご苦労さまです。」
竹田真一「俺はただ焼肉食いに行こうとしてただけだ。お前こそ友達もいないのか?そうやって暴言吐いて悲しくならないのか?」
真部ことり「べっつにぃ~。全然平気だし。むしろ嬉しいくらいだわ。みんな私から離れていくもの。誰も相手にしてくれないし。寂しいなんて思わないし。てゆーかアンタには関係無いじゃん!!さっきからいちいちウザイのよ!」
竹田真一「……お前、その性格治した方がいい。本当に不愉快だから。じゃあな。…さてと、焼肉食うか…。でもラーメンやカレーもいいな。」
真部ことり「…………。(イラァッ激怒ブチ切れ寸前)。」
竹田真一「……なんだ?言いたいことがあるなら最後に聞いてやってもいいぞ?」
真部ことり「ふん!そんな態度取って後悔しても知らないからね!!あとで泣いて謝っても許さないんだから!!!覚えときなさいよ!!!!」
竹田真一「そうか。じゃあな。(その場を去る)」
真部ことり「……ったく何よアイツ。ホントむかつくわ。だいたいアイツは私の気持ちを知らないからあんな事が言えるのよ!私だって本当は……!あぁムシャクシャするぅ~!!!」
そして二人は相変わらず険悪だったが、ある日二人でフォークダンスを踊る事になった。
竹田真一「はあ…なんでお前なんかと…、ほら手を繋いで踊るぞ?」
真部ことり「えぇ……マジで!?仕方ないわね。今回だけ特別に付き合ってあげるわ。感謝しなさいよね。この私と踊れる事を。ありがたく思いなさい。じゃあ行くわよ。1,2,3、はい!」
竹田真一「……。(無視して淡々と踊る)」
真部ことり「ちょっと待ってよ!!ノリ悪いじゃない!!もっと楽しそうな顔したらどうなのよ!?バカじゃないの?(笑)。アンタって本当つまらない男ね。だから彼女が出来ないんじゃないの?(笑)。」
竹田真一「お前みたいなのと一緒に踊って楽しい訳ないだろ。」
真部ことり「……っ!!(激怒する。)。……あっそ、分かったわ。もういいわよ!!一人で踊りなさいよ!!バカッ!!!」
竹田真一「お前って彼氏いるのか?」
真部ことり「えっ……!?(顔を真っ赤にする)な、なによ急に……!?そ、そりゃあ一応いるけど……(小声)。それがどうかしたの?(超小声で照れながら焦り出す。)
竹田真一「本当にいるのか?どんな男なんだ?うちの学校?名前は?」
真部ことり「ちょ、調子に乗るなバカ!!そんなのアンタに言うわけないでしょ!!バカじゃないの!?もう知らない!!バーカ!!!(号泣しながら去っていく。」
竹田真一「もう二度とつまらない嘘つくなよ。」
真部ことり「……っ!!!(大泣きする)うぅ~!!酷いよぉ……。私の気持ちも知らないで……!!」
竹田真一は真部ことりの言動にほとほと呆れていた。
もう会いたいとも思っていないが、そんなある日…。
竹田真一「は?テニス部と野球部で合同合宿?やる意味あるのか?」
真部ことり「まぁいいじゃない。せっかくだし一緒にやりましょうよ。親睦を深める為に。どうせ暇なんでしょ?だったら参加しなさいよ。私は参加しないけどね。だってみんな臭そうだし。(笑)。じゃあそういう事でよろしくね。バイバーイ。(去る)」
竹田真一「そうか。解った。俺は参加するよ。お前以外のテニス部は皆いい奴だしな。」
真部ことり「えっ……?(驚く)。ど、どういう事よそれ!?何勝手に決めてんのよ!!私が嫌だって言ってるんだから素直に従えば良いじゃない!!(激怒する。)。あんたみたいな野球野郎は一生私の奴隷になってればいいのよ!!」
竹田真一「……奴隷?お前いい加減にしろよ?俺がお前に何したんだ?別に何もしてないだろ?なんでそんな事言われないといけないんだ?」
真部ことり「うるさい!!黙れ!!私に命令すんな!!お前の顔なんて見たくないんだよ!!消えて無くなれ!!(怒号する)。(号泣しながら去っていく。)……ぐすっ……」
竹田真一「なんなんだアイツは…。」
野山恭子「すいません。うちのことりが…。」
竹田真一「いや、恭子さんは悪くないですよ。アイツが一方的に怒ってくるんですよ。ホント迷惑な女です。まぁ気にせずまた遊びに来てください。いつでも歓迎しますよ。(爽やかな笑顔を見せる。)」
野山恭子「ふふ、有難う御座います。ぜひ、合宿楽しみましょうね!」
竹田真一「ええ。では失礼致します。(爽やかに去っていく。)……さてと、練習するか。(やる気満々になる。そして次の日……。)よし!今日から一週間、俺たち野球部とテニス部の合同で合宿を行う。場所はウチの学校で行う」
真部ことり「……何よ。こんな所で!体育館でただでさえ暑いのにクソ野球部のせいで臭いし!」
竹田真一「え?お前参加しないんじゃなかったのか?(うんざりした様子)」
真部ことり「うるさいわね!参加したくなくても強制的に連れてくるって言われたのよ!それにあのクズコーチめ……!私の身体をベタベタ触りやがって!気持ち悪いのよ!この変態ども!!死ねばいいのに!(激怒する。)」
竹田真一「そうなんですか?」
女子テニス部コーチ「いえ、そんな事はありませんよ!真部さんのテクニックは素晴らしいと思います。私も勉強させて頂きました。真部さんはやはり才能があるようですね。これからも頑張ってくださいね。(微笑む。)。(真部ことりを褒める。)」
真部ことり「は、はい……!!頑張ります!!(嬉しくなるがハッとして)。キモッ……!!」
竹田真一「お前褒めてくれたコーチにそれは無いだろう!!」
