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あらすじ
<p>2</p><p>ちりちりん……</p><p> 断続して聞こえる鈴の音。</p>
本文
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ちりちりん……
断続して聞こえる鈴の音。
フィリーノの全身が玉の汗で燐光を放つ。
閉ざされない両脚の中央に咲く、ぷっくりと紅い花芯。
本来あるはずもない光の糸が伸び鈴を操り、音が鳴る。
これも、やつの奇術なのか?
フィリーノの忍ぶ喉と、
カヴァリーロの耐える息と
ビエスの感嘆と、
鈴の音と、奇妙な瑞音と。
部屋の中で交叉する。
「うっ…!」
カヴァリーロのふぐりに、滑った感触が走る。
狐の頭が、股間にある。
「そろそろ、次の段階に移ろうか。
フィリーノが辛そうだよ」
どの口が!と思うが言葉にならない。
ちりん。
ずるっと、カヴァリーロの陽物が圧迫から解放され、再び肉にからめ捕られる。
山羊男が、フィリーノの体を揺らし、カヴァリーロの陽物を出し入れさせる。
フィリーノの乳房が揺れ、乳首のイヤリングも揺れる。
しゃらん、しゃらん、しゃらん。
髪が乱れ、泣き腫らした目から涙が散る。
嫌になるほど呆れ果てる、劣情。
ちりん、ちりちりん。
ぬろっ……
制御できない血潮が、カヴァリーロの肉の先端にぞわぞわと集う。
「ぐっ、くそぉ!すまない、フィリーノ!」
カヴァリーロが謝罪と共に吐精する瞬間、カヴァリーロの陽物が圧迫から解かれる。
迸る精が、フィリーノの腹にどくどくと注がれる。
狐の女は、カヴァリーロの股座から即座に姿を消し、傍らに立っている。
「腸内に精を放つと、フィリーノの体に良くないからね」
ビエスはフィリーノの腹上に無残に放たれた精を指でなぞると、それは歪真珠のように固まった。
「これで君も、等活だねえ……なんてね。まだ人に成る前だもの、君に罪はないよ。誰もがやってることだ」
異様な光が金細工の土台と変容し、四つになった珠を嵌め込んだ装飾品――首飾りに変わる。
「んー。やっぱり僕は、まだまだだねえ……いる?」
フィリーノへ促すが、彼女は虚ろに首を振る。
「おや?……くっ、だよねえ。じゃあ、僕が貰うよ?土台の方は兎も角、この歪真珠はレオナール様がお好きそうだ。青白い乳濁色の奥で、 緑や紫がぬめっと揺れてて。ん、この土台は野暮かもしれないね」
ビエスがそう言うと、首飾りは宙に消え、フィリーノの腹から精も跡形もなく消えていた。
「……下衆……」
カヴァリーロが思い付く悪態をビエスにぶつける。
フィリーノが眼を見開いて首を振り、だめと、唇が動く。
だめ?何がだ?
カヴァリーロが戸惑っていると、
「フィリーノはいい子だねぇ……それに比べてカヴァリーロ。だめだよ、そんな汚い言葉を使ったりしたら」
ぴっ、とビエスは乳首のイヤリングを外す。
「……っぐっ!」
それでも声を上げないフィリーノ。
「そうだね、フィリーノだけ楽しむのも可哀想だから、カヴァリーロも一緒にゲームをしようか」
イヤリングを乱暴に外した乳首に、ビエスが爪を立てる。
――――
一週間前のメティイースト。
村の入り口に、ビエスと二つの影は沸くように現れた。
「どうされましたか?」
フォルティオと村を回っていたカヴァリーロは声を掛けた。
「ここはメティイースト?」
ビエスは訊ねた。
「ええ、そうです。……お客様ですか?紹介状はお持ちでしょうか?私は領主の息子でフォルティオと言います」
陽光を吸い込んだような土の褐色と、
その光を跳ね返すような瑞々しい白。
フォルティオとカヴァリーロの、二つの異なる生命力が並び、調和している様を、ビエスは細めた目の奥でじっと見つめていた。
「ないけれど、村には入れないのかな?」
「いえ、歓迎しますよ。こんな不便なところへご足労様です。村に宿は無いので、私の家へご案内しますね」
フォルティオが言った。
「得体の知れない者を、領主の家に案内するのかい?」
訝しげにビエスは問う。
「村に来ていただいた方は、皆歓迎しますよ。こんな不便極まりない所まで、態々おいでいただけるのですから」
フォルティオとカヴァリーロが合唱のように声を揃える。
「些か、人が善すぎやしないかい?」
「なら、あなたは悪い人なんですか?」
カヴァリーロは素直に聞いた。
