avソムリエの50歳童貞があるav動画を見た瞬間異世界に飛ばされて、 賢者になった。
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
<p>五十歳。</p><p>世間では「いい歳をした大人」と呼ばれる年齢だが、佐倉誠一は少し変わっていた。</p><p>彼は筋金入りのAV研究家だった。</p>
本文
五十歳。
世間では「いい歳をした大人」と呼ばれる年齢だが、佐倉誠一は少し変わっていた。
彼は筋金入りのAV研究家だった。
ただし、見るだけではない。作品の構成、照明、編集、演者の表情、カメラワークを分析し、レビューサイトに何万字もの考察を書き続けていた。その界隈では密かに「AVソムリエ」と呼ばれている。
しかし彼には、もう一つ特徴があった。
童貞である。
恋愛経験もほとんどなく、人生の情熱をすべて映像研究に注ぎ込んできた結果だった。
ある雨の夜。
誠一は中古ショップで手に入れた謎のディスクを再生した。
ラベルにはただ一言。
「究極作」
そんな曖昧な題名に興味を引かれたのだ。
映像が始まる。
画面には見たことのない光景が映っていた。
構図は完璧。
色彩は芸術的。
カメラ移動は滑らかで、まるで映像そのものが意思を持っているかのようだった。
「なんだ……この完成度は……」
誠一は震えた。
長年の研究人生で一度も見たことのないレベルだった。
そして次の瞬間。
画面の中央に現れた白い光が部屋全体を包み込んだ。
「なっ——!?」
世界が反転する。
視界が白に染まり、気づくと彼は草原の真ん中に立っていた。
空には二つの月。
遠くには巨大な城。
どう考えても日本ではない。
「異世界……?」
その言葉が頭に浮かんだ瞬間、白いローブを着た老人が現れた。
「おお、召喚は成功した!」
「誰ですか?」
「私は王国宮廷魔導士長。勇者を呼ぶはずが、少々手違いがあってな」
「手違いで人を呼ばないでください」
老人は申し訳なさそうに咳払いした。
だが次の瞬間、彼の顔色が変わる。
「待て……お主の頭の中……なんだこの膨大な知識は!」
「知識?」
「人間観察、心理分析、構図理論、演出論、感情誘導、物語構築……」
老人は青ざめた。
「普通の人間が持つ情報量ではない!」
それは誠一が三十年以上積み上げた映像研究の蓄積だった。
この世界では知識そのものが魔力に変換される。
膨大な分析能力を持つ誠一は、常識外れの魔力量を持つ存在として認識されたのである。
数日後。
彼は王立魔法学院に招かれた。
学生たちが解けなかった古代魔法陣を一目見て言う。
「導線が悪いですね。ここをこう配置すると理解しやすいです」
魔法陣が輝いた。
誰も発動できなかった伝説魔法が成功する。
王国中が騒然となった。
さらに魔物討伐でも活躍した。
仲間たちが敵の行動を読めず苦戦する中、誠一だけは違った。
「目線の動きと体重移動で次の攻撃が予測できます」
すべて見抜いてしまう。
長年培った観察眼が異世界では未来予知に近い能力となっていた。
半年後。
彼は正式に「賢者」の称号を授与された。
王は玉座から告げる。
「誠一よ。そなたほど知恵ある者を私は知らぬ」
大広間から拍手が湧き起こる。
だが誠一は少し複雑な顔をしていた。
授与式の後、弟子の少女が尋ねた。
「先生はなぜ賢者になれたんですか?」
誠一はしばらく考えた。
そして苦笑した。
「遠回りだったんだと思う」
「遠回り?」
「みんなが恋愛したり遊んだりしている間、私は映像ばかり研究していたからね」
「後悔してるんですか?」
誠一は空を見上げた。
二つの月が静かに輝いている。
「少しはね。でも無駄じゃなかった」
少女が首を傾げる。
誠一は笑った。
「人生のどんな経験も、どこかで役に立つらしい」
その言葉に少女も笑った。
かつて日本で「変わり者」と呼ばれた五十歳の男は、異世界で最高の賢者となった。
そして今日もまた、古代文献を片手に真剣な顔で研究している。
知識を愛した男は、世界が変わっても変わらない。
ただし彼は今でも独身である。
王女からの求婚状が机の上に山積みになっていることを、本人だけがまだ知らなかった。
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