真部ことり「ふん!!(無視して立ち去る。)あーあ。ホント最悪ね。せっかくの夏休みなのに……。(不機嫌そうに愚痴を言う。)。……あぁ、やっぱり来なきゃ良かったわ。(後悔する。)」
竹田真一「コーチ…俺が話振ったせいで変な感じになってすいません。」
女子テニス部コーチ「いえ……大丈夫ですよ。真部さんには後でお説教しておきますので。(苦笑いする。)
竹田真一「は、はい…。あの、失礼ですがコーチのお名前は…?」
女子テニス部コーチ「僕はテニス部のコーチの田中といいます。宜しくお願いしますね。(優しく笑う。)。(その後、テニス部員達は楽しく合宿を行い、最終日を迎えた。)じゃあそろそろ帰る準備をして下さい。片付けが終わった人から帰ってもいいですよ」
竹田真一「へへ…田中コーチのおかげで楽しかったなあ…。(嬉しそうに片付けをする)」
真部ことり「……ねぇ、ちょっと待ってよ。アンタは荷物まとめ終わったのよね?じゃあさっさと帰りなさいよ。邪魔だから。(イラついた口調で言う。)あと、アンタはいつまでここに残るつもりなのよ?まさか、私の事が好きなの?」
竹田真一「…コーチの話聞いてたか?片付けしないと駄目だろ。…お前自意識過剰なんだよ。」
真部ことり「は?なにそれ?バカじゃないの?アンタみたいな野球野郎がモテる訳ないじゃない?(嘲笑う。)ほら、早くどっかいけよ。目障りなんだけど?(冷たくあしらう。)それと、私の事を二度と名前で呼ぶな」
竹田真一「俺はお前の事を名前で呼んだ事もない。名前を呼ぶのも不愉快だからだ。この際だからハッキリ言う。俺はお前が嫌いだし、これ以上俺に近づくな。」
真部ことり「なっ!?(ショックを受ける)なにそれ!?私がここまでしてあげてるのに!?もう知らない!!(激怒する。)……あっそ!わかったわよ!!じゃあもう二度と会わないように遠くに引っ越してやる!!ざまあみろ!!バーカ!!」
竹田真一「……はあ…。」
それから数日後、竹田はすっかり女子テニス部コーチの田中に懐いていた。
竹田真一「田中コーチ!あの、投球フォームのアドバイスが欲しいんです!田中コーチは甲子園にも行ってたんですよね?」
女子テニス部コーチ「ええ、まあ。でも僕のは参考にならないと思うよ。だって僕より凄い選手なんていっぱいいるからね。(爽やかに笑う。)それにしても君は本当に熱心ですね。ウチの真部さんも見習ってほしいくらいですよ。(呆れた表情になる。)全く……」
竹田真一「そんな事ありません!田中コーチの球技に関する造形は深くて尊敬してます!…それにしても田中コーチもアイツに苦労してるんですね。田中コーチに苦労させるなんて…許せない…。」
女子テニス部コーチ「……ええ、まあ。(苦笑する。)でも真部さんはあれで可愛い所もあるんだよ。それに、彼女は努力家なんだ。いつかきっと良い事があるさ。(爽やかに笑う。)。(するとそこへ、真部が通りかかる。)」
真部ことり「……あっ!コーチ!今帰りですか?……って、竹田!!(睨みつける。)何?コーチに色目使ってんの?(不機嫌そうにする。)……ちょっと、コーチから離れてくれる?(竹田を睨む。)キモッ……!」
竹田真一「色目…?お前何言ってるんだ?練習しろよ。」
真部ことり「うるさい!!黙れ!!(怒号する。)コーチ!!行きましょう!!こんな奴ほっといていいです!!(コーチの腕を引っ張って連れていく。)ほら、行くわよ!!何ぐずぐずしてんのよ!!(激怒する。)」
女子テニス部コーチ「痛っ…!真部さん!竹田君に失礼じゃないか!彼は頑張っているのに!(怒鳴る。)。(真部に引っ叩かれる。)いたっ!(倒れ込む。)……真部さん!」
竹田真一「…お前、いい加減にしろよ。真部の腕を掴む)」
真部ことり「触るな!!(振り払う。)キモいのよ!!お前なんか大嫌い!!(叫ぶ。)……あっ、ごめんなさいコーチ……。私また……。(泣きそうになる。)コーチ大丈夫ですか?すいません……。私のせいで……。(オロオロしている。)」
竹田真一「お前病院行った方がいいよ。テニスとかやってる場合じゃない…。」
真部ことり「うるさいわね!!アンタに言われなくても分かってるわよ!!(激怒しながら立ち去る。)……コーチ、大丈夫ですか?……すいません……。(悲しげな表情になり、立ち去る。)はぁ……。(ため息をつく。)ホント最悪……」
女子テニス部コーチ「……待って。真部さん。キミ、竹田くんの事が好きなんだろう?」
真部ことり「……えっ!?ち、違います……。私はただコーチが心配で……。(動揺する。)」
女子テニス部コーチ「竹田くんの事が好きなんだろう?」
真部ことり「……はい。(恥ずかしそうに認める。)……実はそうなんです。……でも、コーチに迷惑かける訳にはいかないし……。(俯く。)……それに、あいつは私の事嫌いですし……。(涙声になる。)」
女子テニス部コーチ「僕の事はいいよ。でもね、君のその態度は、そりゃあ竹田くんじゃなくても嫌われるよ。僕は君は本当は良い子なのは知ってるけどそれでも時々うんざりしてしまう。」
真部ことり「……はい。すみませんでした。(謝る。)……竹田に嫌われたくないのに、どうしてこうなっちゃったのかしら……?……でも、やっぱり、竹田を諦められないんです。……だから、コーチ。これからも私の事を見ててください。お願いします」
竹田真一「僕は昔カウンセラーもやってたから、君が竹田くんと仲良くしたいと思うならアドバイス出来るし応援出来るよ!」
真部ことり「本当ですか?ありがとうございます。(嬉しくなって微笑む。)じゃあ早速アドバイスください!(目を輝かせる。)まず、どうすれば竹田に好かれますか?あと、私がどんな事をしたら嫌いになりますか?(必死に質問する。)」
