禁忌の皇子と救済の旅路
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あらすじ
娼婦の母と、魔導王の血を引く少年ドルベ。身分を隠し王城へ招かれた二人を待っていたのは、凄惨な嫉妬と罠だった。
本文
ミレッタ「おんぎゃあ!おんぎゃあ!(赤子が街中に捨てられて泣いている)」
ウォーゲル「……こんな所に赤ん坊が……(抱き上げる)可哀想だな…。金は無いが…うん、どうせこれから先も一生独り身だろうしな…。(連れ帰る)」
ミレッタ「おんぎゃああ!おんぎゃああ!(泣き叫ぶ赤子。しかしすぐに泣き止む)」
ウォーゲル「おぎゃあおぎゃあとうるさいから黙ってろ(殴る蹴るの暴行を加える)よし、これで静かになったぞ。」
ミレッタ「おんぎゃああ!おんぎゃああ!(殴られてもまだ泣く赤子。しかしすぐに泣き止む)」
ウォーゲル「なかなか根性があるじゃないか。気に入ったぜ。お前は今日から俺の娘だ!名前はそうだな…ミレッタ。この地方の運命の女神の名前を取って「ミレッタ」だ!」
こうしてミレッタと名付けられた赤子はウォーゲルに寄って育てられる事になりました。
それから5年後、ミレッタは5歳になりました。
5年経っても全く喋りませんでしたが、何故かいつもニコニコと笑顔を絶やさない女の子でした。そして、ある日の事です。街外れの森へ狩りに出掛けていたウォーゲルが大怪我をして帰って来ました。
ウォーゲル「クソが…畜生…」
ミレッタ「パパぁ!大丈夫!?ねえ大丈夫!?死んじゃヤダよぉ!!!(涙目で必死に呼びかけている)ねぇねぇ!!パパぁ!返事してぇ!!!お願いだからぁ!!!(半狂乱になって泣き叫んでいる)うわああん!!!パパぁ!パパぁ!」
ウォーゲル「うるせえっ…黙れ…病院に行く金もねえ…こりゃあもう、歩けなくなるかも知れんな…」
ミレッタ「嫌だよそんなのぉ!ずっと一緒だって約束したじゃんかぁ!!パパが死んだら私も死ぬぅ!!!一緒に天国行くんだもんん!!!(号泣している)パパぁ!パパぁ!パパぁーッ!!!(泣きながら父親の身体を揺さぶっている)」
ウォーゲル「うるせえ!!(ミレッタを殴り突き飛ばす)これからはお前が稼げ。俺の世話をしろ。出来るか?」
ミレッタ「うん!する!何でもするよ!だから死なないでパパ!ね?お願い……(懇願するように言う)死なないで……死なないで……パパ……パパぁ……(泣きじゃくっている)うぐ……ひっぐ……うええん……(泣き崩れる)」
それからウォーゲルは歩けなくなり、ミレッタはそんな義父のために懸命に働きました。でも、貧乏なので食べ物を買うお金すら無く、2人は日に日に痩せ細って行きました。そんなある日、ミレッタはある事を思いつきます。それは自分が娼婦になる事でした。
ウォーゲル「やめとけ。」
ミレッタ「どうして!?パパ!!」
ウォーゲル「まだお前は10歳だ。今そう言う仕事に就くのは長持ちしない。少女趣味相手の需要はあるし、本番無しならまだいけなくもないが…お前にその覚悟はあるのか?」
ミレッタ「あるよ!私は絶対にパパと一緒に居たいの!そのためだったら何だってする!どんな辛いことでも耐えられる!だからお願いします!一生懸命ご奉仕致しますから!!(土下座しながら必死に訴えかけている)お願い……します……」
ウォーゲル「よし、じゃあ頼んだぞ。」
そしてミレッタは義父の仲介やサポート受けてロリ娼婦になった。
娼婦になったミレッタは人気が出て、沢山の客が取れるようになりました。また、彼女の美貌もあり、たちまちトップクラスの売れっ子となりました。更に、義父の借金も完済出来たのです。しかし、ここで思わぬ事態が起こりました。なんとミレッタが妊娠してしまったのです。
ミレッタが15歳の頃でした。
ミレッタ「パパ!赤ちゃん出来たみたい!男の子かな女の子かな!?どっちかなぁ!?(嬉しさのあまり興奮気味になっている)楽しみだなぁ〜♪ふふっ♡早く生まれておいで〜♡パパに似て可愛い顔立ちだと良いなぁ……♡うふふっ……」
