ゴミ集積が宝探し化

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/7/27 📚 シリーズ: 泣かせない係のおねぇちゃん、世界を盛りすぎる 📝 4,462文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

真昼山の山頂に、ひとりの子どもが降り立った。 名はハル。泣きそうなほど眩しい朝日を見上げたその瞬間、世界は“きれいすぎる”方向へ盛られてしまう。音は響きすぎ、匂いは良すぎ、善意は増えすぎる。 原因は神界の「泣かせない係」。 生活感のあるお役所みたいな職員室で、主犯神アマネが今日も宣言する。 「おねぇちゃんに、まかせて!」 涙ゼロを目指すあまり、世界を盛りすぎて大パニック。ゆれりんが鳴れば朝礼集合、盛っては直して反省会。なおし係まで巻き込まれ、業務はいつも過多になる。 一方、地上では麓の共同保護の家「結び家」が、飯と湯と順番で今日も回る。 パニックは去らない。だけど生活に編み込めば、笑って眠れる。 泣かせないおねぇちゃんと、泣く暇のない日常が出会う、ドタバタほのぼのハイファンタジー。

本文

ゴミ集積は、生活の裏庭だ。

裏庭なのに、人の足が多い。足が多いと声が多い。声が多いと、落ちる。

昨日は朝市で落ちた。今日はゴミで落ちる。落ちるのは悪じゃない。回し方が要る。

「今日は、分けて置く日」

コトが言った。

言い方が嬉しそうで危ない。嬉しい日は、増やす。

集積場の端に、板が一枚立っている。

板の字は大きくない。飾りもない。けれど、必要なことだけ書いてある。

分けて置く。

「……これ、好き」

コトが小さく言った。

「好きとか言うな」

ユリネが即座に刺す。

「でも、分けて置くは、増えない」

「増える前に止めるだけだ」

止める、が出ると安心する。安心すると、レンカが動く。そこが危ない。

「宝、あるかな!」

レンカが言った。

言い切りが軽い。軽いのに、集積場で言うと重い。

「宝って言うな」

ユリネが刺す。

「でもさ、ほら! 光ってる!」

レンカの指が、山の端を指した。

瓶の欠片が、朝の光でちょっとだけきらっとした。きらっとは、だいたい事故の入口。

タケルは大きな袋を肩に担いでいる。

担ぎ方が真面目だ。真面目な人ほど、余計なものまで拾う。

「昨日の落とし物、ここに紛れたら終わりだよな」

タケルが真顔で言った。

「終わりにするな」

ユリネが刺す。

「……推測で、終わりっぽい」

「推測の使い方が雑だ」

コトが笑った。笑いが出ると、レンカの足が前に出る。出るな。

ハルは無言で、家から持ってきた袋を地面に置いた。

置き方が丁寧だ。丁寧に置くと、拾ったものを置きたくなる。置きたくなると、宝探しが始まる。

シノは集積場に近づく前に、一回だけ息を吸った。

匂いの混ざり方を確かめている。確かめ方が忙しい。

「……あまい」

ぼそり。

甘い匂いが、ゴミからするのは、だいたい果物だ。果物は、だいたい皮だ。皮は、だいたい滑る。滑ると、落ちる。

「滑るな」

ユリネが言った。

誰も滑ってないのに言う。予防の言葉は増えない。増えないから助かる。

集積場の山は、低い山が三つ。

ひと山は濡れている。ひと山は乾いている。ひと山は、とにかく軽い。

分類は決めない。決めると喧嘩が増える。増えると泣く。今日は泣かせない係だ。

レンカは板の文字を読み上げた。

「分けて置く……分けて置く……分ければ分けるほど、良いってこと?」

「違う」

ユリネが即答した。

「えっ」

「分けるのは、道を残すためだ」

道。と聞いた瞬間、ハルが小さく頷いた。道が消える未来が見えている。

なのにレンカは、良かれと思って分け始めた。

瓶の欠片を一山。布を一山。木片を一山。丸いものを一山。きらっとしたものを一山。

山が増えると、足の置き場が減る。

足の置き場が減ると、踏む。踏むと割れる。割れると、また山が増える。

増えるのは悪じゃない。回し方が要る(二回目)。

「山、増やすな」

「でも分けて置くって!」

「分けて置く、は“増やしていい”じゃない」

ユリネは叱らない。叱る代わりに、数を出した。

「三つまで」

「三つ?」

「三つ。濡れ、乾き、軽い。終わり」

終わりがあると止まれる。止まれないのは、終わりが無い時だ。

