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運命の彼女

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/6/13 📝 2,397文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

駅への道すがら、偶然拾い上げたパスケース。それが凛花(りんか)との出会いだった。驚くほど価値観が似ていて、まるでパズルのピースが嵌まるように心を通わせていく二人。―― 穏やかな時間 ―― 優しい笑顔 ―― そして不意に告げられた想い 僕たちは『魂が似ている』者同士として、寄り添うように付き合い始める。季節が移ろい、三回目のデート。抜けるような青空の下、彼女が微笑んで手渡してくれたのは、手作りのお弁当だった。「趣味が合う貴方ができて、本当に嬉しい」彼女のその言葉の、本当の意味。お弁当箱の蓋を開けた瞬間、僕の『運命』を銀色に染め始める――。

本文

 僕には最近、彼女ができた。

 名前は、凛花(りんか)という。

 春の陽だまりのような柔らかい笑顔を見せる、とても可愛くて優しい女性だ。

 自分のような男に、こんな運命が用意されていたのかと、毎晩ベッドの中で神様に感謝せずにはいられないほどだった。

 出会いは、あまりにも唐突で、劇的だった。

 駅へ続く賑やかな大通り。

 僕の数歩前を歩いていた彼女が、バッグからスマートフォンを取り出そうとした瞬間、指先に引っかかったのか、革製のパスケースが滑り落ちた。

 僕はそれを拾い上げ、すぐに彼女を追いかけた。

「あの、落としましたよ!」

 声をかけると、彼女は肩をびくつかせて一瞬驚いた表情を見せた。

 だが、僕が差し出したものに気づくと、パッと花が咲くような笑顔に変わった。

「あ……! ありがとうございます。これ、大事なものだったんです。本当に助かりました」

 彼女は胸元でパスケースを抱きしめるようにして、何度も頭を下げた。

 ちょうどお互いに時間に余裕があったことも、運命の悪戯だったのかもしれない。

 丁寧にお礼を言いたいという彼女の申し出に甘え、僕たちは近くのコーヒーショップへ入ることになった。

 窓際の席で、琥珀色のコーヒーを挟んで向かい合う。

「あの、変なことを聞くようですけど」

 彼女は少し首を傾げ、カップの縁を指先でなぞりながら言った。

「趣味とか……お休みの日は何をされているんですか?」

 そこからの時間は、魔法にかかったようだった。

 たわいもない雑談から始まった会話は、驚くほど深い部分で共鳴した。

 好きな映画、音楽、休日の過ごし方。

 何より、物事を見る時の視点が、驚くほど似通っていたのだ。

「こんなに初対面で意気投合したのは、私、初めてです」

 彼女は少し頬を染め、恥ずかしそうに笑った。

「僕もです。こんなに話が弾むなんて、思ってもみませんでした」

 僕たちは、ごく自然な流れで連絡先を交換した。

* * *

 それから、何度か会うようになった。

 彼女と過ごす時間は、凪いだ海のように穏やかだった。

 映画を観に行ったり、古本屋を巡ったり。

 それはデートというよりは、どこか『魂が似ている仲間』との語らいに近い感覚だった。

 僕は、この心地よい関係が壊れることを何よりも恐れていた。

 だから、自分の恋心を胸の奥に仕舞い込み、彼女の『良き理解者』として振る舞い続けた。

 だが、季節が一つ進もうとしていたある日の夕暮れ。

 公園のベンチで、街灯が灯り始めた頃だった。

 彼女が不意に僕のコートの袖を、指先で小さく掴んだ。

「……あの、私」

 彼女の声は微かに震えていた。

「仲間としてじゃなくて、その。隣にいてもいいですか? これからも、ずっと」

 夕闇の中で、彼女の瞳が潤んで揺れていた。

 その真っ直ぐな告白に、僕の心臓は跳ね上がった。

 もちろん、断る理由なんてどこにもなかった。

 そうして僕たちは、正式に付き合うことになった。

* * *

 彼女と三回目のデートの日。

 空は抜けるように青く、穏やかな風が吹いていた。

 今日もお気に入りの作家の話や、最近見つけた不気味な都市伝説の噂などで、会話は絶え間なく続いていた。

「今日は天気がいいから、あそこの大きな公園に行きませんか? お金もかからないし」

 彼女の提案に、僕は快諾した。

 広い芝生の上にレジャーシートを広げ、木漏れ日の中でくつろぐ。

 お昼時になり、僕が「どこか近くに食べに行こうか」と尋ねると、彼女はいたずらっぽく微笑んで、バッグから二つの包みを取り出した。

「実はね、今日はお弁当を作ってきたんです」

「えっ、本当? 嬉しいな。凛花の手料理が食べられるなんて」

 僕は子供のように喜んだ。

 彼女は「そんなに期待しないで」と言いながら、一つのお弁当箱を僕に手渡した。

「はい、こっちが貴方の分」

 僕はドキドキしながら、丁寧に結ばれた包みを解いた。

 蓋に手をかけ、ゆっくりと持ち上げる。

 唐揚げだろうか、それとも出し巻き卵だろうか。

 色とりどりの具材を想像していた僕の視界に、強烈な色彩が飛び込んできた。

 ―― 銀世界。

 そこに詰まっていたのは、眩しいほどに光り輝く白米だけだった。

 おかずも、付け合わせも、彩りのパセリ一つない。

 炊き立ての、一粒一粒が完璧な形を保ち、鈍い銀色の光を放つ銀シャリ。

 それが、四角い箱の隅々まで、隙間なく敷き詰められていた。

「……凛花?」

 おかずの箱が別にあるのだろうか。

 そう思って彼女の方を見ると、彼女は動かずに僕を見つめていた。

 唇はただむすばれ、目は全く笑っていない、無機質な笑顔。

 彼女も、自分用のお弁当箱の蓋を開けた。

 ―― やはり、視界は銀色で塗り潰された。

 雲一つない青空の下。

 お弁当箱の中から放たれる、炊き立ての銀シャリの輝きが、僕たちの瞳を不気味な銀色に染め上げていく。

 彼女は、その『無表情の笑顔』のまま、割り箸を割った。

 そして、銀色の塊を迷いなく口へと運び、咀嚼し始める。

 おかずを欲しがる様子も、喉を詰まらせる様子もない。

 ただ、機械的に、銀シャリを胃へと送り込んでいく。

 僕は、凍りついたまま彼女を見つめていた。

 その時、いつか彼女が楽しそうに語っていた言葉が、呪いのように耳の奥で蘇ってきた。

『私ね、実はホラー作品って大好きなんですよ』

『引かれちゃうかなって思って、なかなか言い出せなかったんですけど』

『趣味が合う貴方ができて、本当に嬉しい』

『特に、私が一番好きなのが……』

『狂人のホラーなんです』

『怖いっていうより、何故か―― 共感してしまうんですよね』

 僕を見つめる彼女の瞳は、今や完全に銀色に濁っていた。

 彼女の顎が動くたびに、銀色の光がぎらぎらと揺れる。

 僕たちの『趣味』は、本当に合っていたのだろうか。

 彼女の言う『共感』とは、一体どのことなのだろうか。

 震える手で、僕も割り箸を取った。

ジャンル・タグ

恋愛, 日常, 衝撃の結末, 愛のカタチ, 事故, 彼女, 運命, 純愛, 秘密, 偶然

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作者について

影灯レン

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