ウォーゲル「いや、俺の子じゃなくてお前と何処の馬の骨とも知らん客の子供だろ…はあ…」
それからミレッタは子供を産みました。元気な男の赤ん坊でした。しかし、産まれたばかりの子供は赤い瞳を持ち、黒い髪を持ち胸には逆五芒星の様な痣。しかも、生まれたばかりなのに既に立っていました。すると……突然、赤ん坊は泣き出しました。しかし、ただ泣いている訳ではありません。この世のものとは思えない程の禍々しい声で哭いているのです。
ミレッタ「う、嘘……何これ……怖いよ……パパぁ!助けてぇ……!(震えている)こ、こんなの聞いてないよぉ!こんなのってないよ!酷いよパパァ!私、頑張ってお腹の中で育ててきたんだよ!?」
ウォーゲル「知らねえよそんなこと。それより、どうすんだよこいつ。お前、育てるつもりなのか?俺は嫌だぜ。こんな化け物みたいなガキ。大体、俺が育てたわけじゃないだろうが。ま、とりあえず施設に預けるか。(あっさり切り捨てる)」
ミレッタ「そんな……パパぁ!待ってよ!お願いだから!(追いすがろうとする)お願い!お願い!お願い!お願い!お願い!お願い!お願い!お願い!お願い!お願い!お願い!お願い!お願い!お願い!お願い!お願い!お願い!お願い!お願い!お願い!お願い!」
ウォーゲル「うるせえ!しつこいぞ!いい加減にしろ!(ミレッタを突き飛ばす)分かったからそんなに泣くんじゃねえよ!うるせえな!ったく……仕方ねえな……あぁもう!面倒臭ぇなあ!分かったよ!置いてきゃしねぇよ!」
ミレッタ「パパ…!」
そしてその赤子はドルベと名付けられました。そして、ミレッタとドルベは幸せになりました。
ドルベはとても賢く、成長も早く、すぐに喋れるようになり、2人の言う事も理解出来る様になりました。
ドルベ「母さん、お祖父さん、おはようございます。(笑顔で言う)今日もいい天気ですね。(窓の外を見ながら爽やかな笑みを浮かべている)」
ウォーゲル「おう、おはよう。(笑顔)お前は本当によく出来た孫だよ。」
ミレッタ「ドルベ、おはよう!(笑顔)うわあ、もう朝ごはん食べたの!?早いねぇ!偉いなぁ!(ニコニコしている)私もすぐ食べるからちょっとだけ待っててね!(嬉しそうにしている)はい、パパも!(スープの入った皿を差し出す)」
そして三人は貧しいながらも幸せに暮らしていたある日、とある男がやってくる。
男「初めまして。私は魔導国イシュランの使いの者です。…貴方がたが共に暮らすその少年に用があって来ました。」
ミレッタ「え…?ドルベ、に…?」
ドルベ「……僕ですか?一体どんな御用でしょうか……(怪しげな目で見ている)」
男「実は貴方は、魔導国イシュランの王の息子、つまり王子なのです。第三王子ガードラグ様が、兄上様達の崩御により急遽王位継承され…世継ぎとして貴方を探しておりました。ドルベ様。」
ドルベ「……!(驚いている)え……ぼ、僕の……父親が……王様……!?(呆然としている)でも、僕は……捨て子だって聞いたけど……(困惑した様子で呟くように言う)それに、父上の顔なんて知らないし……(俯きながら言う)」
ミレッタ「ごめんなさい。私はかつて娼婦をしていたの。その時、誰ともわからぬ子を孕んだ…それが貴方だったわ…。」
ドルベ「そうだったのか……それで、僕はイシュランに行かなくてはいけないのですか…?母と祖父を置いて行きたくないです…。」
男「いえ、無理に連れていくつもりはありません。貴方のご家族も連れて行っても構いません。ただし、条件はあります。まず、これから先、二度とこの家には帰ってこれないこと。そして、この事は誰にも言ってはならない事。これを守れますか?」
ドルベ「は、はいっ。わかりました!約束を守るので母と祖父も連れて行ってください…!」
ミレッタ「ドルベ…!ダメよ!そんなの!私達なら大丈夫だから!私はもう大人だし、パパも居るから!ね?パパ!(懇願するように訴えかける)お願いします!どうか、どうかこの子を連れていかないで下さい!(必死に訴える)私の大事な息子なんです!」
