第1章 まだ止まっていない世界
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
世界は終わらない。 ただ、「止まらない」という前提が消えていく。 石油供給の揺らぎは、都市の機能を徐々に鈍らせた。 電車は遅れ、物流は滞り、棚は埋まらなくなる。 それでも社会は維持されているように見える。 だが、その維持には限界がある。 人は移動し、場所を選び、やがて線を引く。 内側に入る者。 外側に残る者。 その境界は、善悪ではなく「持続」のために存在する。 これは、終末の物語ではない。 持続のために切り捨てることを選び始めた世界の記録である。
本文
※本作はAI生成を含みます。
東京の朝は、いつも通り動いていた。
満員電車は時間通りに走り、コンビニは明かりを灯し、信号は律儀に色を変えていた。
相沢 恒一は、ホームに立ちながらスマートフォンの画面を見つめていた。
「国家備蓄石油、第2次放出を決定」
その見出しを読んでも、何も感じなかった。いや、正確には感じたのかもしれないが、その感情に名前がつけられなかった。
画面をスクロールすると、ガソリンの価格グラフが出てきた。二週間で三十円以上、跳ね上がっている。数字は正直だった。
隣で、サラリーマンが小さく笑った。
「まあ、まだ大丈夫でしょ」
誰に向けたわけでもない、独り言だった。
相沢は、その言葉を聞いていた。
安心ではなかった。祈りだった。
そして、自分も同じ祈りを抱えていると気づいた。
妹の顔が、ふと浮かんだ。
神代にいる妹、高瀬 陽子。山間の集落に、三年前から移り住んでいる。
「兄さんも、そのうちこっちに来たほうがいいよ」
半年前、そう言われていた。笑って流した。
いま、その言葉の重さが少しだけ変わっていた。
電車が来る。乗り込む。揺れる。
ディスプレイに「原油供給に関する懸念」という文字が流れ、すぐに明るい広告に変わった。
相沢は目を閉じた。
帰り道、コンビニに寄った。棚の一角が、薄かった。補充されていないのかもしれない。だが、前の客が缶詰を二つ買っていくのを見て、理由のある数に見えた。
これは、壊れるのではない。ある日、止まる。
その感覚だけが、静かに積み上がっていった。