女子テニス部コーチ「まずは余計な事を言わない事だね。相手の事をバカにする様な言動を控えて、まずは挨拶するなら挨拶だけとか、質問したい事があるならそれだけとかね。悪口でコミュニーケーションを取ろうとしない事!これは嫌われて当然だよ。」
真部ことり「は、はい……。気をつけます……。(落ち込み、反省する。)……私、頑張ります!!」
それから翌日。
ことりはコーチに言われた事を実践する事にした…。
翌日の朝…。
竹田真一「ふー、たまには自主練だけじゃなく部室やグラウンドの掃除をするか…。(備品を整理しながら)」
真部ことり「……おはよ。竹田。(ぶっきらぼうに言う。)……今日は部室の掃除してあげるわ。感謝しなさいよね。(嫌々ながら掃除をする。)」
竹田真一「は…!?いや、何言ってるんだ?お前はテニス部だろ?野球部の備品を勝手に触るなよ!」
真部ことり「……うるさいわね。アンタには関係ないでしょ。(素っ気無く言う。)ねぇ、それよりさ、アンタ最近調子乗ってるみたいだけど、勘違いしてるんじゃないかしら?コーチや先輩達に気に入られてるからってさ。……はっきり言って邪魔なのよ!」
竹田真一「いや関係あるだろ!?突然何を言い出すんだよ!?もういいから帰れ!!邪魔なのはお前だ!!」
真部ことり「何よ!!この野球野郎!!(激怒する。)アンタなんか大嫌い!!(怒鳴る。)……ふんっ!何よ!!(怒って立ち去る。)あっそ!わかったわよ!!じゃあもう二度と会わないように遠くに引っ越してやる!!ざまあみろ!!」
その場を立ち去ることり。
結局関係は修復出来ずそれをこっそり見ていた女子テニス部コーチは…。
女子テニス部コーチ「…真部さん、僕の言った事覚えてる?竹田くんを馬鹿にするような言動や、攻撃的な事は言わないでって言ったはずだよ?」
真部ことり「はい……。でも、私どうしても我慢できなくて……。(落ち込む。)ごめんなさい。……コーチ。(悲しげに泣く。)……竹田に嫌われちゃったかなぁ……(泣き崩れる。)うぅ……。(涙を流す。)……グスッ……」
女子テニス部コーチ「「…あと、好感度を上げたかったのかも知らないけどいきなり無関係の野球部の掃除を手伝い出したらそりゃびっくりするよ…。せめて、「暇だから」とか適当な事を言えば良かったよね…。」
真部ことり「……はい。私、焦ってました……。(泣き続ける。)……竹田……。(涙目になる。)……ごめんなさい……。(泣きながら立ち去る。)……グスン……。……私、間違ってたのね……。」
竹田真一「いっそ、今までの事を謝罪して見るのはどうだろう?告白までとはいかなくても、素直に仲良くなりたかった事を打ち明けて今までの非礼を詫びようよ。」
真部ことり「……はい。わかりました。(決意する。)……やってみます!(嬉しそうに笑う。)ありがとうございます!コーチ!(嬉しそうに去る。)……フフ。これで竹田と仲良しになれるかしら……?」
それから、再びことりは竹田を探しに行った。
竹田は図書室で読書をしていた。
竹田真一「たまには本を読むのもいいな。最近慌ただしかったし…。」
真部ことり「……竹田。あのさ、ちょっと話があるんだけどいい?(真剣な表情になる。)大事な話なの……。(緊張した様子になる。)」
竹田真一「……あ!?お前なんでここに……な、なんだよ突然改まって……そんな大事な話なのか?(らしくなりことりの様子に怪訝そうになりつつ)廊下に出よう。…で、話ってなんだ?」
真部ことり「……えっとさ、その、実は私、竹田の事ずっと前から好きだったの……。(恥ずかしげに、そして申し訳無さそうな感じで言う。)」
竹田真一「は!?…な、なんだよ突然…。」
真部ことり「……だから、その、竹田が迷惑じゃなかったら、付き合って欲しいの!(照れながらもハッキリと言う。)……竹田、私の事嫌いかもしれないけど、それでも私は貴方が好き!だから、お願いします!(頭を下げる。)……竹田。(不安そうに顔を上げる」
竹田真一「……真部。お前俺に散々暴言吐いて、それで付き合えって都合が良すぎないか?俺はお前の言動で不愉快にもなったし傷ついた。そんなやつを好きにはなれないよ。」
真部ことり「……わかってる。それでも、やっぱり好きな気持ちは抑えられないの……。だから、お願いします!(もう一度深く頭を下げて懇願する。)……ダメですか……?(弱々しくなり泣きそうになる。)……グスッ……」
竹田真一「友達にはなってやる。まずは、その性格を直せ。お前がその性格を直して本当の意味で俺と仲良くできるんならもしかすると俺もお前を好きになれるかも知れない。だが確約じゃない。それは覚えとけ。」
真部ことり「……うん。わかったわ。……竹田、これからよろしくね。(微笑む。)……ふふっ。嬉しいわ。やっと竹田とちゃんとしたお友だちになれた気がして……。(嬉しそうに涙を流す。)……ありがとね。竹田」
竹田真一「…たくっ、調子がいいな。」
そうして竹田とことりはまずは友達から始めた。
竹田真一「コーチ、お久しぶりです。親戚が林檎を送って来てくれたんです!食べませんか?」
女子テニス部コーチ「おや?有難う御座います。美味しそうな林檎ですね!(にこりと微笑み)」
竹田真一「はい!とても甘くてみずみずしいですよ!」
女子テニス部コーチ「ふふ、楽しみですね。」
真部ことり「……ねぇ、竹田!今日は部活休みだし一緒に帰らない?(楽しげに言う。)……全く、アンタみたいな野球野郎と一緒に帰りたくないわ」