ウォーゲル「いや…いいんじゃないか…?ここにいるよりもドルベも幸せだろうし、その…俺たちもその恩恵を預かれるなら…」
ミレッタ「……!(愕然とする)そ、そんな……嘘でしょ……パパ……!?(涙ぐんでいる)うぅ……どうして……なんで……うっ……うっ……ううっ……ううっ……ううっ……ううっ……ううっ……」
ドルベ「安心して、母さん。僕はお城でも頑張るから。(微笑みかけながら言う)だから、泣かないで。(優しくミレッタを抱き締める)じゃあ、行こう。父上の元へ……!(決意に満ちた表情をしている)僕に居場所を与えてくれたみんなのためにも……!」
こうしてドルベは王である父のいる魔導国イシュランへと母と祖父を連れてやって来た。
ドルベは父親と謁見し、そこで自分がイシュラン王国の第二王子だと聞かされる。そして、ドルベは王族としての教育を施される事になる。
母のミレッタは、王の第三夫人として振る舞う事になりました。
祖父のウォーゲルは、魔導国の爵位を得て悠々自適に暮らします。
そして、ミレッタは……第一婦人のダズマに虐められる日々が続きました。最初は嫌がらせ程度でしたが、やがてエスカレートしていき、とうとう殺害しようとしましたが、間一髪のところでドルベに助けられました。しかし、その後も何度も命の危機に晒されたのです。
しかし、ここで思わぬ事態が起こった。なんと、ドルベが17歳の時に突然、熱を出してしまい生死の境を彷徨ったのだ。
ドルベ「ああ……苦しい……痛い……助けて……誰か……!母さ……ん……!(苦しそうに喘いでいる)ああっ……嫌だ……死にたく……ない……まだ……生きたい……!(息絶えそうになる)あぁ……神様……」
ミレッタ「ドルベ!しっかりして!ドルベ!お願い!死なないで!お願い!パパ!パパァ!どうしよう!このままドルベが居なくなったら……私……私ぃ……!(泣き崩れている)あぁ……神様……ドルベを助けてください……!」
その時、ミレッタの背中に白い翼が生えてきた。まるで天使の様な美しい姿になった。その姿を見た者は、皆、神々しいオーラを感じ取ったという。そして、ドルベの容態は回復し、目を覚ました。だが、ミレッタは度重なる周囲の虐めもあり体調を崩していた所で自身の力を使った事で力尽き帰らぬ人となった。
ドルベ「母さん……!母さん!どうして……!?何で……!こんな事に……!(嘆いている)僕のせいで……!(拳を強く握りしめている)許さない……絶対に……!あいつだけは……殺してやる……!必ず……殺す……殺してやる……!」
怒りに駆られたドルベは自分の母を虐めていた第一夫人ダズマを暗殺する事を決意。そして実行に移した。ダズマが寝静まった夜中、ドルベはこっそり部屋に入り込み、ナイフで心臓を一突き。そのまま絶命させた。ドルベはすぐにその場を離れようとした時、異変に気付いた使用人が部屋に入ってきた。
使用人「ドルベ様!一体何をしているのですか!?奥方様を殺すなんて!一体何故!?(動揺している)とにかく、早くこちらへ!衛兵を呼びますよ!?(剣を構えながら言う)さあ、大人しく捕まりなさい!」
ドルベ「……ッ!!」
ドルベは逃げ出すがそのままこの国を亡命は出来ない。
祖父であるウォーゲルを見つけなければ。
ウォーゲルがいる屋敷のある町へ向かった。そこにはウォーゲルがいた。ドルベの姿を見て、驚きのあまり声が出なかった。だが、すぐに冷静になってドルベに話しかける。ウォーゲルは、孫が何をしに来たのか察したようだ。ウォーゲルは、孫の話を聞いて、悲しそうな顔をしていた。
ウォーゲル「お前…何も殺す必要は無かっただろう。ミレッタだってお前を殺人犯にするために犠牲になった訳じゃないんだ。」
ドルベ「うるさい!僕の母はあの女に殺されたんだ!母さんは、僕を守って死んだんだ!僕は母さんの無念を晴らすために復讐したんだ…!!うっ…うう…!!」
ウォーゲル「……そうかい。まあ、どっちにしろお前はこの国には居られないよ。」
