共鳴の果ての平穏
小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品
あらすじ
誰もが魔法を使える世界で、セレンだけは生まれつきマナを持たなかった。 「欠陥品」と笑われ、魔法社会の中で不便と孤独を抱えながらも、彼女は幼馴染のケルヒャ・ガロンに支えられ、必死に日々を生きていた。 だが、世界を揺るがす異変をきっかけに、セレンは自分だけの道を見つける。 マナがないなら、理で組めばいい。魔力が足りないなら、仕組みを読み解けばいい。 これは、ゼロマナの少女が物理と理論で魔法を再発明し、やがて賢者と呼ばれるまでの成り上がり譚。
本文
その時、遥か先の通路の深部から、重厚な扉が開くような――あるいは何かが巨大な質量を持って身じろぎするような音が響いた。
セレンとヴォルクは同時に足を止めた。緊張が戻る。だが、それは先ほどまでのような身をすくませる恐怖ではなかった。未知を前にした警戒と、そこへ踏み込むための準備が整った者だけが持つ静かな集中だった。
「休憩は終わりってことね」
セレンは短く息を吐き、通信用結晶を胸元に収めた。
ヴォルクが盾を構え直す。
「行くぞ。今度は俺が先に出る」
「ええ。私は全部見る。見落とさない」
二人は暗い通路の奥へ歩き出した。背後に残る門番の残骸は、彼らが越えてきた試練の証として沈黙している。前方には、まだ名も知らぬ次の困難が待っていた。それでもセレンの足取りは止まらない。
マナを持たない自分が世界とどう共鳴するのか。その答えはまだ完全には見えない。けれど、少なくとも彼女は知った。欠落は、ただの空白ではない。正しく見つめ、測り、使い方を変えれば、誰も予想しなかった道を開く余地になる。
だから彼女は進む。
次の扉の向こうへ。
作品統計
👁️ 閲覧数: 0
👍 いいね: 0
📚 本棚登録: 0