竹田真一「…じゃあ帰らねーよ。お前にも林檎分けてやろうと思ったのにな。」
真部ことり「……え?あ、いや、べ、別にアンタと一緒なんて嫌だけど、くれるって言うなら貰ってあげなくもないわよ?(慌てて取り繕いツンデレる。)……ほ、本当にくれるのよね?(チラリと見る。)」
竹田真一「お前のそう言う所本当に嫌いだわ。(うんざりとため息を吐きつつ袋に入った林檎を渡し)本当に言動には気をつけろ。…俺は帰るよ。じゃあな。」
真部ことり「あ、ちょ、ちょっと待ちなさいよ!!(呼び止めようとする。)……フン、素直に帰ればいいのよ。(そっぽを向く。)……まぁ、仕方ないし林檎だけ受け取ってあげるわ。……ありがと……。(ボソリと言う。)」
女子テニス部コーチ「うーん、一進一退だね…。真部さん、心にない事は言わない方がいいよ?素直に好意を竹田くんにぶつけるんだ。そして、感謝はもっと、ハッキリと笑顔で!有難うって伝えるんだよ!」
真部ことり「はい!わかりました!コーチ!(元気よく返事をする。)……素直に感謝を伝える、笑顔で接するように心掛けます!ありがとうございます!コーチ!(嬉しそうに笑う。)フフフ、これで竹田とも仲良くなれるかしら……?早く会いたい……」
そして翌日…。
竹田真一「たまには一人で屋上で弁当ってのも悪くないなー。(自分の手製の弁当を食べる)」
真部ことり「……あの、竹田……。(恐る恐る声をかける。)……あのさ、これ良かったら食べて……。(手作りのおにぎりを渡す。)……えっと、その、いつものお礼よ……。(照れくさそうに顔を赤らめる。)」
竹田真一「……えっ!?な、なんだよ…突然!…い、いいのか?食べても。(おにぎりを受け取る)…そ、その、具はなんだ?」
真部ことり「……鮭とか色々……。(恥ずかしそうにモジモジしながら)……あと、これはサービスだから。(お茶の入った水筒を差し出す。)……えっと、その、沢山あるから……。(照れながら俯く。)……どうぞ」
竹田真一「へ、へぇ…良いじゃん。有難うな。気が利くじゃん。……え、えーと、お前はメシ大丈夫か?…一緒に食うか?」
真部ことり「え?……ええ、それじゃ遠慮なく頂くわ。(隣に座り、一緒に昼食を取る。)……ねぇ、アンタ料理上手ね。凄いわ。(感嘆の声を上げる。)……私、料理苦手だから羨ましいわ」
竹田真一「…片親だからな。お袋が三年前に事故で死んでからは家事は大体俺の仕事。まあ、ある意味気楽だよ。好きなモン食えるし。(ことりのおにぎりを食べる)…お前のおにぎり美味いけどな。塩か味の素混ぜてんのか?鮭もフレークじゃなくて態々焼き鮭使ってるのか?」
真部ことり「……え?あ、ああ、その、お、お、お母さんがよく作ってくれたのよ。……アンタの言う通り、私の作ったおにぎりはただの味つきのご飯よ。」
竹田真一「へー、いいな。白米に味付けって結構手間だろ?…そ、その、有難うな。俺のために態々作ってくれたのか?」
真部ことり「……べ、別に、そんなんじゃないし……。(真っ赤になって否定する。)……と、とにかく、全部残さず食べなさいよね……。(プイッと横を向く。)」
竹田真一「わかってるよ。これくらいなら食えるからさ…。でも次からはメシ持って来る時は連絡…ああ、俺ら連絡先知らないのか。LINE交換する?」
真部ことり「……あ、そっか。そうだね。(スマホを取り出してお互いにLINEを交換し合う。)……ふふっ、これでいつでも連絡出来るね。(嬉しそうに微笑む。)……じゃあ、また明日学校でね。バイバーイ。(立ち上がって去っていく。)」
竹田は笑顔のことりをはにかみながら見送った。
それから…放課後。
竹田真一「ふー…そろそろボール片付けないとな。(野球ボールを拾い集めて片付ける)」
真部ことり「……ねぇ、竹田。(後ろから声をかけてくる)……えーと、今日暇?(少し緊張した面持ちで聞く。)……あ、あの、もし良ければ、今日、映画観に行きたいんだけど……(モジモジしながら誘う。)……ダメかな……」
竹田真一「……いや、今日は部活に集中したいから…見りゃ解るだろ?……休みの日なら考えてやってもいいけど。」
真部ことり「……あ、うん。……わかったわ。……じゃあ、今日は諦めるわ。……ごめんね。無理言って。(残念そうにしょんぼりとする。)……じゃあ、また今度誘っていいかしら……?(不安げに見つめる。)」
竹田真一「お、おう。て言うか今週の土曜日とかどうだ?空いてるぞ。(気まずそうに頭を掻きながら答える。)」
真部ことり「……うん!行く!(嬉しそうに返事をする。)……楽しみにしてるね!(満面の笑みで手を振って別れを告げる。)」
竹田真一「……ああ、じゃあな」
そしてデート当日。
竹田はシンプルなモノトーンの私服でやって来たが、ことりは可愛いフリルのついた白いワンピースを着ていた。
竹田真一「……馬子にも衣装ってか?…可愛いじゃん。」
真部ことり「……フフッ、何よそれ。(嬉しそうにクスリと笑う。)……そういう竹田もカッコ良いわ。似合ってる。(素直に褒める。)……えへへ、嬉しいなぁ……。(照れくさそうに笑う。)」
竹田真一「……ほ、ほら、映画何見たいんだ?行こうぜ。」
真部ことり「……えっと、あのね、あのね、この前CM見て面白そうだった『恋と嘘』っていう恋愛映画のチケット買ったの。(照れくさそうに笑う。)……だから、あの、その、えっと、つ、付き合ってほしいの……」
竹田真一「へぇ!それアニメなら知ってるぜ。映画になってんだな。見にいこうぜ!」