「どうだろう?善くはないのかもね」
くるくると指を回しながら、他人事のようにビエスは言った。
「なら、いい人だ。あ、ここです。少々お待ちください」
館に入るフォルティオを眺めながら、ビエスはひとりごちた。
「いいねぇ…実にいい」
そんなビエスの呟きをお構いなしに、カヴァリーロはせっせと我が身の身繕いしている。
扉の隙間から愛らしい少女が覗き、フォルティオと共に扉を開ける。
しゃらん。
涼やかな鉄の音がした。
「初めまして、領主が娘、フィリーノです。この度はこのような遠い所へまで足をお運び頂きありがとうございます。生憎お手伝いの方は帰りましたが、お三方であれば、充分とはいかないでしょうが、精一杯おもてなしさせて頂きます」
「それはありがたい。僕はビエス。こいつらはルーモヴェーロ。我が主レオナールが望みで、これを直せる方を探していたのです」
ビエスが鞄から木箱をとりだす。
「この村の意匠ですね。ほら」
フォルティオが箱の裏を指差すと、全体の細工に馴染んだ、村の名前を織り込んだ意匠がある。
「それは僥倖だ」
ビエスが箱の中から、丁寧に布にくるまれたものを取り出す。
「これなのですが」
しゃらん。細い銀の冊を束ねただけにも見えるのに、品良く洗練され意匠の風鈴が取り出される。
「ヴェントクリングィーロ!」
フィリーノが眼を輝かせる。
「古めの型だな。……って、これは」
フォルティオが何かに気がついた。
「ああ。これ、うちのだな。爺さん辺りの品かな?」
カヴァリーロは、自家の意匠を指差した。
村のものも、自家のものも、当人でなければ見落としかねない、その存在を埋め込んだ意匠。
しゃらん。と持ち上げられた風鈴は、涼やかな音色を奏でる。
「……あら?」
「おや?」
「うん?」
「ええ、そうなんです。くぐもった音が混ざるのです」
眉を寄せ困惑顔のビエスに、繁々とヴェントクリングィーロを凝視していたカヴァリーロが答える。
「ああ、ここに、ほら何かこびりついてる。錆びかな。親父に頼んでみるよ」
カヴァリーロの言葉に、ぱあっとビエスの表情が、晴れる。
「それはありがたい。どうかお願いします。それと厚かましくて、僭越至極なのですが、新しいものを拵えて頂けませんか?我が主がこちらを自慢しすぎて。いえ、お断りはしていたのです。けれど、どうしても断り切れない方の耳にまで入ってしまったもので。何、応じて頂けるのであれば、金に糸目はつけません」
ビエスの捲し立てる様子に、本当に困られているのだろうと察したカヴァリーロは、
「代金だけで結構ですよ」と答えた。
「それでは申し訳ない」
と、暫くカヴァリーロと押し問答を続けていたが、ビエスが先に折れた。
「仕方ないですねえ。全く善良にも程がある」
ビエスはふっと微笑んだ。
「女神様みたいですね」
ビエスの笑みを見たフィリーノが漏らす。
「……僕が?」
きょとんとするビエスに、
「 あ、男性の方に失礼だったかしら。お優しくて、お綺麗で」
フィリーノは必死に取り繕う。
「光栄ですよ、お嬢さん」
ビエスは、フィリーノの頬にキスを落とした。
「……ちょっ、お客人!彼女は俺の恋人です」
「それは申し訳ない。つい嬉しくてね」
「これ以上は、お客人でも許しませんよ?」
と、言いながらカヴァリーロは微笑んだ。
「ところで、道すがら今晩の糧にと野兎を捕まえていたんだけど。お世話になる対価に、捌きたいのです。場所をお借り出来ますか?」
ビエスが言うと、深々とフードを纏った二人組の一人が、ぬうっと兎を出した。
「まあ、立派な兎」
「私が捌きますよ。お客人は休まれてください」
フォルティオが、兎を受け取ろうとする。
「いや、飛んでもない。この者たちで賄いますよ」
「遠慮なさらないで。ゆっくりお寛ぎください。旅程は大変でしたでしょう?」
やいのやいの言いながら、フォルティオは、ビエスたちを館に誘う。
フィリーノはカヴァリーロの顔を覗き込んで、
「カヴァリーロもお夕飯一緒に取る?」
と、訊いてきた。
「魅力的なお誘いだけど、これを親父に見せたいし、今日は遠慮するよ」
と、ヴェントクリングィーロの入った箱を見せる。
「そう、残念だわ」
と落ち込む様子のフィリーノの頬に、カヴァリーロは口付けを落とす。
先程、ビエスの口付けた場所。
「まあ、やきもちかしら?」
「そうだよ。美しいものが好きな君が、取られないようにね」
「そんな浮気者ではなくってよ?」
