創造の想像主~プロダクションテルル営業兼広報
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
佐東仁美、五十歳。 いい歳のばばあ───仕事も家庭も、もうやり直せないと思っていた。 そんなある日。 目を覚ますと、見知らぬ、だけど“自分にひどく優しすぎる”場所にいた。 その優しさの奥に、ゆるやかに絡み合う別の景色── 剣も魔法も陰謀もない異世界。 静かな日常と、人との縁がすべてを動かす物語です。 恋愛もありますが、騒がしい恋ではありません。 多層的な視点で描く、 少し変わった異世界「恋愛」顛末譚。
本文
勢雄さんのお見舞いに来て、
うちのゲームのファンだっていう女の子と看護師さんに会って、
『さとーさん』を思い出した。
何年か前に、半年だけいた派遣さん。
そんな人、いつもなら忘れるのに。
いや、実際忘れてたけど。
思い出した。
忘れちゃいけない人だったのに。
ゲーム【デイム・メイカー】のコンセプトは一途。
一般的に乙女ゲームというのは、複数の攻略対象の中から、お目当てのキャラを攻略する。
攻略対象が複数なのは、ユーザーの好みに合わせる為だ。
アイドルグループがどんどん数が増えたように、これだけ用意しとけば、誰がはまるでしょう、という保険だ。
そしたら、さとーさんが言った。
一途が攻略条件とかってダメなの?
「それじゃ乙女ゲーの醍醐味が減るんじゃないですか?」
そう聞いたら、攻略だけが乙女ゲーでなくてもいいんじゃないかな、と返ってきた。
恋愛だけが人生でなくてもいいんじゃない?
昔やったゲームでさ、女の子育ててプリンセスにするってあったじゃない?
プリンセスにならなくても、結末は一杯あって。
だからさ、あれを“やらされる”じゃなくて、女の子が自発的に“やって”もいいんじゃない?
「女性向けでどうなんですかね?」
攻略対象を増やせばいいじゃん?
そーゆーのって、難しいもんなの?
「どうなんですかね?開発の方はさっぱり門外漢なんで」
ふぅん、でもさ、同じダンジョン活動でも、騎士とか、山賊とか、隠しキャラエンドとか、ワクワクしたけどな。
「ダンジョンで?隠しキャラエンド?」
ん。体力限界までダンジョンにいたら、隠しキャラが助けに来てくれるの。これを繰り返すと隠しキャラエンド。乙女ゲーっぽくない?
「んーどうでしょうねぇ?でも、ありがとうございます。全社コンペの参考にしてもいいですか?」
どうぞーこんなんで良ければいくらでもー。
なんて、軽い調子でさとーさんのアイデアを屋台骨に、もっとあっさりとした案を提出させてもらった。
それが、なぜか気に入られて、製品化して、営業なんだから広報もしろって無茶ぶられて。
開発の途中で、私の案はほぼ消えて、開発部は知らない筈なのに、さとーさんのアイデアに寄っていって。
不思議だと思った。
さとーさんが、契約を終え会社を去る頃にはまだ概要しか決まってなくて、タイトルも仕様も未定だったけど、これはクレジットしなきゃだろ、とそう言ったら。
老眼で携帯用ゲーム機って字が読めないんだよね。
だから遠慮しとくよ、って。
そう言って、連絡先も教えてくれなかった。
社交辞令は嫌いだよ、って。
でも。
でもスゴいよねー。
“世界”を作ってるんだもんねー。
そう言って、さとーさんは去っていった。
そう言えば、勢雄さんとあの少女は、なんで中央の街の「テルル」を知ってたんだろう。
開発部内での、仮称だったのに。
作品統計
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