真部ことり「……えっ!?あ、う、うん!(やったー!心の中で喜ぶ。)……こ、これペアシートなんだ……。(チラリと見る。)……えへへ、なんだか恋人みたい……。(ボソリと言う。)」
そして二人は映画を見終わり、夕方になった…。
映画館を後にして。
竹田真一「面白かったなあ。あんまり恋愛映画見ないけど、悪くなかったな。」
真部ことり「……うーん、私はちょっと微妙かも……。なんか、こう、感情移入出来なかったというか……。(不満そうな顔で言う。)……まぁ、でも、これからはもっと色々恋愛の映画を観て勉強しようかな。(苦笑いを浮かべる。)……ねぇ、竹田」
竹田真一「そうか?確かにちょっと設定が突飛だったかもな。俺はあんまり感情移入って観点で見てなかったから……ん?何?」
真部ことり「……あ、その、えっと、えーと、その、わ、わわ、わたしと付き合わない?(勇気を出して告白する。)……えっと、その、いや、その、あの、その、お、お付き合いしたいです!!」
竹田真一「……いや、俺言っただろ?お前がマシな性格になったら、「考えてやっても」いいって。…何?お前は俺とそろそろ付き合えると思ってるのか?」
真部ことり「……う、うう、う、ううう~!!(泣き出す。)……ひぐっ、ううぅ、うえぇ……(ボロボロと涙を流す)……そんな言い方って無いよぉ……。……酷いよお……。(嗚咽を漏らす。)」
竹田真一「お、おい泣くなって、バカ!!(手を引き一目のつかない所へ連れて行き木陰のベンチに座らせる)少し落ち着けよ…。飲み物買って来てやる。何飲みたい?」
真部ことり「……グスッ……オレンジジュース……。(小さな声で答える)……ありがど……(鼻を鳴らす。)……(ヒック、ヒクッ)……(グスッグスッ)」
竹田真一「(その辺の自販機で買って来たオレンジジュースを渡す)ほらよ。……なあ、お前さ、俺のどこに惚れたんだ?お前性格は最悪だったけど顔も良いし勉強もテニスも出来るんだからそれなりに男寄って来るんじゃないか?」
真部ことり「……だって、皆私の外見ばっかり見るもん。私が好きになったのはアンタだけだもの……。アンタは違ったから……。それに、いつも私を助けてくれたし……。(涙目で答える)ねぇ、なんで私と付き合ってくれないの?」
竹田真一「……俺、そんなにお前を助けた事あったっけ?」
真部ことり「……覚えていないの?中学の時、私がいじめられてる時に助けてくれて、それからずっと好きだったのに……。(悲しそうに俯く。)」
竹田真一「……え?悪い。本当に覚えてない。そもそも、お前と俺って中学同じだっけ?」
実はことりは親が再婚して苗字が変わっていた。
その頃の名前は梅宮ことり。
しかも竹田とはクラスも違っていた。
さらには今は明るい茶髪で明るいメイクだが、当時は地味な黒髪おかっぱで眼鏡だったので印象がかなり薄かった。
真部ことり「……そうよね。仕方がないわ。……私ね、昔から人見知りで引っ込み思案でね、友達が全然居なくてね。それで、中学までは苛められていたの。……その時ね、貴方が庇ってくれたんだよ。……私ね、嬉しかったんだ」
竹田真一「………あー!!なんか思い出して来た!!お前もしかして梅宮って呼ばれてた奴か!?全然面影無いけど、理不尽にいじめられてた奴はいたわ!!…それがなんだってお前みたいな強気で派手な女になったんだ!?」
真部ことり「……私ね、あれから必死に努力したんだ。勉強頑張って、部活でもレギュラーになってね、漫画の強気な女の子を真似て明るく振る舞うようにしたつもりだったけど……今度は逆に友達がいなくなっちゃった。」
竹田真一「まあ…そりゃあ、あの態度は周りから人が居なくなるよ…。そうか、漫画のキャラを参考にしてたのか…。そりゃあなぁ…。」
真部ことり「……だからね、高校に入った時は、新しい自分になろうと思ったの。だから思い切って髪を染めて、メガネもコンタクトに変えたんだ。そうしたら、意外にも男子にモテちゃって……でも外見しか見てくれなかった。」
竹田真一「……そう言う話、先にしてくれりゃあ良かったのに。そりゃあ高校入学から突然威圧的な態度を取られたら不愉快にもなるぜ。」
真部ことり「……ごめんなさい。……でも……あの時、私を救ってくれたことに感謝してる事と、私を変えてくれたのは貴方だけなのよってこと…やっと伝えられただけでも嬉しい。」
竹田真一「うん、お前の言いたい事はわかった。でも俺はお試しで付き合うとかは嫌だ。ちゃんとお前を見極めて、お前も俺を見極めた上で付き合ってほしい。」
真部ことり「……うん!ありがとう……。……じゃあ、まずは友達からお願いします。……これからよろしくね。(ニコッと笑う。)……ところで、この後どうする…?」
竹田真一「ああ、少し早いけどメシ食って帰るか?ファミレスくらいから奢れるけど。」
真部ことり「……うーん、あのね、あのね、(モジモジする)私の家に来てくれないかな?お母さんがね、料理上手な男の子が来たら連れてきなさいって言ってるの。(照れくさそうに誘う。)……ダメかな?」
竹田真一「ええ?何だよそれ!変わった母さんだな!…俺を家に連れて来てどうするって言うんだよ?(楽しそうに笑う)…そんな嘘まで吐いて俺を家に招きたいのか?」
真部ことり「う、た、確かにさっきのは下手な嘘だけど……だって、私は貴方の事が好きだもん。(真剣な表情で言う)……私、頑張るから。(上目遣いで見つめる)……ね?良いでしょう?(不安そうな顔で返事を待つ。)」
竹田真一「……俺とセックスしたいのか?」