「勿論、信じてるよ」
別れがたい二人は、もう一度お互いの頬を合わせた。
「また、明日ね」
「明日」
次の日から、フォルティオの顔を見ていない。
――――
「あの日のロワイヤルは美味しかったよねぇ。フォルティオの包丁捌きは見事だったよ。調理した兎って、あんなにも美味しいんだねぇ……ルーモも見習うべきだよ」
赤い舌が、上唇を舐める。
「で、ね?フォルティオが捌いて、フィリーノが、調理してくれたから、僕らの出番はすっかり無くなってしまったんだ」
「それが…?」
「料理は美味しかったから、不満はないよ?ただ、結局、僕らがお礼できてないじゃない?」
ビエスは、未だフィリーノについた、もう片方のイヤリングを爪弾きながら、カヴァリーロの腕の拘束を解く。
腕の自由を獲たカヴァリーロは即座に、執拗にイヤリングを弄るビエスの指を弾く。
呆気に取られるビエスの顔が忌々しい。
「カヴァリーロのおいたは、フィリーノに収めて貰うかね。そうだね……これをピアスにするってどう?」
しゃらん。とイヤリングを指で鳴らすビエス。
ひっ!と喉を鳴らすフィリーノ。
カヴァリーロはイヤリングを外そうと手を伸ばす。
「何をバカなことを言ってるんだ?」
「くっ、冗談だよ。そんな可哀想なことはしやしないよ。僕、痛いの嫌なんだ」
手こそ自由にはなったものの、
手しか自由になっていない。
依然身体は椅子に縛られ、カヴァリーロの手はイヤリングまで届かない。
「どうしようかな……?」
これ見よがしに、しゃらしゃらと胸のイヤリングを揺らすビエス。
ちりん。
カヴァリーロの鼻先に、フィリーノの花園が突き付けられる。
咄嗟に顔を背け、目を瞑るカヴァリーロに、ビエスが言う。
「可愛らしいねぇ。首や耳まで真っ赤じゃないか。肌が白いから余計に際立つ。フォルティオじゃこうはいかないよね。でもね――背けたらダメだよ?」
ビエスはカヴァリーロの頭をぐいっと捻ると、フィリーノの股間が視界に入るように固定する。
なんて力なんだ。
力なんて無さそうな、か細い指はしっかりとカヴァリーロの頭を押さえつけ、首を振ることも出来ない。
「ちゃんとご覧?君たちは結婚するんだろう?そのあかつきには、この孔にずぼずぼと、その君の股間の逸物を出し入れするんだよ」
頑なに目を閉じていたカヴァリーロだが、ぬちょぬちょと、耳に入る瑞音に薄目を開く。
ちりん!と鈴の音が響く。
ビエスの指が、フィリーノの花門に入っている。
ほたほたと、溢れ出る水。
「ん?僕としたことが、下劣な物言いをしてしまったね。失敬。お詫びだよ」
孔から抜き出した指に、絡むような液体を見せ付けて、カヴァリーロの口に捩じ込み、舌に擦り付ける。
「処女の蜜のお味はどう?済まないね。ちょっと焦っちゃった」
ビエスの細く長い指は、カヴァリーロの喉まで届きそうだ。
「それとね、心して貰いたいけど、フィリーノが滴ってるのは、快感では無いからね、安心おし。身体っていうのは、こういう反応をするもんなんだ。悲しいよね」
カヴァリーロの口中を蹂躙して、ゆっくりとビエスの指が引き抜かれる。
「ぐぇ……ごぼっ、ごっ」
つっかえの無くなったカヴァリーロの喉がえずく。
「ごめん、ごめん。大丈夫?」
「……大丈夫な訳ないだろう。頼む、フィリーノを離してくれ。余りにも痛ましい」
ふうっ、とビエスは大仰な溜め息をついた。
「凛々しいねえ。こんな状態でも、きちんと恋人を慮る。ぼくは嬉しいよ」
と、ビエスはカヴァリーロの剥き出しで項垂れた陽物の先を、指で弾く。
「……っう……!」
その刺激に、僅かにその先を擡げるカヴァリーロの陽物。
ちりん。
と、カヴァリーロの鼻で鈴が鳴らされる。
ゆっくりと、フィリーノの身体がカヴァリーロの上に下ろされる。
「ほらほら、支えないと倒れちゃうよ」
カヴァリーロの脚を跨がって据えられる、フィリーノの背中に周章て手を廻す。
初めて触れる、フィリーノの肌。
ああ、嫌だ。
こんな時なのに。
こんな場面なのに。
汗ばんでしっとりとしたフィリーノの、しなやかな背中に逆上する己を感じる。
「恥じることは無いよ。それが人間だ」
それまでのからかうような声色とは、別人のようなビエスの声。
「さあ、宴を始めようか」
終わりではなかったのか?
カヴァリーロとフィリーノは、落胆した。
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