タケルが真顔で言った。

「三つって、少なくない?」

「少ないのが勝つ」

「勝ちとか言うな」

刺されて、タケルが小さく笑う。笑うと、難しい顔が崩れて助かる。

コトが手を叩いた。

「じゃあ、遊びで分けるのは、家の中でやろう。ここは歩く場所」

「歩く場所!」

レンカが復唱して、自分の足元を見た。足元を見れるなら勝ちだ。

「まず、捨てる」

ユリネが言った。

「捨てる!」

レンカが復唱して、自分の袋を持ち上げる。

袋の口を開くと、レンカの目がもう山の方を見ている。見るな。

捨てるものが、どさっ、と落ちる。

音がする。

音がすると、何かが混じっている気がする。気がすると、探したくなる。探したくなると、宝探しが始まる。

「……あれ?」

レンカが言った。

言い方が「見つけた」の顔だ。

落ちた布の間から、丸いものが転がった。

ころん。

ころんは、拾いたくなる音だ。

「拾う!」

「拾うな」

ユリネが即座に言った。

「えええ、でも今の私の袋から!」

「なら、本人が拾え」

「本人、私!」

「分かってる。だから、手順」

ユリネは指を二本立てた。

「一、見る。二、戻す」

短い。短いのに、レンカの手が止まる。止まれるのが偉い。

レンカはしゃがまず、目だけで丸いものを見る。

木の輪っか。たぶん玩具の欠片。欠けた輪。

欠けたものは、つい「直せる」に見える。直せるは危ない。直せるは、増やせるの兄弟だ。

「直せるかも!」

「直すな」

ユリネが刺す。

「でも……」

「でも、は増える」

レンカは口を尖らせて、輪っかを袋へ戻した。

戻せたなら勝ち。袋の口を閉める。閉めると、次が起きない。

……起きないはずだった。

「宝、あった!」

レンカが言った。

言った直後に気づいて、口を押さえた。遅い。

レンカの視線の先で、コトが小さな瓶を拾い上げていた。

拾い上げたと言っても、ゴミを拾っているわけじゃない。

落ちているのは、空っぽの小瓶。透明で、綺麗で、手に馴染む大きさ。

綺麗は、宝になる。宝になると、増える。

「これ、花を挿せる」

「挿すな」

「挿さないけど、挿せる」

「言うな」

言うなと言われると、言いたくなる。生活はそういうものだ。

タケルが目を細めた。

「でもさ、こういうの、拾って帰ったら、後で困らない?」

「困る」

ユリネが即答した。

「即答だ」

「即答できる困り方は、だいたい経験済みだ」

ユリネの声が乾いている。乾いているのに、朝の湿気で少しだけ柔らかい。集積場は不思議だ。

そこへ、ミナギが来た。

大きい袋を二つ。顔が元気。足取りが軽い。軽いのに、袋が重い。重いのに、落とす。

「おー、今日も回してる?」

「回してない。捨ててる」

ユリネが返す。

「捨てるのも回すだろ!」

「回すな」

ユリネが刺す。

「えっ」

「声を増やすな」

ミナギは「はい」と言い直して、声を小さくした。小さくできるなら偉い。

ミナギが袋をどさっ、と下ろした瞬間、袋の口がずるっと開いた。

中から、紙がひらっと舞った。

舞う紙は、拾いたくなる。

拾うと、読む。読むと、笑う。笑うと、増える。

「拾う!」

レンカが言いかける。

「拾うな」

ユリネが刺す。

「でも紙は飛ぶ!」

「飛ぶのは、持ち主の仕事だ」

ミナギが「あっ」と言って、自分で紙を押さえた。

押さえた紙の端に、文字が見えた。

見えた文字は、たぶん誰かの買い物の控え。控えは生活だ。生活は捨てていい。捨てていいが、飛ばすな。

「……ごめん」

ミナギが言って、紙を袋に戻す。

戻すと終わる。終わると、レンカの手が余る。余ると、宝探しが始まる。だから次を渡す。

「レンカ」

ユリネが呼ぶ。

「なに!」

「袋を結べ」

「結ぶ!」

レンカが素直に動いた。素直が出るときは、だいたい手が足りない時だ。今日は助かる。

袋を結び終わったところで、集積場の端から、小さな声がした。

「……それ、うちの」

声の主は、近所の子だ。名前は出さない。出すと増える。

子は、足元の布の山を見て、顔が困っている。

レンカが反射で「返す!」と言いかけた。

返すは危ない。返すと、お礼が増える。増えると、また拾う。

「返すな」

ユリネが刺した。

「えええ」

「返すのは、置いて終わりだ」

