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星の狩人(一)~未来の職業?

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/9/12 📚 シリーズ: 帰ってきました~貴方へのラブレター~ 📝 4,124文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

一話完結・オムニバス(好きな所からお読みください)

本文

星の狩人(一)

宇宙には、静寂という名の暴力がある。

音のない闇の中を、小型船ナイトホークは滑るように飛んでいた。エンジンの振動だけが、かろうじて「生きている」ことを主張している。操縦席に深く身を沈めた佐藤純は、計器盤の光を顔に受けながら、レーダーの端に映る小さな光点を眺めていた。

三時間。

あの光点を追い始めて、もう三時間が経つ。

ターゲットの船は小型だが、エンジンの出力が尋常ではない。改造している。それも、素人が手を入れたレベルではない。逃げ方も知っている。小惑星帯の影に入ったり、廃棄された中継ステーションの電波ノイズに紛れたり。素直に逃げない。純が二十年かけて磨いた追跡の勘を、一つ一つ丁寧に潰してくる。

厄介な獲物だと、純は素直に思った。

依頼書には「危険度:中」と書いてあった。依頼人の見立ては甘い。これは「危険度:高」あるいは依頼人が意図的に低く書いた可能性もある。それも含めて、今は考えておく必要がある。

ハンターとして二十年。純がこの仕事で学んだことがあるとすれば、依頼書を額面通りに受け取ってはいけない、という一点に尽きる。

レーダーが鳴った。

ターゲットの光点が、突然速度を上げた。

「お目覚めか」

純は独り言を漏らしながら、スロットルを押し込んだ。ナイトホークのエンジンが唸り、加速する。シートに背中が押しつけられる感覚。この感覚だけは、二十年経っても飽きない。

ターゲットは小惑星帯へ向かっていた。

まずい選択だと純は思った。小惑星帯の中では、大型船は動けない。だが純のナイトホークは小型だ。追いかけるのに、何の問題もない。ターゲットはそれを知らないのか、あるいは他に選択肢がないのか。

純は迷わず小惑星帯へ突入した。

巨大な岩の塊が、四方から迫ってくる。直径数百メートルのものもあれば、砂粒程度のものもある。前者は避ければいい。後者は機体の装甲で弾く。問題は中間サイズ。人間の頭ほどの岩が、秒速数十キロで飛んでくる。それが一番厄介。

純は操縦桿を左右に倒しながら、レーダーでターゲットを追い続けた。向こうも必死だ。ランダムに方向を変え、大きな岩の影に身を隠しながら逃げている。だが純には、相手の癖が見え始めていた。

右に逃げるとき、必ず一瞬躊躇する。

操縦桿を右に倒す動作が、ほんの僅かに遅れる。コンマ数秒の話だが、純の目にはそれが見える。

純は先回りした。

大きな岩の影から、ターゲットの船が飛び出してくる場所を予測し、そこへナイトホークを滑り込ませた。

通信が繋がった。ターゲットが声を漏らした瞬間。

女の声だった。

「……終わりね。これ以上続けても、お互い傷つくだけじゃない?」

返事はなかった。だが通信は切れていない。

純はそれを「聞いている」と判断した。

「依頼人には、手荒な真似はしないと確認を取っている。おとなしく来い」

「……信用できないわね」

「ハンターを信用しろという方が無理な話ではあるが」

「だったら黙って追ってくればいいでしょう」

「効率が悪い。俺は無駄が嫌いでね」

短い沈黙があった。

「あなた、変わったハンターね」

「よく言われる」

そのとき、レーダーに新しい反応が現れた。

一つではない。三つ。いや、四つ。大型。純はすぐに機種を確認した。武装輸送船。民間の船ではない。それも、この小惑星帯の中に待機していた。最初からここにいた。

純の頭の中で、何かが音を立てて組み替わった。

「今すぐ俺の後ろにつけ」

「は?」

「四隻の武装船が来る。俺たちを囲もうとしている。俺たちを、だ。お前だけじゃない」

一瞬の沈黙。

「……どういうことかしら」

「俺も消される予定だったということだ。依頼人が最初から仕組んでいた。お前を捕まえた俺を、まとめて始末するつもりだったんだろう」

「それ、本当に?」

「嘘をついている暇があると思うか。今すぐ判断しろ。一緒に逃げるか、一人で四隻を相手にするか」

また沈黙。しかし今度は短かった。

「……後ろにつくわ」

「賢い判断だ」

純はナイトホークを反転させた。武装船四隻は、すでに包囲の形を作り始めている。小惑星帯の中では、大型船は機動力が落ちる。それが唯一の希望だった。

「作戦は?」

「小惑星帯を抜ける。大型船はついてこられない」

「それだけ?」

「シンプルが一番だ」

「……ハンターって全員こんな感じなの?」

「俺だけだ」

武装船から光線が飛んできた。

直撃は免れたものの、至近距離をかすめた熱線がナイトホークの船体を激しく震わせ、コックピットに赤い警告灯が明滅する。シールドの残量計が、一瞬で四分の一削られていた。

純は舌打ちを噛み潰しながら機体を捻り、巨大な岩の影に滑り込んだ。後ろで彼女の船も同じ動きをする。反応が速い。やはり腕がいい。

「右の大きい岩、使うぞ」

「わかった」

二隻は巨大な岩を盾にしながら、前進した。武装船が主砲をチャージしながら追ってくる。取り回しの悪い大型船が、純たちの動きについてこようと強引に舵を切った。

純はその瞬間を見逃さなかった。急制動をかけ、あえて敵の視界を自船のイオン排気で眩ませる。直後、予測を誤った大型船が小惑星の側面にまともに激突し、宇宙空間に激しい火花を散らした。

