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その中の異世顛末生~志山風花

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/4/26 📚 シリーズ: 當世流行異世顛末生 📝 3,633文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

佐東仁美、五十歳。 いい歳のばばあ───仕事も家庭も、もうやり直せないと思っていた。 そんなある日。 目を覚ますと、見知らぬ、だけど“自分にひどく優しすぎる”場所にいた。 その優しさの奥に、ゆるやかに絡み合う別の景色── 剣も魔法も陰謀もない異世界。 静かな日常と、人との縁がすべてを動かす物語です。 恋愛もありますが、騒がしい恋ではありません。 多層的な視点で描く、 少し変わった異世界「恋愛」顛末譚。

本文

◆1

深い、えも知らない悲しみ。

絶望……何だ、これ?

突然、なだれ込む、私のものではない感情。

目の前のベッドに、横たわる女性。

条件反射で、女性に駆け寄り頸動脈に触れる。

目にはいる、小さな手。

……。

脈、無し。

胸の動き、呼吸、無し。

ペンライトを探すが、私の服じゃない。

虚ろな瞳が映す少年。

位置的に、私。

大量出血による窒息死。

今回は間に合わなかったか…

女性の目蓋を伏せ、手を合わせる。

改めて、窓に映る自分を見る。

誰だろう、───ラウノ?誰?

部屋を見回しても、まるで見覚えがない。

私の部屋ではないことは確か。

棚に申し訳程度に置いてある本の背表紙には、筆記体の文字。

英語でも、ドイツ語でもない──I.R.O.H.A……ローマ字?

裕福とは言いがたいが、埃が無い綺麗な部屋。

と、いうより絵のような質感。

夢?にしては、変な実感。

《《母》》の遺体をどうしようか?

悲しいかな、職業病。

清拭をしなければと体が動く。

お湯を沸かすために台所にくると、…うっ!釜戸?

火、起こせるかな?無理そうだなー?

水でごめん。

ひとつしかない蛇口を捻ると、まさかのお湯だった。

どういうこと?

…ま、お湯は確保。

作業をするのに、少し熱い。

薄める水はなさそうなので、バケツ…というかその場にあった桶に、お湯を溜める。

タオルを探すために、家捜し。

うー、ごめんなさい。

キレイにするから、許してね。

浴室発見。

上質とはいえないけど、清潔なタオル。

あるだけ持ってベッドの脇に置いて、桶を取りに行く。

よかった、シーツも発見する。さて。

女性の口の中から、血の塊を取り除いて吐き出した血を拭う。

血…の筈なのに、鉄の臭いがしない。

夢、なんだろうな。

淡々と手を動かしながら、何で私は折角の休みに遊びに行ったゲームイベントで、声優さんの応急措置をしたり、夢の中でまでエンゼルケアしたり、してるんだろう…と、考えていた。

にしても、いつもと違う自分の体の大きさに、調子が掴めない。

ご遺体を動かして、シーツを替えるのに息が上がる。

…っ!やれる!大丈夫!

両手で頬を叩いて、気合いを入れる。

……いつもの三倍は掛かっちゃったな。

清拭を済ませて、椅子に腰かける。

…まず、着替えたいな。

すると、体が勝手に動く。

着替えを用意し、浴室に向かう。

私の意識ははっきりある。

けれど、意識しない行動をする体。

明晰夢ってやつなのかね?

浴室に入ると、シャワーがあった。

湯船は無い。

シャワーなんだ…どこまでも凝った夢だな。

バルブを緩めると、お湯。

ん。熱いよね、知ってた。

むしろ湯船に溜めたいくらいの熱さだけど、

自分の体に付いた、血を流す。

ついでに洗濯。

水の方が良いんだけどな。

桶につけ置くことにした。

ご遺体…どうしようか?

濡れた髪を乾かしながら台所に向かうと、四角い箱。

冷蔵庫かな?木製だけど。

開けると上の段に大きな氷。

……アイスボックスってやつかな?

……でも、冷気が出てる?電気のコードはないし、モーター音もしない。

………考えてもわかる気がしない。

下の段にある、お茶をいただく。

ミントティーだ……

とんとん。

「ラウノ?チィラいる?具合どう?」

ノックと共に入ってきたおばさん。

「ウーラさん…」

と、口からスッと出る名前。

知り合いなのかな?

ウーラさんは、母…チィラを見つけて無言になる。

「…荼毘に伏さなきゃね…」

良かった。この後の段取りを聞けるようだ。

◆2

ウーラは、ラウノ母──チィラの妹らしい。

病弱な姉を看病しながら、自分の家庭も守ってる。

のを、理屈ではなく、感じる。

夢って便利だね。

ウーラにつれられて、役場に向かう。

細部にまで凝りすぎじゃない?

私に、そんな想像力があったかしら?

一見、石造りに見えるけど、艶を消した樹脂のような作り物感のある建物。

映画でしか見ないような、クラシックカー。

パンタグラフの無い、路面電車。

限りなく洋を真似た、和。

明治、大正?と、私の脳裏に浮かぶ。

なのに和装の人はない。

まるで、なんちゃって中世のような服装。

……何だろう?そこはかと無い見覚え。

んー何だっけ…?知ってる…気もする。

役場に着いて、死亡届に署名するとウーラが驚いた。

「おや?ラウノ。いつの間に字が書けるようになったの?」

見様見真似の筆記体。

学校で習わないけど、医師の中にはまだ手書きカルテを書く方もいらっしゃったから、書いてみたけど間違った?

