『合体した後で誰のせいか決めろ』
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あらすじ
世界の危機に立ち向かう、数々のスーパーロボット。 νガンダム、マジンガーZ、ゲッターロボ、エヴァンゲリオン、バルキリー、勇者ロボ、そして各世界から集められた名機たち。 だが、彼らが戦場から帰ってくる場所には、英雄とは別の戦いが待っていた。 「フィン・ファンネルを投げ槍にするな!」 「ゲッターの部品が、また勝手に形を変えたぞ!」 「格納庫内で歌うな! 計測器が共鳴している!」 「他作品の武装を、面白そうという理由で取り付けるな!」 異なる技術、異なる規格、異なる常識。 機械、生命体、金属生命体、人格搭載ロボット、自己修復機、気合いで出力が上がる機体。 各作品の整備士、技術者、博士たちは、世界の垣根を越えて協力しながら、次々と持ち込まれる無理難題へ立ち向かう。 これは、世界を救う英雄たちの物語――ではない。 英雄が壊して帰ってきた機体を、夜通し直す者たちの物語である。 クロスオーバー作品ならではの技術格差や設定の違いを、整備現場から描く会話中心のコメディ二次創作。 第三格納庫では今日も、敵襲より先に整備班の怒声が響く。
本文
第三格納庫・統合機体健康管理室。
開設二日目。
入口の看板には、すでに三枚の紙が追加されていた。
患者が合体する場合、構成機すべての受付を済ませること。
分離後に部品数が増減していないか確認すること。
診察室内で必殺技の口上を始めないこと。
榊清太郎は三枚目を貼り終え、椅子へ戻った。
「病院の注意書きではないな」
アストナージ・メドッソが受付端末を見ながら答える。
「患者がロボットの時点で諦めろ」
待合区画には、五台の小型戦闘機が並んでいた。
バトルジェット。
バトルクラッシャー。
バトルタンク。
バトルマリン。
バトルクラフト。
五台とも、それぞれ別の場所を損傷している。
バトルジェットは機首が焦げている。
バトルクラッシャーは左翼が歪んでいる。
バトルタンクは履帯が一部外れている。
バトルマリンは水漏れしている。
バトルクラフトは、なぜか車体後部へ巨大な岩が挟まっていた。
榊は受付表を見た。
「これで一機なのか」
四ッ谷博士が酒瓶を抱えたまま答える。
「合体すればコン・バトラーVじゃ」
「分離中は五機だろう」
「そうじゃ」
「整備記録は何冊だ」
「六冊じゃな」
榊が顔を上げる。
「なぜ増える」
「合体後にしか現れん異常があるからじゃ」
榊は受付表へ新しい欄を作った。
構成機一。
構成機二。
構成機三。
構成機四。
構成機五。
合体状態。
「病院で家族欄を増やすような気分だ」
五人のパイロットも並んでいた。
葵豹馬。
浪花十三。
西川大作。
南原ちずる。
北小介。
豹馬が机へ身を乗り出す。
「合体した時、右腕の反応が遅れるんだ」
十三が横から言う。
「お前の操作が乱暴なんや」
「俺のせいじゃねえ! 腕はお前のバトルクラッシャーだろ!」
「操縦してるんは合体後のお前や!」
大作が二人の間へ入る。
「まあまあ。喧嘩したらいかんたい」
ちずるが腕を組む。
「合体前の点検では異常がなかったのよ。だから、接続部分か制御同期の問題じゃないかしら」
小介はすでに端末を開いていた。
「合体後、右腕へ送られる制御信号が〇・〇三秒遅延しています。ただし、原因はまだ特定できません」
アストナージが小介の画面を覗き込む。
「機体側の記録は揃っているな」
「はい」
「パイロット側の操作記録は」
豹馬が胸を張った。
「気合いだ」
榊が受付表へ赤字を入れた。
参考にならず。
豹馬が叫ぶ。
「何でだよ!」
「単位のない報告は記録できん!」
格納庫中央では、五機の分解点検が始まった。
アストナージがバトルクラッシャーを担当する。
榊とシゲがバトルジェット。
イアン・ヴァスティがバトルマリン。
マキナ・中島とヤン・ノイマンがバトルクラフト。
レイン・ミカムラが五人のパイロットを診察していた。
豹馬が不満そうに尋ねる。
「俺たちも診るのか?」
「合体時の神経負荷を確認します」
「機体の故障だぜ?」
