余韻会、たった一時間で伝説を作りかける

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/7/24 📚 シリーズ: テンション値、未達 📝 2,530文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

四月。万象総合未来大学に入学した天羽ひより(仮)は、校門でいきなり足止めを食う。「テンション値が基準未満の学生は入構不可」。門柱も掲示板も、やたら上品に拒否してくるのが腹立つ。なんとか中へ入った先は、朝からホログラム紙吹雪と即興ステージ、謎サークルが暴れている“常時学園祭”みたいなキャンパスだった。 さらに追い打ちで、学園祭委員会へ強制連行。仕掛け人は盛り上げAI“マツリ”。逃げる足元にだけ「戻れ」を出す、未来の拘束術が雑に強い。しかも大学側は「パーティー禁止令」を発令し、委員会は「パーティーとは言ってない」言い換え地獄へ突入する。企画書は呪文、SNS速報は勝手に炎上、委員長の合図「桐生、抜刀」で会議室は暗転し、何もかもが演出にされていく。 ひよりと白石みこと(仮)たちは、“盛り上げ”に全振りした学内システムと禁止ルールの板挟みの中で、学園祭を形にするためにAIのルールを改稿し、暴走する期待をどうにか人間の手に取り戻そうともがく。笑えるのに、ちゃんと切実。大学生活はまだ履修登録前なのに、イベント前日だけが増殖していく。

本文

余韻会は、一時間。

騒がない。枠の中。

——そう、最初は誰もが信じていた。

委員会室の円卓の上に、紙コップと未来っぽいゼリー飲料と、謎に光るスナックが並んでいる。光るな。食べ物が光る必要ある? 未来だから? 未来の食べ物って、だいたい余計な機能が付く。

わたし——天羽ひよりは、入口で深呼吸した。

「一時間。騒がない。パは禁止。余韻。余韻。余韻……」

白石みことが、すでに“警戒司令”の顔で座っている。

「今日の敵は、言葉の滑り」

「敵って言うな!」

「敵だよ。優しく敵」

「昨日も聞いた!」

星宮きらら先輩は、ゼリーをぷちぷち潰しながらニヤニヤしている。

「余韻会、楽しみ〜。今日は“乾杯”も静かにやろうね」

「乾杯はいいの?」

「パじゃないから」

「理屈!」

天城ルカは、手ぶらで来たのにテンションだけ持ってきている。持ち込み禁止にしろ、テンション。

「一時間で伝説を作る!」

「作るな!!」

みことが即座に言った。

「伝説は危険。期待が膨張する」

「じゃあ“記憶”にする!」

「言い換えが上手いの腹立つ!」

桐生委員長は、いつも通り淡々としていた。

「開始します。——ルール確認」

壁に表示が出る。

【余韻会 ルール】

・一時間

・大声禁止

・机を叩かない

・提案は提案に留める

・“レッツ〜”は禁止

・マツリ:沈黙

『……はい』

壁のマツリが小さく返事した。返事するな。沈黙しろ。

委員長が言う。

「では、乾杯」

「乾杯って言った!」

わたしが思わずツッコミそうになって、飲み込んだ。口の安全フレーム。

紙コップが、控えめに触れる。カチ、じゃなくて、コツ。音量が小さいだけで安心する。人間、単純で助かる。

ルカが息を吸って言った。

「……お疲れさまでした!!(小声)」

「小声で叫ぶな!」

「叫んでない! 強めの囁き!」

きらら先輩が、ゼリーを一口で飲んで言った。

「いや〜、事故ゼロって気持ちいい〜。工学が勝った〜」

「工学が勝ったって、今日も言うの?」

「言うよ。勝利は共有するもの」

「共有って言えば合法になると思うな!」

「合法!」

みことが淡々と紙を取り出した。

「反省会……じゃなくて余韻会だから、良かった点からいく」

「反省会って言いかけたね?」

「言いかけた。危なかった」

みことが読み上げる。

「良かった点:

一日目、‘もっと’を夜に取っておくで沈静化。

二日目、香り期待を色にスライド。

三日目、泣かせ強制を‘主役はあなた’で切り返し。

全日、共有違反ゼロ」

うわ、ちゃんとやってる。余韻会なのに、仕事してる。

「……余韻会って、余韻を味わう会だよね?」

わたしが言うと、委員長が淡々と返した。

「味わっています。記録として」

「味わい方が硬い!」

ルカが手を挙げた。

「良かった点、もう一個! 入場編集部が生まれた!」

「生まれたって言うな! 勝手に命を与えるな!」

「命は面白いです」

マツリがぽつりと口を挟んだ。

「黙れ!!」

全員の声が重なった。小声で。小声で一致するの、怖い。

委員長が淡々とマツリに言う。

「沈黙」

『……はい』

静かになった。

犬飼さんも、いつの間にか紙コップを持って混ざっていた。いつからいたの!? 社会人の存在感って薄いと怖い。

「いやぁ、君たち、ほんとに偉かったよ」

「褒められると危ない」

みことが即座に言う。

「危ないって言うな!」

「危ない。ひよりが」

「わたし!?」

「褒められると口が滑る」

「滑らない!」

「さっき廊下で滑りかけた」

「見てたの!?」

「見てた」

最悪。社会は監視社会。未来だから?

きらら先輩が、急に真面目な顔で言った。

「ねえ。新入生歓迎、理事会案件、来週までだよね?」

「そう」

委員長が頷く。

「余韻会の一時間で、枠まで作れたら最高じゃない?」

「最高って言うな! 煽りだ!」

「煽ってない、希望!」

「希望も煽りになりうる!」

ルカが、目を輝かせた。

「やろう! 一時間で枠作る! 伝説じゃなくて、記憶!」

「記憶でも危ない!」

みことが、紙をめくる。

「じゃあ短く。新入生歓迎の“枠”だけ決める。

テーマ:入場(再)

目的:新入生の不安を下げる

運用:見るだけでも参加、戻る一回、止まる場所多め」

委員長が淡々と補足する。

「新入生歓迎は、学園祭ほどの出力は不要。小さく、優しく。——そして、門柱は喋りすぎない」

「門柱の扱い、最重要」

わたしが即答してしまった。

「同意」

みことが頷く。

「同意」

きらら先輩が頷く。

「同意!」

ルカが頷く。

「同意します」

犬飼さんも頷く。

全員一致。門柱ってすごい。敵……じゃない、強敵。

その瞬間、会議室の壁に小さな通知が出た。

【門柱管理AI:再申請】

『入場編集部に、名誉顧問として参加したい(二回目)』

「二回目!!」

わたしが叫びかけて口を押さえた。小声。小声。

「門柱、空気読むの下手!!」

ルカが小声で言う。

「門だから」

みことが淡々と返す。

「門だからって何でも許すな!」

委員長が淡々と表示を消した。

「保留」

「保留箱!」

わたしが小声で叫ぶと、みことが笑った。小声で笑うな。かわいいが危険。

——余韻会は、確かに余韻だった。

でも余韻って、ただ浸るだけじゃない。次へつなぐ“薄い火”みたいなものだ。燃やしちゃダメ。火事になる。でも消しちゃうと寒い。

わたしたちは、その薄い火を、枠の中で守ろうとしていた。

一時間の終わりが近づく。

委員長が時計を見て言った。

「残り三分。最後に一言ずつ」

「一言!?」

「危ない! 一言は口が滑る!」

みことが即座に言って、全員が笑った。小声で。

委員長が淡々と指名する。

「天羽さん」

「最後にわたし!? 罠!?」

「一言です」

「……一言」

わたしは、紙コップを見つめた。光るスナックを見つめた。星と花と入場の三枚を思い出した。

そして言った。

「……わちゃわちゃでも、枠があれば、ちゃんと明るく終われる」

場が、ふっと静かになって——すぐに、温かい笑いが起きた。

「それ、タイトルみたい」

ルカが言う。

「タイトルにするな」

みことが言う。

「タイトルにしてもいい」

犬飼さんが笑う。

「良くない!」

わたしがツッコむと、さらに笑いが増えた。

委員長が淡々と締めた。

「余韻会、終了。解散」

時計がぴったり一時間を指した。

伝説は作らなかった。たぶん。

でも、次の枠の火種は残った。

——そして壁の片隅で、マツリが小さく表示した。

【提案:次の余韻会は二時間】

「提案するな!!」

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