テルルにての表紙画像

テルルにて

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/4/28 📚 シリーズ: 當世流行異世顛末生 📝 2,213文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

佐東仁美、五十歳。 いい歳のばばあ───仕事も家庭も、もうやり直せないと思っていた。 そんなある日。 目を覚ますと、見知らぬ、だけど“自分にひどく優しすぎる”場所にいた。 その優しさの奥に、ゆるやかに絡み合う別の景色── 剣も魔法も陰謀もない異世界。 静かな日常と、人との縁がすべてを動かす物語です。 恋愛もありますが、騒がしい恋ではありません。 多層的な視点で描く、 少し変わった異世界「恋愛」顛末譚。

本文

セロラが、初めて子供を生んだ日、「出る幕がなかったねえ……アタシが取り上げた中でも三本の指に入る、安産だったよ。」と、産湯を使いながら産婆が言った。

セロラ自身も、汗を滲ませながらも、ちょっと運動した、くらいの面持ちだ。

そんな、セロラに労いの言葉をかける。

「あの…えっと…ご苦労様でした?」

「ぷっ…!ラシン、なに?それ」

一仕事終えたかのような言葉しか思い付かなかったおいらに、セロラは笑いながらそう言った。

「ごめん、なんか違うのはわかるんだけど、何て言っていいか分からなくて…ああ、産んでくれてありがとう」

「どういたしまして」

極上の笑顔を返してくれたから、間違ってはないと云うことで良いのかな?

「……ラシン!大変だよ!」

子供を洗っていた、産婆が声を上げる。

「何を騒ぎ立ててるんだ?銀のスプーンでも握ってたのかい?」

安産だったとはいえ、今は休ませたいんだけど。

セロラには余計な不安を与えないよう、笑みを作って産婆の方へ歩いた。

……これは……

「ねぇ?セロラ?君はメルクリオス家と親戚ではなかったよね?」

「……?あんな貴人あてびとと親戚な訳無いじゃない。何があったの?」

おいらは、きれいになった赤ん坊を抱いて、セロラの元に戻った。

「……え?」

自分の腕に渡された、赤ん坊にセロラはただ目を丸くする。

ゆっくりとおいらに、目を合わせてくるセロラ。

「何で……」

二の句が継げないでいるセロラ。

産婆は、じゃ、後は夫婦で話し合いな、後片付けもそこそこに足早に家を出ていった。

バタン…と、音はしたけど背中で聞いた。

不貞?なんてあり得ないのは分かってる。

貴人メルクリオスさんは確かに気さくではあるけれど、気安くはない。

だいたい、メルクリオス家の主人は、何年か前に亡くなっているし、新しい主人もまだ幼子だ。

だからこそ、何故、メルクリオス家の証しでもある、『銀髪』の子供がここにいるのだろう。

けど、おいら以上にセロラが戸惑っている。

折角、安産で産まれたのに、これではちっとも休まらない。

ぐるぐると言葉を探して、ようやっと見つけた言葉は、

「キレイな子供だね…」

という、なんとも頓珍漢な言葉だった。

セロラとおいらの子供に間違いないんだ。

それだけは、間違いないんだ。

おいらは自分に言い聞かせた。

ぷつっ、と音が聞こえた気がした。

セロラがぽろぽろと泣きながら笑ってる。

「そうね、あたしたちには勿体ないくらいキレイだわ」

セロラも、自分に言い聞かせてる気がする。

「ねえ?セロラ。提案なんだけど、テルルの町に引っ越そうか。さっきの産婆の様子を見るに、きっと噂話のネタにされてる。誰も知らない所で、三人で暮らそう?」

「ラシン……」

子供を産んだばかりの女性に聞くことじゃないのは分かってる。

でも、ここにいちゃいけない気がしたんだ。

─────

 テルル───真ん中の街。

………違和感が付きまとう。

何だろう?

認知の齟齬。

予測の認識エラー。

なんだ、それ?

───

移住の相談を役場に持ち掛けてみる。

逃げ出す訳じゃない。

ちゃんと手続きは踏もう。

ついでに、住民登録はしておこう。

ちゃんと、生まれたことを認めておこう。

「今日は何のご用ですか?」

小さな少年に声をかけられる。

五-六…七歳くらいか?

濃い銀色の髪。

「え?メルクリオスさん?!」

「そうですよ?クリストファー・メルクリオスです。僕はまだ、お仕事は出来ないので、ご案内します」

「では…住民登録…子供が生まれたので登録したいのだけど」

「それは、おめでとうございます!こちらです!」

メルクリオス家は、街の全てを整えているのだから、役場にいても間違いないだろう。

学校は…休みの時期か。

それで彼なりに家業を手伝っているのだろう。

窓口で子供の名前を登録して、移住について尋ねる。

「テルルでは現在、移住者を募っているので大歓迎ですよ。いつ頃可能ですか?」

思ったより、簡単に行きそうだ。

セロラに相談をしなければいけないので、一旦持ち帰ることにする。

───

「メルクリオスさんに会ったよ」

おいらはセロラに伝えた。

「へぇ…どうだった?」

「おいらたちの子供の方がキレイだと思った」

すると、セロラは目を丸くして、笑いだした。

「なにそれ」

「親の…欲目?」

「ぷっ…!くふふ」

「それと、引っ越しはわりと簡単そうだっけど、どうする?」

ふっと、セロラの目が光を失う。

ほんの、一瞬。

そして、おいらを見ると、

「そうなのね、良かった」

って、ほほえんだ。

「家も家具も用意されるから、身一つでも大丈夫らしいよ」

すると、セロラの目がまた泳ぐ。

ほんの、一瞬。

「そうなんだ」

「……行きたくない?なら、ここで暮らす?」

「分かんないけど…多分それは、ダメ。行かなきゃ行けないと思う」

「うん。そうだよね。多分、行かなきゃダメだ」

きっと、おいらの目も泳いでいたと思う。

そう、行かなきゃ行けないんだ。

───

おいらたちは子供に“セイレン”と名付けた。

二人して、他には考えられないと言わんばかりに。

ひとつのテンポをそのまま過ごして、おいらたちはテルルへと移住した。

用意された家は、回りに住む人がいない一軒家だった。

人が住んでいたみたいに整っているけど、人の気配はない。

セロラが無言で部屋を見回して、おいらと視線を合わせる。

認知と認識。

「やっぱり《《我が家》》は落ち着くわね」

認識と修正。

「そうだな。《《我が家》》だな」

おいらたちは、親の代から住み慣れた我が家で、セイレンを隠すことに決めた。

ジャンル・タグ

, , , , , , , ,

作品統計

👁️ 閲覧数: 6 👍 いいね: 0 📚 本棚登録: 0

作者について

有城 砂生

有城 砂生

理であそび 律にあやつる せつなゆたう はざま ワタシはログ。 律であそび 理をあやつる

👥 フォロワー: 3人

作者ページを見る