「こんなときなんだけど、綺麗な字だねえ…チィラみたいだよ。ねえ!…!って、メルクリオスさんっ!なんで、ここに!」

「夜勤ですよ。今日は職員の都合がつかなくてね。確かに綺麗ですねえ。本当に未就学なんですか?」

濃い銀髪の、緑の瞳の若い男性。

あれ?この人?この声…?

てか、なんで、私を凝視してるんだろう?

男性は、何かを振り払うように頭を振って、

「ところで、火葬は明日でいいですか?明日なら車を出せますが?」

と、言ってきた。

役場で葬儀の段取りまでするのか?

「車は出して貰おうか。男手がうちの旦那しか無いからありがたい」

ウーラが私…ラウノに同意を求める。

出棺に際しての人手、ってことなのかな?

分からないので、頷いておく。

「では、明日の朝、伺います」

「メルクリオスさんが来るのかい?」

「何か不都合でも?」

「いや、お礼金が間に合うかと」

「要りませんよ。……いや、そうですね。ラウノ君に仕事をしてもらう、ということで構いませんよ」

さくさくと、物事が決まっていってる中で、突然名前が呼ばれる。

銀髪の男性が、苦しそうに笑ってる。

「では、明日」

───次の日、チィカの遺体を引き取りに来たメルクリオスさんについて、火葬に向かう。

…夢だよね?寝て起きても夢なんだけど?

所謂、葬儀はなく坦々と焼かれたご遺体の灰をまく。

わが夢ながら、偉く簡素なもんだ。

「葬式がないっていうのも、ある意味合理的なのかしら?」

ボソッと声にしていたらしい。

メルクリオスさんが、すごい目で見てる。

え?

「《《式》》って言ったか?今!」

え?な、なに?!

「《《式》》って、なんだ?」

……聞かれてることの意味が分からないけど、捲し立てられた声で、私は思い出した。

この声、勢雄じゃない?

メルクリオスさん…て、クリストファー・メルクリオスか!

◆3

 成る程、【デイム・メイカー】か……。

それで、この状態…《《葬式》》が無い事に納得する。

 宗教が、無い世界。

 だから、葬《式》が無い。

 と、私に合点はついたのだけど、この睨むように見てくるクリストファー男に何と説明しようか?

 不用意に滑ってしまった口を、後悔する。

 声は……二日前に応急措置した、勢雄…さんのもので間違いない、と思う。

 イベントの最中、吐血しながら「なんだこれは」って、吐き出した声と似ている。

 尤も、勢雄さんは流行りから一歩引いてる声優さんだから、私はその時初めて聴いた声で。

 低く、癖のある不思議な声だなと、印象に残ったのだけど。

 で、さて。

 何と説明しようか?

 「なんの事です?」

 私はシラを切ることに決めた。

 宗教が無い世界観に、葬式を説明できる自信無い。

 「ラウノ…今、何とか《《式》》だって言ったろ?」

 矢張、“葬式”という、単語自体がないのだ。

 聞き慣れない言葉を、聞き取ってない。

「掃除しなきゃな、と言ったんです。聞き間違いですよ」

 苦し紛れだけど、通用するかしら?

 すると、強ばっていた表情が、ふわっと解けた。

 うわっ…!クリス様は推しではないけど、憂いのある良い顔をするじゃない!

「……そうだよな、すまない」

 ありがとう。

 そう、男は引き際が肝心だよ。

「──ああ、そうだ。ラウノには頼みたいことがあるんだけど」

 と、切り出されたのは子守りだった。

───

 次の日

 ……また寝て起きてしまった。

 なんて、長い物語性のある夢なんだろう。

 そんなことを考えながら、メルクリオス家へ赴く。

 これがゲーム通りなら、セイレン様にお会いできるのだろうか?

 邪な気持ちが顔をのぞかせる。

 仕方ないよね、推しだもん。

 やっとセイレン様ルートの分岐点、攻略サイトで見つけたのに。

 早く目覚めて、ゲームしたい。

 ──でも、あんな若いクリス様、公式の立ち絵では見なかったよね?

 おじ様枠じゃなかったっけ?

 攻略対象だなんて、あのイベントで初公開だったし。

「みりあです!」

 と、なんとも愛らしい少女を目の前に、違和感を覚える。

 なぜ、メルクリオス家に少女がいる?

 どんなサイトでも、見かけない姿。

 知らない名前。

「ラウノ…十歳…」

 知らない名前、でもこの後の展開は知ってる。

 イベントフラグの、着火点───

斯くして。

 推しには会えたけれど、私の好きな推しの姿ではなくて。

 対峙するなり、彼の手にはナイフがにりゅっ、と湧き出て。

 最新情報で知り得た、「町の少年を殺す」という、セイレン様ルートを見事クリアし。

 居合わせたクリス様の、悲痛な面持ちが、美しいな、なんて思いながら。

 やけにリアルに腹を突き刺された気持ち悪さを携えて、夢から覚めた。

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作者について

有城 砂生

有城 砂生

理であそび 律にあやつる せつなゆたう はざま ワタシはログ。 律であそび 理をあやつる

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