ドルベ「……え?」
ウォーゲル「ミレッタは天使の血を引く存在だったらしい。悪魔を崇拝し悪魔の血を色濃く受け継ぐイシュランじゃお前は禁忌の子だ…。だから近々追放処分って話があってな。俺も追い出されるだろうから夜逃げの準備をしてたんだ。」
ドルベ「な…!そんな……!それじゃあ、僕は……!?ううっ……!」
ウォーゲル「あーあ、俺の贅沢三昧もこれでおしまいか。まあ、身の丈にあった生活に戻るとしよう。俺は足が悪いからお前と一緒に居ても足手纏いだろう。…俺は適当な国に亡命する。じゃあな。」
ウォーゲル「………。」
そしてウォーゲルはドルベと別れを告げ、それから会う事は無かった。
一方のドルベも国を出て旅人になった。しかし、行くあてもなく途方に暮れた。そして、しばらく歩いていると、ある村に着いた。その村は貧しいながらも、皆、笑顔で溢れていて、とても幸せそうに見えた。その光景を見て、ドルベは思わず涙を流す。すると、一人の老人がドルベに声をかけてくる。
老人「おやおや?坊っちゃん。どうかなされたかな?迷子かね?お腹が空いて泣いているのかい?ほれ、飴玉をあげよう。(優しく語りかける)ところで、坊ちゃんの名前はなんと言うのだい?」
ドルベ「ぼ、僕の名前……?僕の名前は……ドルベです。(涙ぐみながら答える)あの……ここは何処ですか……?僕、旅をしているんですけど……道に迷いまして……それで、ここがどこなのか分からなくて……すみません……(申し訳なさそうに謝る)」
老人「ほっほっほ。それは大変じゃのう。どれ、ワシが案内してあげよう。(優しく微笑みながら言う)こっちに来るんじゃ。(ドルベの手を取り誘導していく)さあ、着いたぞい。…さあ、これでも飲みなさい。(生姜汁を飲ませる)」
ドルベ「ありがとうございます。(ゴクッと飲む)……美味しい……!(嬉しそうに笑う)」
老人「ほっほ!それは良かった!この村は悲しんでいる人を見捨てない事を心情とする村だ。何か困ったことがあればいつでも来るといい。力になるからの。(微笑む)」
ドルベ「そうなのですね…。僕は、過去に罪を犯しました。自分の母を殺した人間をこの手で殺したのです。本当はわかっていた。母を殺したのは僕はなのだと。それに気付いていないふりをして八つ当たりをした…。そして、僕はもうこの世に居てはいけないと思いました。生きる資格が無いと分かっています。それでも、僕は生きたいと思ってしまうんです…。」
老人「ふむ。お前さんは死にたいと思っているのかい?それともまた生きたいと願っているのかい?どちらなんだね?(真剣な眼差しで言う)もしお前さんが、死を望むなら……ここで死ぬのも良いだろう。だが、お前さんがまた生きたいと望むのならば……」
ドルベ「……僕が望めば……生きていいの……?(震え声で聞く)……僕は……生きたい……!まだ、生きていたい……!どんなに辛くても苦しくてもいい……!だから、お願いします……!僕を……僕を、助けてください……!」
老人「ああ、もちろんだとも。お前さんはまだ若い。これから、様々な出会いがあるだろう。その中で善行を積みなさい。人のために生き、人のために死に、愛を学びなさい。さすれば、きっと、お前さんの人生は豊かで実りあるものとなるであろう。(ニッコリ笑いながら語る)……どうだね?坊ちゃん。少しは元気が出たかい?(優しく問い掛ける)」
ドルベ「はい…!それにしても貴方は何者なのですか?只者とは思えない…。」
老人「ほっほっほ、ただの通りすがりの老いぼれジジイさ。では、そろそろお別れの時間だ。達者でな。坊ちゃん。またいつか会える日を楽しみにしておるよ。(優しい笑みを浮かべて去る)さようなら。(手を振る)」
この老人こそ、伝説の哲学者にして詩人、ラミパス・ビギャルナであった。ドルベは、この時から生きる意味を見出したという。それから、ドルベは放浪の旅を続けた。ある時は悪人を懲らしめたり、ある時は、貧困に苦しむ人々を救ったりした。
後に彼は愛する存在に出会うのだが、それは別のお話…。