真部ことり「……そ、それは、まだ分からないよ。……でも、もし竹田が望むなら……。(恥ずかしそうに答える)……その、初めてだけど、優しくしてくれると嬉しいです……。(もじもじしながら答える)……ねぇ、来てよぉ……。(甘えた声を出す。)」
竹田真一「バカ!!冗談に決まってるだろ!!(顔を真っ赤にして)わかったよ!行けば良いんだろ!行けば。」
真部ことり「(パアッとした顔で)本当!?来てくれる!?やったあ~!!ありがとぉ~!!(抱きつく。)ねぇねぇ、早く行こうよ♪(手を引く。)こっちだよ。ここから近いんだ」
竹田真一「馬鹿!!抱きつくな!!」
そして竹田はことりの家へと招かれた。そこで彼はことりと母親に熱烈な歓迎を受けることになる……。
ことりの母「あらぁ~いらっしゃあい!!ようこそ我が家へ!!(ニコニコしている。)ささ、上がって上がってぇ!!(嬉しそうに案内する。)」
竹田真一「あ、はい。……失礼します。(靴を脱いで上がる。)……えっと、初めまして。竹田真一といいます。今日はよろしくお願いします。(ペコリとお辞儀をする。)」
真部ことり「……ママ、この人ね、中学の時にいじめられていた私を助けてくれた恩人でね、高校も同じ所に行ったんだよ。……それからずっと好きなの。……だからね、私の恋人になってくれるように説得に来たの。(真面目な声で説明する。)」
竹田真一「お、お前な…!!お母さんの目の前でなんて事言うんだよ!?親を持ち出すのはズルだろ!?」
真部ことり「……ふーんだっ。(舌を出してベーッとする。)……だって、本当のことだもーんっ。……あ、そうだ、私ね、中学の頃は梅宮ことりって名前だったんだよ。覚えてる……?(小首を傾げる。)」
竹田真一「さっき思い出した。大丈夫、全部思い出してる。…お前の気持ちはよくわかったよ。でも、付き合うかはまた別だよ。」
真部ことり「……分かってるよ。……あ、あのね、ママには内緒なんだけど、実はね、竹田のお母様とも会った事があるの。(小さな声で囁く。)……ほら、前に竹田の家に遊びに行った時に……。(耳元で話す。)」
竹田真一「……え?お前俺の家に来た事なんて………ちょっと待て。どう言う事だ?三年前、俺の母さんは家の階段を踏み外して……死んだんだぞ?…」
真部ことり「……うん。でもね、あの事故、私がやったの。……貴方のお母さんを、突き落としたの。……ごめんなさい。(泣きそうになるのを堪えながら謝る。)……でも、あの時は仕方がなかったの」
竹田真一「……なんで、そんな事したんだ?」
真部ことり「……だって、あの時貴方のお母様、私を邪険にして……私は竹田のお嫁さんになるって言っても、怪訝そうな顔するばかりで、家をおいだされそうになったの…!だから、ついカッとなってしまって……!(泣き出しそうな顔で訴える。)」
竹田真一「……ッッッ!!!!(猛ダッシュで逃げ、真部ことりの家を出るため走り出す)」
真部ことり「……ま、待って!置いていかないで!……私はただ!貴方と付き合いたいだけなのに!愛されたいだけなのに!どうして!いつも!こうなるのよおおおお!!!(大声で叫ぶ。)……(涙を流す。)」
それから竹田は何とかことりの元を逃げ出し、家に帰り号泣した。
あの不審な事故の犯人は真部ことりだった。
竹田は翌日警察へ通報し、その数日後にことりは容疑者として逮捕された。真部ことりは警察に捕まった後も泣いて無実を訴え続けたが捜査の末、証拠が揃い少年院行きとなった。
一方の竹田はしばらく部活も出来ず呆然としていた。
校舎裏に佇んでいると田中コーチがやってきた。
女子テニス部コーチ「……竹田くん、大丈夫かい?…その、なんて言うか、大変だったね…。しばらく部活は無理そうかい?」
竹田真一「……はい。……すみません。…………俺が真部の家に行ってなかったら、こんな事にはならなかったんですかね……。(悲しげに呟く。)」
女子テニス部コーチ「それは違うよ!寧ろ、真実が明らかになって良かった。真部さんは罪に向き合う必要があったんだよ…。」
竹田真一「そうですね。……俺、今から行ってきます。(立ち上がる)真部に会わないといけない気がするんです。あいつ、ずっと苦しんでたみたいだから……。(真剣な顔で言う。)……俺、これからのことはまだ分からないけど、アイツとはもう一度ちゃんと話をしたいと思います」
女子テニス部コーチ「竹田くん…。」
そして、竹田は現在少年院に居る真部の面会へ行って来た。
竹田真一「真部…。」
真部ことり「(気まずそうにする)……た、竹田ぁ~!!(アクリル板越しに)会いたかったよぉ~!!(わんわん泣く。)うあああん!!(ずっと泣き続ける。数分後)……グスッ。(鼻をすすり上げる)」
竹田真一「……真部、俺、お前にどうしても聞きたいことがあるんだ。……お前は本当に、あの日のことを後悔しているのか?(真っ直ぐな目を向ける。)……俺はお前を許すことは出来ないかもしれない。やっぱり真部がしたことは間違っているからな。」
真部ことり「……うん。わかってる。……でもね、あの時はああするしかなかったの。……だって、竹田のお母様は私のことを全然相手にしてくれなくて……!私、辛くて、悔しかったの。……それで、ついカッとなって……階段から落としてしまったの」
竹田真一「(驚愕する)お前…何にも反省してないんだな…。お前は良い奴だと思ってた。でも違ったんだな…。お前は狂ってたんだ。(席を立つ)」
真部ことり「待って!!……行かないで!!(必死な表情で引き留める)お願い!!私を見捨てないで!!(泣きながら懇願する)……貴方がいない世界なんて、耐えられないの!!(泣き崩れる)……私にはもう貴方しかいないの!!(叫び声をあげる。)」
