第9章 減っていく
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
突如発表された「首都機能の出雲移転」。 日本中が混乱する中、それは遠いニュースのはずだった——地方の小さな町に暮らす遥にとっては。 しかし、カフェで働く日常の中に、少しずつ“変化”が入り込む。 移転関係者が現れ、人が動き出し、町の空気が変わっていく。 「選べる」という言葉に揺さぶられながらも、遥はまだ決断できずにいた。 やがて、周囲の人々が次々と出雲へ向かい、ついには店の店主・真琴までもが何も告げず去る。 残された遥は、初めて自分の意思で「行く」ことを選ぶ。 出雲で待っていたのは、“何もない場所”と、過酷な現実。 未完成の国家プロジェクトの最前線で、遥は肉体を削りながら現場に立つことになる。 そこで出会ったのは、過去の災害によってすべてを失い、「形に残すこと」に執着する現場責任者・真白。 彼女の背中に導かれるように、遥は“作る側”へと変わっていく。 しかしある日、現場事故が発生。 真白は他人を救い、その代わりに命を落とす。 悲劇の直後、それでも現場は止まらない。 「止めればすべてが止まる」という現実の中で、遥は問いを突きつけられる——逃げるのか、続けるのか。 そして遥は、再び立ち上がる。 真白の意志を引き継ぎ、自らが現場を回す側へと変わっていく。 一方その頃、東京でも静かに人材流出が進み、国家の重心そのものが移り始めていた。 これは、国家の転換点の物語であると同時に、 「選ばなかった人生」から「自分で選ぶ人生」へと踏み出す、一人の人間の物語である。
本文
※本作はAI生成を含みます。
変化は、静かに始まる。気づいた時には、もう進んでいる。
カフェ《灯》。昼過ぎ。いつもの時間。少し違う。
客が少ない。「……あれ?」遥が呟く。昨日より、明らかに少ない。たまたまかもしれない——そう思う。違和感は残る。
夕方。さらに少ない。常連の顔が、いくつかない。「今日、静かですね」遥が言う。真琴は少しだけ考える。「そうだね」気づいている。同じ違和感。
「なんか、減ってません?」遥が続ける。真琴はすぐには答えない。コーヒーを淹れながら、少しだけ考える。「減ってるかもね」はっきりとは言わない。否定もしない。その曖昧さが、逆に現実的だった。
翌日。同じ時間。やはり少ない。もう、偶然ではない。「……行ってるんですかね」遥が言う。どこへかは、言わなくても分かる。真琴は小さく頷く。「かもしれないね」——止めようのない流れ。
外。通りを見る。人はいる。見慣れた顔が減って、見慣れない顔が増えている。入れ替わっている。静かに。着実に。
午後。常連の一人が来る。久しぶりの顔に、少しだけ安心する。「こんにちは」遥が言う。男は少し疲れた顔で座る。「どうも」いつもの調子ではない。
「最近、来てなかったですね」遥が言う。男は少しだけ笑う。「バレるか。行ってきたよ」
遥は、すぐに理解する。「出雲ですか」男は頷く。「見てきた」
「どうでした?」
「何もなかった。人はいた。動いてた」
「……じゃあ」遥が言いかける。男は先に言う。「行くか迷ってる」正直だった。まだ決めていない。完全に外ではない。中に入りかけている。
「みんなそんな感じですよね」遥が言う。男は頷く。「そうだな。でもな——」声を落とす。「迷ってるうちに、席なくなる気がする」
その言葉。空気が変わる。席——限りあるもの。
「早い者勝ちってことですか」遥が言う。男は少しだけ笑う。「そんな感じだな。後からでも行けると思うけど——いい場所は、もう埋まる」
現実的な話。夢ではない。競争。それも始まっている。
遥は何も言えない。頭の中で、何かが変わる。〝いつか〟ではない。〝今〟の話になる。選ばないことも、選択になる。そして、その結果が出る。
男は立ち上がる。「また来るよ」扉が閉まる。——チリン
減っていく——人が。席が。時間が。すべてが、少しずつ。
「……どうする」声に出た。もう、考えるだけでは足りない。決める必要がある。近いうちに。