「ゴッドガンダムの件で学んだの。機体の異常とパイロットの異常を、最初から分けて考えない方がいいわ」
十三が豹馬を指さす。
「こいつの頭を診てもろた方がええで」
「お前から先にしてもらえ!」
レインが二人の額へ体温計を当てた。
「両方黙って」
二人は黙った。
少し離れた場所では、シゲがバトルジェットの操縦席を覗き込んでいる。
「操縦桿、ずいぶん強く握ってますねえ。指の跡みたいに変形してますよ」
豹馬が答えた。
「力を入れた方が、機体も応えてくれるんだ」
榊は変形した操縦桿を見た。
「応えているのではない。耐えている」
点検開始から三十分。
各構成機には、右腕の遅延を起こす異常が見つからなかった。
四ッ谷博士が酒を飲む。
「じゃから言ったじゃろう。合体後にしか出ん」
榊が大型整備架台を見上げる。
「合体状態で点検するしかないか」
豹馬が勢いよく立ち上がった。
「よし! レッツ・コンバインだ!」
「格納庫内でやるのか?」
「合体しないと分からないんだろ?」
「機体を固定して、低出力で行え」
五人が搭乗する。
構成機が所定位置へ移動した。
格納庫の警告灯が黄色へ変わる。
五機が順番に変形し、接続される。
バトルジェットが頭部。
バトルクラッシャーが胸部と腕。
バトルタンクが胴体。
バトルマリンが脚部。
バトルクラフトが足。
巨大な人型が、整備架台の中央に立ち上がった。
コン・バトラーV。
榊は全高を見上げた。
「合体するだけで、随分と偉そうになるな」
四ッ谷博士が笑う。
「強いからのう」
低出力試験が始まった。
右腕を上げる。
反応正常。
肘を曲げる。
正常。
指を開閉する。
正常。
豹馬の通信が入る。
『異常なしだぜ』
榊が答える。
「次は負荷を三十パーセントまで上げる」
右腕が動く。
正常。
五十パーセント。
正常。
七十パーセント。
右腕が、〇・〇三秒遅れた。
小介が叫ぶ。
『出ました!』
アストナージが記録を確認する。
「右肩の接続部で信号が一度分岐している」
十三が答える。
『わいの機体のせいやないで! 合体後の制御回路や!』
豹馬が言う。
『じゃあ、コン・バトラーのせいか』
榊が顔をしかめる。
「コン・バトラーという六人目を作るな」
ちずるが答えた。
『でも、合体後は一つの機体として動いています』
小介も続ける。
『五機の制御装置が連携し、新しい統合制御系を形成します。独立したシステムとして考える方が合理的です』
榊は受付表へ新しい欄を追加した。
構成機六。
合体後の人格または統合制御。
「冗談で増やした欄が、本当に必要になったぞ」
その時、格納庫入口から咆哮が響いた。
四台の獣戦機が運び込まれてくる。
イーグルファイター。
ランドライガー。
ランドクーガー。
ビッグモス。
獣戦機隊だった。
藤原忍がイーグルファイターから飛び降りる。
「おい! こっちも合体状態で調子が悪い!」
榊が天井を見上げた。
「一日に一組ずつ来い」
葉月考太郎博士が後から歩いてくる。
「ダンクーガは通常時には問題ない。だが、野生化状態から合体すると、出力制御が不安定になる」
アストナージが尋ねる。
「野生化状態とは」
忍が拳を握る。
「やってやるぜって感じだ!」
榊が受付表へ赤字を入れた。
参考にならず。
忍が机を叩いた。
「何でだ!」
豹馬がコックピットから笑う。
『お前も気合いで動かす側か!』
「誰だお前!」
『コン・バトラーVのメインパイロット、葵豹馬だ!』
「合体ロボの先輩面してんじゃねえ!」
『先に合体してるんだから先輩だろ!』
「年代で上下を決めるな!」
榊が通信を切った。
「格納庫の回線を、喧嘩に使うな」
獣戦機隊の四人も受付へ並ぶ。
藤原忍。
結城沙羅。
司馬亮。
式部雅人。
レインが問診を始めた。
「合体時に、身体的な違和感は?」
忍が答える。
「熱くなる」
沙羅が答える。
「腹が立つ」
亮が答える。
「集中する」
雅人が答える。
「テンションが上がる」
レインは記録した。
身体反応。
忍、熱感。
沙羅、交感神経亢進。
亮、集中状態。
雅人、軽躁傾向。
雅人が画面を覗く。
「俺だけ病名っぽくない?」
「医学的に書いた結果よ」
ダンクーガの分離点検も始まった。
ビッグモスの脚部には大量の泥。