竹田真一「……俺の母親を殺しておいて謝罪の一つもない女の側になんか居たくない。もう二度と俺に近づくな。…じゃあな。」
真部ことり「(絶望した顔で俯く。)……ごめんなさい。……ごめんなさい。……許してください。お願いします。……何でも言うこと聞くから、私を捨てないでください。……私には貴方が必要なの。……貴方しか頼れる人はいないの……。」
そして竹田は真部の元を去り、その後、少年院を出た真部は両親と共に引っ越した。それから真部と竹田は会うことはなかった。だが、竹田は時折ことりのことが頭から離れず、夜眠れなくなることもあった。
それから高校を卒業した竹田は就職して一人暮らしを始め、社会人になった。仕事に慣れてきた頃、竹田は会社の先輩に誘われて合コンに参加した。そこで、ことりと再会する。
竹田真一「お、お前ッ…!!すいません!!俺用事が出来たんで失礼します!!(合コン会場から逃げ出す)」
真部ことり「(驚く)えっ!?ちょ、ちょっと待ってよ!!竹田!私を置いていかないでぇー!!(慌てて追いかける)……待って!置いていかないで!(泣きそうな顔になる。)……ねぇ!待ってったら!(竹田の腕を掴む。)」
竹田真一「(振り払う)……ッッ!!(走り出す。)俺に触るんじゃねえ!!(怯えた顔で叫ぶ。)……(息を切らす。)ハァ……ッッ!!……(立ち止まる)…………なんで、また、俺の前に現れるんだよ……!」
真部ことり「……どうして逃げるのよ……!そんなに私が嫌いなの……?(泣きそうな顔で竹田を見る。)……ねぇ、どうしてよ……。(泣き出す。)私はただ、貴方に会いたくて来ただけなのに……。貴方の側にいたいだけなのに……」
竹田真一「お前…ッッッ!!!(信じられないと言うように)俺の母さんを殺しておいてまだそんな事言えるな!!!もう二度と俺の前に現れるなー!!!!(逃げ出しその場から消える)」
真部ことり「……どうして……どうして分かってくれないのよおおおおおお!!(大声で叫ぶ泣き崩れる。)……どうして……どうしていつもこうなるのよおおおおおお!!(泣き喚き続ける。)うああああん!!(しばらく泣き続ける。)……ヒック……」
竹田は真部ことりから逃げるために地元から上京して都会で暮らすようになった。そして、数年後、竹田は恋人が出来て結婚した。竹田は幸せだった。しかし、ある日、真部ことりが竹田の前に姿を現した。
仕事から帰宅する道すがら、確かに奴は居た。
竹田真一「…ま、真部ッッッ!!!!お前…ッッッ!!!!」
真部ことり「……久しぶりね、竹田。元気にしてた?(笑顔で言う。)……(竹田に近づき抱きつく。)会いたかった……。(耳元で囁く甘えるような声で喋る。)……ふふ、やっと会えた……」
竹田真一「(真部を突き飛ばす)うわああああああああ!!!!!!」
倒れた真部ことりを放置して急いで自宅へと戻ると、妻の文香が居た。彼女は竹田に微笑みかける。
竹田文香「あら?真一くんお帰りなさい!今日はカレーよ!」
竹田真一「文香、荷造りしてくれ!これから俺たちはホテルに泊まる!必ず新しい物件は探す!説明もするから今は準備をしてくれ!」
竹田文香「……!解った。行きましょう。」
文香はとても賢い女性で竹田の言う事をすぐに聞いてくれた。二人分の荷物を纏めると、車に乗り込んですぐ出発する。その道中で、真部ことりが現れた。真部ことりは竹田達を追いかけてきて、車の窓から車内を覗き込む。その顔は狂喜していた。それをバックミラー越しに見た竹田は恐怖した。
竹田文香「だ、誰!?あの人…!!」
竹田真一「アイツは…真部ことり!!高校時代に俺を苦しめたストーカー女で、俺の母親を殺した奴だ…!!」
竹田は妻の文香に今までの事を全て伝えた。すると、文香の顔は青ざめていったが冷静に対応しようと心がける。
竹田文香「とりあえず、弁護士さんに相談だね?それから真部ことりのご両親に話を通して…、あの人が何をしでかすか分からない以上、慎重に行動しないとね。大丈夫。きっとなんとかなるよ。(気丈な笑みを浮かべる。)……さぁ、まずはホテルに行こう。」
竹田真一「そうだな……。(不安そうにする。)……(震えている)俺の側に居てくれ。頼む。(手を握る。泣きそうな声を出す)……怖いんだ。……このままじゃ俺はおかしくなりそうだ……。(小刻みに体が震える。)……ッッ!!」
竹田文香「大丈夫、私は真一くんのそばにいるわ…。」
そして二人はホテルへと辿り着く。
竹田文香「とりあえず弁護士さんには連絡を入れたわ。明日には相談出来るって。…で、あと田中コーチだっけ?高校時代の、女子テニス部のコーチさん。その人とは連絡取れないの?」
竹田真一「取れるけど、忙しい人だから迷惑をかけるわけにはいかない。……それに、俺が今、助けを求めたらきっとあの人は助けてくれる。だが巻き込むわけにはいかないから…だから…。」
竹田文香「甘い。もしも田中コーチが真一くんを探すために犠牲になったら?もしかすると既に巻き込まれてるかもよ?そう言う意味でも一度連絡を取るべきだよ。」
竹田真一「(ハッとする)……そ、それは嫌だけど……でも……ッ!(焦り出す。)……(携帯を取り出す)……(ボタンを押す手が止まる)……(決心した顔になる)……(電話をかける)……あ、もし、もし。……あ、はい」
田中拓海「……真一くん…!?久しぶりだね!?」