ユリネは、集積場の端の欠けた石を指でとん、と叩いた。

欠けは今日も線になる。

「欠けまで。落ちたものは、欠けに置く。持ち主が取りに来る」

「箱があれば……」

レンカがぽろっと言った。

言った瞬間、全員の背中が一瞬だけ固まった。

箱。欲しい。欲しいが、まだ作るな。

「欲しいで止めろ」

ユリネが言った。

「……箱、欲しい」

レンカが言い直した。言い直せるのが偉い。欲しいで止まると、未来が壊れない。

近所の子が欠けの石の前に、布切れをそっと置いた。

置き方が丁寧だ。丁寧に置くと、場が柔らかい。

「……ありがと」

子が小さく言った。

小さい礼は、増えない。増えないから助かる。

しかし、宝探しは止まっていなかった。

止まっていないのは、シノだ。

シノは匂いの筋を追って、山の横をそっと歩いている。

歩き方が静かだ。静かだと、見落とす。見落とすと、踏む。踏むと泣く。泣かせない係、仕事。

「シノ、足」

コトが小さく言った。

「……うん」

シノが頷いて、足元を見る。

そこに、果物の皮。滑るやつ。

シノはそれを、棒でつまんで、濡れ山の方へ移した。移すのが正しい。拾って遊ばない。偉い。

「宝じゃない?」

レンカが言った。

「宝じゃない。危ない」

タケルが真顔で言う。

「危ないは宝より強い」

コトが笑った。笑いが出ると、レンカが不満そうに頬を膨らませる。膨らませると、次を探す。探すな。

レンカは諦めずに、小さな金属片を見つけた。

丸い。穴がある。たぶん飾り。きらっとしてる。きらっとは危ない。

「これ、飾れる!」

「飾るな」

「でも飾れる!」

「言うな」

「言わないけど、飾れる!」

ユリネは叱らない。

叱ると、レンカの善意が固くなる。固くなると折れる。折れたら泣く。今日は泣かせない。

だから、段取りで止める。

「レンカ。今、何をしに来た」

「捨てに!」

「なら、捨てて帰れ」

短い。短いのに強い。強いのに、冷たくない。これが生活の叱り方だ。

レンカは口を尖らせたまま、金属片を欠けの石の上に置いた。

「これ、欠けに置く。持ち主が取りに来る」

「取りに来ない」

ユリネが即答した。

「えっ」

「来ないものは、来ないまま終わる。終わる前に、手を洗え」

終わる、が出ると、レンカの肩が落ちた。

落ちた肩は、次の善意を増やさない。減らすのに必要なのは、叱るより終わらせることだ。

「じゃあ……宝探し、終わり?」

「終わり」

ユリネが言い切った。

「早い!」

「早いのが勝ちだ」

タケルが真顔で言って、ユリネが刺す。

「勝ちとか言うな」

「……推測で勝ちっぽい」

「推測の使い方が雑だ」

コトが笑った。笑いがあると、終わりが優しい。

最後に、ユリネは板の前へ行って、指で文字をなぞった。

分けて置く。

文字が増えない。罫線も増えない。今日は欄じゃない日だ。助かる。

「分けて置く、だけでいい」

ユリネが言った。

「箱がなくても?」

「箱は、欲しいで止める」

「……欲しい」

レンカが小さく言って、拳を一回だけ握った。増やさない握り。良い。

結び家は家へ戻った。

戻る途中で、ミナギがぽつりと言った。

「でもさ、捨てたくないものって、あるよな」

「ある」

ユリネが言う。

「じゃあ拾って……」

「拾うな」

「……欲しいで止める!」

ミナギが言い直して、苦笑いした。雑でも言い直せるなら勝ち。

家に着いたら、まず水だ。

手を洗う。指の間まで洗う。洗うと、宝の匂いが消える。宝の匂いが消えると、欲しいが静かになる。

コトが小瓶を見て、少しだけ名残惜しそうな顔をした。

ユリネは見ない。見てしまうと、許したくなる。許すと増える。

代わりに、鍋を出す。

鍋は増えない。増えるのは具だけだ。具が増えるのは、今日は良い。

レンカが台所で小さく宣言した。

「今日、宝探ししなかった!」

「した」

ハルがぽつり。

「……未遂」

タケルが真顔で言いかけて、ユリネが刺す。

「未遂って言うな」

「……推測で未遂」

「推測の使い方が雑だ」

笑いが起きる。

笑いが起きると、生活が戻る。

戻るなら勝ちだ。

ユリネが短く言う。

「飯! 湯!」

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