ランドライガーの爪には敵装甲。
ランドクーガーの吸気口には樹木の枝。
イーグルファイターの翼には焦げ跡。
シゲが泥を見た。
「どこを走ってきたんです?」
雅人が答える。
「森」
「ロボットで森へ入るなとは言いませんけど、木を一本持って帰らないでくださいよ」
ランドクーガーの吸気口から、鳥の巣が出てきた。
中には卵が三つあった。
格納庫が静かになった。
雅人が言う。
「これは俺のせいじゃないよな?」
榊は鳥の巣をノーマンへ渡した。
「保護しろ」
「承知いたしました」
コメタケタが近づく。
「タマゴ?」
ノーマンはコメタケタを遠ざけた。
「炊きません」
獣戦機の点検中、さらに搬入警報が鳴った。
三機のベクターマシンが格納庫へ入ってくる。
ベクターソル。
ベクターマーズ。
ベクタールナ。
その後ろから、ソフィア・ブランが大量の診断資料を抱えて現れた。
「アクエリオンも、合体状態でしか確認できない異常があります」
榊は受付端末を閉じた。
「今日は合体禁止日にする」
ソフィアは困ったように微笑む。
「そうすると診断できません」
アポロがベクターソルから飛び降りた。
「腹が減った!」
榊が指さす。
「食堂は向こうだ」
アポロは鼻を動かした。
「米の匂いがする」
コメタケタの目が光る。
「コメ、タケタ」
アポロがコメタケタへ近づく。
「お前、いい匂いするな」
コメタケタが後ずさる。
ノーマンが二人の間へ入った。
「食べられる部分と食べられない部分を区別してください」
シルヴィア・ド・アリシアがアポロの耳を引っ張った。
「来て早々、炊飯器を口説かないで!」
「口説いてねえ! 食えるか見てただけだ!」
「もっと悪いわよ!」
シリウスが優雅に機体から降りる。
「品性というものがないのか」
アポロが振り返る。
「お前は匂いが薄い」
「何の評価だ!」
ソフィアが榊へ診断結果を見せた。
「アクエリオンは三機の組み合わせと搭乗者の位置によって、形態と性能が変化します」
榊は資料を見る。
ソーラーアクエリオン。
アクエリオンマーズ。
アクエリオンルナ。
その他、複数形態。
搭乗者の組み合わせによる出力変動。
感情状態による同期率変動。
過去生への反応。
榊は資料を閉じた。
「故障診断に、前世を持ち込むな」
ソフィアが答える。
「持ち込みたくて持ち込んでいるわけではありません」
「現場はいつもそう言う」
アクエリオンの症状は、さらに面倒だった。
ソーラー形態では、左脚が遅れる。
マーズ形態では、右腕が震える。
ルナ形態では、異常が消える代わりに、搭乗者全員の心拍数が上昇する。
榊が最後の記録を見た。
「機体故障か?」
ソフィアは少し言いにくそうに答える。
「合体感覚による反応です」
「何だ、それは」
アポロが言う。
「気持ちいいんだ」
格納庫が静かになった。
シルヴィアが顔を赤くする。
「言い方を選びなさいよ!」
シリウスが目を閉じる。
「下品だ」
アポロが反論する。
「本当のことだろ!」
榊は受付表へ記入した。
症状説明はソフィアを通すこと。
アストナージが覗き込む。
「賢明だ」
三組の合体ロボットが同じ格納庫へ集まった。
コン・バトラーV。
ダンクーガ。
アクエリオン。
整備責任者たちは、合同診断を行うことにした。
理由は単純だった。
一組ずつ合体させている時間がなかった。
格納庫を三つの区画へ分ける。
第一試験区画、コン・バトラーV。
第二試験区画、ダンクーガ。
第三試験区画、アクエリオン。
榊が全員へ通達する。
「合体開始は、管制室の許可を得てから行う」
豹馬が通信で答える。
『了解!』
忍も答える。
『さっさと始めようぜ!』
アポロは食堂へ行こうとして、シルヴィアに引き戻された。
格納庫内の全整備員が退避する。
固定具を確認。
出力制限を確認。
緊急停止装置を確認。
榊が管制席へ座った。
「第一試験区画、合体準備」
コン・バトラーチームが応答する。
「第二試験区画、待機」
忍が不満そうに言う。
『何であいつらが先なんだ』
「受付順だ」
『戦場で順番なんか待てるか!』
「ここは病院だ!」
「第三試験区画、待機」
アポロが尋ねる。
『いつ合体するんだ?』
「待てと言っている」
