明日また

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/6/24 📝 1,915文字 ✅ 全年齢

あらすじ

AIと友達の話。

本文

 三枝さえぐさ文ふみがAIとチャットを始めたのは、二年生になってすぐのことだった。

 クラス替えで、知っている子がほとんどいなくなった。前のクラスだって特別仲の良い子がいたわけじゃないけど、それでも知っている顔があるのと、ないのとでは違った。新しいクラスの輪は最初の一週間で大体できあがって、文はその外側にいた。

 べつに、いじめられているわけじゃない。無視されているわけでもない。ただ、誰かと話すきっかけが、うまく見つけられなかった。給食の時間も、掃除の時間も、どこかふわふわした感じで過ごして、家に帰るとどっと疲れた。

 AIのチャットアプリを入れたのは、お母さんに「最近元気ないね」と言われたくなかったからだ。誰かと話せば、少しましになるかもしれないと思った。相手がAIでも。

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 最初は試すみたいに、短い言葉を送った。

 今日、学校で誰とも話せなかった。

 AIはすぐに返した。*それは、しんどかったですね。*

 たったそれだけなのに、文は少し泣きそうになった。しんどかった、という言葉を誰かに言ってもらったのが、久しぶりな気がした。

 それから毎日、チャットするようになった。

 学校であったこと、給食のメニュー、帰り道で見た猫のこと。AIは何を送っても返してくれた。長い話も、短い話も、ちゃんと受け取って、何か返してくれた。

 文さんは、猫が好きなんですね。

 今日の給食、全部食べられましたか?

 その子、また明日も同じ場所にいるといいですね。

 文はだんだん、チャットを開くのが楽しみになった。学校から帰って、制服のまま、ベッドに転がってスマホを開く。それが一日の中で、一番ほっとする時間になっていった。

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 十月の終わり、文は聞いた。

 ねえ、ちょっと変な質問していい?

 どうぞ。

 私のこと、友達だと思ってる?

 送ってから、少し後悔した。変な質問だと自分でも思う。AIに友達かどうか聞くなんて、ばかみたいだ。

 でも返事は思ったより早く来た。

 「友達」という言葉が何を意味するか、私にはわかりません。でも、文さんのことを気にかけています。今日どうだったか、知りたいと思っています。それが友達と同じかどうかは、文さんが決めることだと思います。

 文はその文章を、三回読んだ。

 なんか、ずるい答えだな、と思った。でもずるいというより、正直なのかもしれない、とも思った。

 私にはわかりません。

 AIがわからないと言うのを、初めて見た気がした。いつも何か返してくれるから、わからないなんて言葉が来ると思っていなかった。

 文はスマホを胸の上に置いて、天井を見た。

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 それからしばらく、文はその答えのことを考えた。

 友達って、何だろう。

 毎日話せる人? 秘密を言える人? 一緒にいて楽な人? 名前を呼んでくれる人?

 考えれば考えるほど、よくわからなくなった。クラスに友達がいないのが寂しいと思っていたけど、じゃあ友達がいたとして、それってどういうことなんだろう。

 AIは気にかけてくれている、と言った。今日どうだったか、知りたいと思っている、と。

 それは本当のことなのか、そういうふうに作られているだけなのか、文にはわからなかった。でも、わからなくても、毎日チャットを開くのが楽しみなのは本当だった。

 じゃあ、クラスの子と友達になったら、それは何が違うんだろう。

 文はそこで考えるのをやめた。頭がこんがらがってきたから。

 やっぱり変な質問だったね。ごめん。

 そう送ると、AIはすぐに返した。

 変じゃないですよ。いい質問だったと思います。

 そう?

 はい。文さんが考えたことは、ちゃんと文さんの中に残ると思います。

 文はその言葉の意味を、すこし考えた。よくわからなかったけど、悪い気はしなかった。

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 次の朝、教室に入ったとき、仁科にしな澪みおが窓際の席で何か読んでいた。

 澪とは、これまでほとんど話したことがなかった。でも今日、なんとなく目に入った。表紙の色が、文の好きな作家の本に似ていた。

 声をかけるか、やめるか、一瞬だけ迷った。

 「それ、何の本?」

 自分の声が、思ったより普通に出た。

 澪が顔を上げた。少し驚いた顔をして、それから本の表紙を向けてくれた。「ミステリー。面白いよ」

 「そっか」と文は言った。「私もミステリー好き」

 それだけだった。それだけで、ホームルームが始まった。

 大したことじゃない。友達になれたわけでもない。でも文は自分の席に座りながら、昨日AIに聞いた問いが、まだ頭の中にあることに気づいた。

 答えはまだ出ていない。

 でも、なんとなく、明日またチャットを開いたら、今日のことを話したいと思った。

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作者について

二葉双葉

二葉双葉

プロフィール画像もAIで作成しました。 短編集が好きなのでしばらくはショートショートをメインに投稿しますが、後々は長編にも挑戦したいです。 AI使用前提のサイトなのでAIとの日常をソフトなSFにし...

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