「一隻、脱落した」

彼女の声が通信に届いた。驚きと、かすかな興奮が混じっている。自滅ではない。純の計算通り。

「残り三隻。前方の密集地帯を抜ける。振り落とせる」

「あの密集地帯を抜けるの? 普通じゃないわ」

「普通に逃げても捕まる。行くぞ」

純はスロットルを全開にした。ナイトホークが咆哮する。岩と岩の隙間を、針に糸を通すように抜けていく。右、左、上、下。重力も上下もない宇宙の中で、純の体だけが正確に方向を把握し続ける。これは技術ではない。二十年かけて体に刻み込んだ、一種の本能。

後ろを確認した。彼女がついてきている。純の狂気じみた機動に、寸分の狂いもなく追従していた。

驚いた、と純は思った。この密集地帯を、あの速度でついてこられる操縦士は、純が知る限りほとんどいない。

「上手いな」

「褒めても何も出ないわよ」

「事実を口にしただけだ」

武装船は密集地帯には入れなかった。外側を迂回しようとしているが、それでは間に合わない。純と彼女が密集地帯を抜け出す頃には、武装船はまだ反対側にいる。

光が開けた。

小惑星帯の外側、広大な宇宙空間が目の前に広がった。

「抜けた」

彼女の声に、かすかな安堵が滲んでいた。

「まだ終わりじゃない。ワープできる距離まで離れる必要がある」

「わかってる」

二隻は並んで加速した。後方のレーダーに武装船の反応があるが、距離は開いている。ワープ可能領域まで逃げ切れる。

「聞いていいか」

純は前を見ながら問いかけた。

「何を?」

「依頼人は、お前の何を封じたかった」

静寂。

「答えたくないなら構わない」

「……あの男、自分に都合の悪い記録を持っている人間を消して回っているの。私はその記録の一つを持っている」

「記録とは」

「不正取引の証拠よ。星系四つにまたがる、かなり大規模な話」

純は少し考えた。

「その記録は今も持っているか」

「持っているわ。だから狙われているの」

「どこかに届けるつもりだったか」

「そのつもりだったわよ。でもハンターに追われて、それどころじゃなくなったの」

「……俺が邪魔をしたわけだ」

「そういうこと」

純はしばらく黙った。計器盤の光が顔を照らしている。レーダーの武装船は、まだ追ってきているが、距離は確実に広がっている。

「届け先はどこだ」

「え?」

「記録の届け先。どこに持っていくつもりだった」

「……第七星系の独立監査局よ。でもそこまで行く前に捕まりそうになって」

「わかった」

「何が?」

「そこまで送っていく」

通信の向こうで、彼女が言葉を失っているのがわかった。

「あなた、さっきまで私を捕まえようとしていたんだけど」

「依頼人は俺を騙した。その時点で依頼は無効」

「ハンターにそういうルールがあるの?」

「俺個人のルールだ」

「……変わったハンターね、やっぱり」

「だから言っただろう、よく言われると」

ワープ座標を入力した。第七星系まで、二回のワープで行ける。

「ついてこい。ワープするぞ」

「待って」

「何だ」

「なんで助けるの。あなたにメリットがないわ」

純はしばらく考えた。本当のことを言えばいい、と思った。

「俺を騙した依頼人が、それで痛い目を見るなら。それだけでいい」

「……それ、かなりシンプルな動機ね」

「シンプルが一番だと言っただろう」

短い沈黙の後、彼女が少し笑った。通信越しでもわかった。声のトーンが僅かに変わった。

「わかったわ。ついていく」

「では行くぞ」

ナイトホークがワープに入る。一瞬、時間と空間が引き伸ばされるような感覚。そして次の瞬間、全く別の星域に二隻は躍り出た。

後方に武装船の反応はない。

「撒いた」

「……本当に撒いたのね」

彼女の声に、今度ははっきりと安堵が混じっていた。

「第七星系まで、あと一回ワープだ。その前にエネルギーを補充する。近くに民間の補給ステーションがある」

「わかった」

二隻は並んで飛んだ。追ってくる者は、もういない。広大な宇宙が、二隻の前に静かに広がっていた。

「さっき、小惑星帯で。あなた、私の癖を読んでいたでしょう」

「右に動くとき、一瞬遅れる」

「……気づいていたのね」

「三時間追っていれば、見えてくる」

「それで先回りしたの?」

「そうだ」

「なのに、今は一緒に逃げている」

「状況が変わった」

「ハンターって、そんなに簡単に切り替えられるものなの?」

「切り替えが遅いハンターは、長生きできない」

彼女がまた笑った。今度はちゃんと聞こえた。

「そうね」

補給ステーションの灯りが、遠くに見え始めた。小さな光の集まりが、暗い宇宙の中に浮かんでいる。

純はそれを眺めながら、今日の仕事の収支を頭の中で計算した。依頼料は入らない。燃料代と時間は使った。得たものは、騙した依頼人への意趣返しと、腕のいい操縦士との奇妙な道中。

損な取引かもしれない。

でも、悪くない、と純は思った。

「もう少しだ」

「わかったわ。……ありがとう」

「礼は届けてからにしろ。まだ終わっていない」

「相変わらずシンプルね」

「褒め言葉として受け取っておく」

二隻は補給ステーションへと向かった。

星の海は、静かだった。

ジャンル・タグ

日常, ファンタジー, ヒューマンドラマ, 恋愛, スローライフ, コメディ, SF, ラブコメ

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JJ

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