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第34話:【合流】廃都のライブストリームと清潔の聖域

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あらすじ

物理と知識で魔法世界を再定義!―拾った助手は2000年前の伝説の管理者(旦那様)でした。追放された天才没落令嬢は、最強の娘たちと共に「世界」を再構築中― - 第34話:【合流】廃都のライブストリームと清潔の聖域

本文

――視界の先、かつて「黄金の都」と称えられたアステリアは、いまや黒煙と歪んだ光の檻に閉じ込められていた。

 王都を囲む外壁は無残に砕け、空には次元の歪みが幾何学的な模様を描いて蠢いている。リュウガ(リュック)のAdmin権限による一時的な安定化から二ヶ月。その猶予を、愚かな人間たちは「再編」ではなく「奪い合い」に使い果たしたのだ。

「……ひどい。物理的な崩壊以上に、マナの波形が腐りきっているわ」

 アークのブリッジで、私はホログラムモニターに映る王都の惨状を見て吐き捨てた。

 教団と技術院の衝突が撒き散らす過剰なマナ。それが熱歪みとなって大気を焦がし、鼻を突くオゾンの匂いが王都全域に不快な余剰熱として滞留している。論理(ロジック)を欠いた力の行使は、世界を汚すだけのバグに他ならない。

 そこへ、通信回線がノイズを切り裂いて繋がる。

『――こちらカイル! エリアーナ様、リュウガ殿! 到着を待っていました!』

 画面に映ったのは、砂塵に汚れながらも鋭い眼光を保ったカイルだ。その後ろには、先行して潜入調査を行っていた三人の娘たちの姿があった。

「カイル! 三人も無事ね!?」

『……(親指を立てる)』

 四女ルーテが、面倒くさそうに無言でジェスチャーを返す。

『母様。……報告、完了。……あとは、滅ぼすだけ。……疲れた。』

 相変わらず一文字でも多く喋りたくないルーテの省エネ無口。その隣では、六女ヴィオラが返り血を拭いもせず、冷徹な所作でメイド服の裾を整えていた。

『母様。潜入中、教団の騎士十数名が不衛生な方法で我々に接近したため、物理的に「排除」しておきました。……清掃、完了です』

『ねぇねぇ、あたしのカメラワーク最高でしょ!? 今の戦闘シーン、全世界にアーカイブ保存済みだよ!』

 七女クララが、自律飛行カメラを操りながら、すでに配信を開始している。

「とりあえず、すぐにアークへ収容するわ! ハッチ開放!」

 アークの広大な後部ドックに、カイルの偵察バイクと三人のシスターズが滑り込む。

 ハッチが閉まると同時に、待機していた初期メンバーと、目覚めたばかりの08〜11の面々が駆け寄った。

「ルーテ! ヴィオラ! クララ! 寂しかったわよぉぉ!!」

 私が駆け寄ろうとした瞬間。

 ――ピキィィィン、と。ドック内の空気が絶対零度まで凍りついた。

 先行組の四女ルーテ。

 起動したばかりの八女テューバ、そして九女ハープ。

 この三人が視線を交わした瞬間、ドックの湿度が物理的に消滅したかのような錯覚に陥る。

「……(テューバを見る)」

「……(ルーテを見て、小さく頷く)」

「……不浄。王都の塵。……除菌、開始」

「ちょっと! 再会の感動は!? 産みの親の私は空気なの!?」

「母様、下がってください。今の母様のドレスには、王都の戦場由来の汚染ナノマシンが付着しています。……恥ずかしいですが、直ちに脱いでください。……消毒(クリーンアップ)します……っ(顔真っ赤)」

 テューバが悪役令嬢のようなドリル(縦巻きロール)を左右に揺らし、羞恥心に耐えながらも、その手には高圧消毒液噴霧器を握りしめて迫ってくる。

「ちょっとテューバ、顔を真っ赤にして脱げとか言わないで! ハープ、そのメスは何!? ルーテも黙って私の背中のジッパーに手をかけなーい!!」

「……母様、抵抗は非効率。……マナ汚染、デリート。……丸裸。……それが、最適解」

「リュック、助けて! 娘たちに服を剥ぎ取られるーーー!!」

『【実況】エリー様、実の娘たちによる「清潔の蹂躙」により、羞恥心が臨界突破。全裸での消毒シーケンスまであと5秒です。……てぇてぇ……を通り越して、もはや事故動画ですわ(・∀・)』