女子テニス部コーチの田中コーチ、田中拓海は現在は地元のテニスクラブのコーチとして活躍している。今も竹田のことを心配して度々電話やメールをくれる。竹田は事情を話して、真部のことについて話した。すると、田中は少し黙り込んだ後、口を開いた。
田中拓海「……分かったよ。……君がそこまで追い詰められていたなんて……。……うん、わかった。明日、君のホテルまで迎えに行こう。それまでは、絶対にホテルから出ないでくれ。いいかい?……あ、それと、真部ことりは危険だよ。どんな手段を使ってくるかわからない。」
竹田真一「はい…勿論です。」
そして翌日、竹田は妻と共にホテルで待機していると、フロントから来客があったことを伝えられる。ドアを開けるとそこには田中がいた。彼は真剣な顔をして竹田に話しかけた。彼の後ろでは、何故か真部ことりが居る。彼女の目は虚ろで、どこか遠くを見つめていた。
竹田真一「なッッッ…!!!!た、田中さん!!?なんで真部がッッ…!!!」
田中拓海「真部ことりは、君を追ってここまで来たんだよ。……さあ、早く車に乗って!逃げるぞッッ……!!(真部を睨みつける)お前はもう、僕の生徒じゃない!!さっさと帰れッッ!!(怒鳴り付ける。)」
真部ことり「……(目が光を失い焦点があっていない。)……どうして……?(ボソッと言う)……ねぇ……、私、竹田に会いに来ただけなの……。なのに……、どうしてそんな事いうの……?(一歩ずつ竹田達に近づいていく。)」
そして竹田と文香と田中は三人で話を付けていた弁護士事務所へ向かおうとした時、真部は突然叫び出した。それを聞いた竹田達は立ち止まり、振り返る。真部ことりは泣きながら叫んだ。彼女は竹田に駆け寄ると抱きつこうとしたが…しかし、次の瞬間、彼女は地面に倒れこんだ。
竹田文香「真一くんから離れなさいよー!!!(怒りの形相で真部に殴りかかる。)この変態女ああああああッッ……!(真部を思いっきり蹴り上げる。)……ハァ……!(息を切らす。)」
なんと、妻の文香が真部ことりを殴ったのだ。竹田は驚いている。真部も殴られた頬を押さえて呆然としていた。田中も目を丸くしていた。妻の文香は、真部ことりをまるでゴミを見るような目で見下すと、冷たく言い放つ。
竹田文香「……あんたなんかに真一くんは渡さないわ。……さっさと消えなさいよ!(真部に向かって唾を吐きかける。)……二度と顔を見せないでよね!真一くんが汚れちゃうわ。……ほら、行くわよ。真一くん。田中さん。」
真部ことり「……ぅ……ぁ……ッッ……!(絶望した顔で涙を流す。)……どうして……?……私はただ…竹田に…会いたかっただけなのに……(ボロボロ泣いてる)……。……(フラつきながらも立ち上がる。)……ふふ……。(不気味に笑う)」
竹田真一「…真部…?」
真部ことり「(ニコッとして)やっと会えたね……。(嬉しそうに微笑む。)……ずっと待ってたよ……。(狂気じみた笑顔を浮かべる。)……これでまた、一緒だね……。(満面の笑みを浮かべる。)」
竹田文香「……真一くん、やっぱりこの人可笑しい…。逃げよう。早く。」
そして竹田と文香と田中は急いで車へと乗り込み、その場から離れる。その様子を見た真部ことりは悲しそうな表情をして呟いた。真部ことりはその場に座り込んでしまった。その手にはナイフが握られていた。真部ことりはゆっくりと立ち上がり、走り去る車を眺めていた。
そして弁護士事務所へと入ると三人は事情を全て弁護士に話した。
高校から始まり、今までに渡る因縁。
真部ことりが竹田真一の母親を殺した事や、それからも付き纏っている事全て話した。
女性弁護士である大槻美琴は…
大槻美琴「(冷静に聞いている)成る程……それで、あなた方はどうしたいのですか?このまま真部ことりと縁を切るのも良いでしょう。でも、そうすると彼女はストーカー行為を続けるかもしれませんよ?(淡々と話す。)警察に通報するのも一つの手段です」
竹田真一「これ以上真部と関わりたくはありません…。でも、逮捕されたからと言ってすぐに出所して来そうだし、俺達としてはとにかくアイツから距離を置きたいんです。」
大槻美琴「そうですね……では、真部の両親に連絡を入れてみましょう。そこで話し合いをしてみます。大丈夫。私がついていますから。安心してください。(優しく微笑みかける。)」
その言葉に俺達は安堵した。
それから大槻美琴は真部の両親に会い、話し合った結果、真部の両親は娘を真部夫妻が関わらない場所へ遠ざけると約束してくれた。これでひとまずは解決だ。だが、まだ油断はできない。だから、しばらくは彼女から身を隠すことにした。ホテル暮らしを続け、そして数ヶ月後、ようやく真部から解放され、平穏な生活を取り戻した。
真部ことりは両親と共に海外へ行ったらしい。もう、会うこともないだろう。これから先、俺は文香と子供を作り、幸せな家庭を築いていくだろう。それはきっと、素晴らしい人生になるはずだ。真部ことりは、一体何を考えて生きているのか。俺には分からない。彼女の気持ちを理解することはできない。
ただ一つ言えるのはあの女は生きる事が苦手だったんだろうなと言う事。
小学校からいじめられ中学で唯一俺にだけ優しくされ、高校で自分を変えようとしたは良いがそれは歪な物で、俺への愛情も偏執的なものに変わったのだろう。それでも彼女は、誰かに愛されたかったのだ。だからこそ、殺人を犯したのかもしれない。しかし、それがどんな結末を迎えるかなんて、彼女は考えていなかったに違いない。愚かな女。哀れな女。同情の余地はない。彼女のしたことは決して許されることではないのだから。