 ファーファの無慈悲な実況が響く中、私は「不浄な過去(ドレス)」を物理的に剥ぎ取られ、新型の清潔なインナーに着替えさせられるまで、ドックに悲鳴を響かせ続けた。

 一頻りの騒動が終わり、清潔になった(心はズタズタな)私がブリッジへ戻ると、アークは王都外郭のキャンプ地へと展開していた。

 そこで私たちが目にしたのは、モニター越しでは伝わらない「地獄」だった。

 瓦礫の山に身を寄せ、虚ろな瞳で空を見上げる市民たち。配給は途絶え、教団と技術院の小競り合いに巻き込まれた怪我人が、消毒薬の匂いすらない不衛生なテントでうめき声を上げている。

「……これが、私たちの愛した王都だなんて」

 私が言葉を失っていると、アークの後方から鋭い駆動音が響いた。

「絶望している暇があるなら、手を動かしなさい、泥棒猫。……私の知性が、最も効率的な配置を算出したわ」

 現れたのは、銀髪をなびかせたリディアだ。彼女は愛用のコンソールを空中に展開すると、アークの甲板から無数の影を飛び立たせた。

 偵察、戦闘、修復、通信妨害、そして物資輸送。五つの異なる役割を持つ、計二十機のドローン部隊。それが今、リディアが動かせる全戦力だ。

「リディア様ぁぁ! さすがです! その配置、物理的に完璧だ……っ!」

「……黙りなさい、この不浄な質量体。ヴォルフ、貴方は資材の搬入を手伝って」

 リディアのドローンが、アークの周囲に多重の警戒網(後方支援)を構築していく。

 それらのドローンは、リュウガのAdminコードをトレースした物理演算によって、教団の結界や技術院の旧式センサーを「存在しないノイズ」として透過する追加機能を実装していた。リディアの知性が、管理者の力を借りて王都の防衛網を物理的にハッキングしていた。

「管理者の知識をトレースした私のドローンなら、教団の結界も技術院の旧式センサーも潜り抜けられる。……これで、後方の憂いはなくなったわよ」

「……助かるわ、リディア。そこに、私がアークの外装に塗った『電磁波吸収塗料(ジャンク塗料)』のステルス効果も合わさって、物理的にも魔導的にも完全な透明人間ってわけね。最高のハイブリッドだわ」

 私が悔しくも感謝を口にすると、リュウガが黄金の瞳で王都の中枢をスキャンした。

「……Admin、検知。王都の中央、システムの核(カーネル)が限界だ。……痛い、って鳴いてる」

 セフィラがリュウガの袖を掴み、苦しげに顔を歪める。

「世界の『削除プロトコル』が、王都アステリアを最初の消去対象としてロックした。三勢力による無秩序なリソース消費が原因だ。このまま放置すれば、三時間以内にこの都市は物理演算から消去される。……そこにいる、飢えた市民ごとだ」

 重苦しい沈黙。それを破ったのは、十女ボーンの爆音だった。

「なら、あたしたちが『上書き(オーバーライド)』しちゃえばいいじゃないですかぁぁ!!」

 ボーンが自慢の巨大スピーカーを叩く。

「あたしと、クララ姉様、ヴィオラ姉様! 三人揃えば、王都全域の全周波数帯域をジャック可能です! 腐った連中の醜態を全世界にライブ中継しながら、母様の『最強の技術』でド派手に救済してあげましょうよ!!」

「マジぶち上げ! 特攻班も準備オッケーだし!」

 五女ユーフィが三女コルネと肩を組んでウィンクする。

「……いいわね。最高に性格の悪い、最高に私たちらしい『救済』プランだわ」

 私は、不敵に笑って眼鏡を直した。

「リュック、 Admin権限(鍵)を私に預けなさい。……路頭に迷う市民を無視して、椅子取りゲームに興じてる連中……まとめて私の技術でデリートしてやるんだから!!」

「了解した。……キックオフだ、エリー。 シスターズ11人、セフィラ、リディアのドローン部隊、そしてアーク。……全機能、リンク。アステリア再定義作戦、開始せよ」

 空にはクララたちが飛ばした監視ドローンと、リディアの支援ドローンが交差して展開する。

 全世界の魔導端末に、史上最大の、そして最も「不合理な愛」に満ちた救済劇の幕が開いた。

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ざつ

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