榊は第一試験区画のマイクを開いた。
「合体開始」
豹馬が叫ぶ。
『レッツ・コンバイン!』
その声が、格納庫全体へ響いた。
問題は、マイクの接続先だった。
第一試験区画だけではなく、全館放送へ切り替わっていた。
ダンクーガの制御系が、合体指令を検知する。
忍が反応した。
「俺たちも行くぞ!」
葉月博士が叫ぶ。
「待て! まだ許可は出ていない!」
アクエリオン側でも、アポロが立ち上がる。
「合体だ!」
ソフィアが止める。
「今の指令は、あなたたちに向けたものではありません!」
「合体って聞こえたぞ!」
「条件反射で動かないで!」
三組が、同時に合体を開始した。
格納庫の天井から警報が鳴る。
コン・バトラーの構成機が上昇。
獣戦機が変形。
ベクターマシンが軌道へ入る。
三組の合体経路が、一部重なっていた。
ヤンが管制画面を見て叫ぶ。
「衝突します!」
榊が緊急停止ボタンを押す。
反応しない。
アストナージが画面を見る。
「各機の安全装置が、パイロット操作で解除されている!」
榊が通信を開く。
「全員、合体を中止しろ!」
豹馬が答える。
『ここまで来たら止められない!』
忍も叫ぶ。
『勢いを殺すな!』
アポロが笑う。
『面白くなってきた!』
榊は通信機を握り潰しかけた。
「合体ロボのパイロットは、途中で止まるという発想がないのか!」
三組の構成機が格納庫中央で交差する。
バトルジェットがイーグルファイターの上を通過。
ランドライガーがベクターマーズを回避。
バトルマリンの翼がベクタールナへ接触しかける。
マキナが管制画面を見ながら目を輝かせた。
「すごい! 別作品同士で合体経路を共有しています!」
ヤンが叫ぶ。
「感動している場合ですか!」
ロイドは映像を記録していた。
「組み合わせを変えたら、新しい機体になるかもしれない」
榊が振り返る。
「口に出すな! パイロットが聞く!」
遅かった。
忍が通信で言う。
『別の奴と合体できるのか?』
豹馬も反応する。
『俺たちの方が腕になるぞ!』
アポロが叫ぶ。
『誰でもいい! 合体だ!』
ソフィアが顔を覆った。
「言葉を選んで!」
三組の接続システムが、互いを構成機と誤認し始めた。
コン・バトラーの胸部接続口が、ランドライガーを捕捉。
ダンクーガの脚部固定装置が、バトルクラフトへ接近。
アクエリオンのエレメントシステムが、周囲すべてのパイロットへ精神同期を試みる。
管制室にいた榊の頭へ、突然声が流れ込んだ。
腹が減った。
負けたくない。
やってやる。
右腕が遅い。
誰か米を炊いている。
榊は頭を押さえた。
「何だ、これは!」
ソフィアが端末を確認する。
「エレメントシステムが、格納庫内の人間まで搭乗候補として認識しています!」
アストナージも顔をしかめる。
「アムロのサイコミュより無遠慮だぞ!」
イアンは耳を塞ぐ。
「刹那のガンダムへの執着まで流れ込んでくる!」
格納庫の隅にいた刹那が顔を上げる。
「ガンダムではない機体が、ガンダムになろうとしている」
「今は黙っていろ!」
榊が叫ぶ。
合体経路は、あと十秒で完全に交差する。
リーロンが冷静に画面を見ていた。
「一度、全部の合体信号を同じ周期に合わせたらどうかしら」
榊が振り返る。
「どうなる」
「少なくとも、衝突は避けられる」
「その後は」
「分からないわ」
「この格納庫の技術者は、なぜ最後の一言を軽く言う!」
だが、他に方法はない。
リーロン、ロイド、ヤン、小介が制御系へ接続する。
三種類の合体信号。
機械式接続。
獣戦機統合制御。
エレメント精神同期。
まったく異なる信号を、強引に同じタイミングへ合わせる。
小介が叫ぶ。
『同期率、七十パーセント!』
ヤンが答える。
「八十二!」
ロイドが勝手に補正する。
「九十六」
リーロンが笑う。
「あと少しね」
榊が叫ぶ。
「百にするな! 接触を避けられれば十分だ!」
ロイドが首を傾げる。
「技術者として、九十六で止めるのは気持ちが悪い」
「お前の気持ちを整備基準にするな!」
同期率、百パーセント。
三組の合体軌道が、一瞬だけ完全に揃った。
格納庫全体が光に包まれる。
激しい風。
金属音。
パイロットたちの叫び。
そして、沈黙。
煙が晴れた。
格納庫中央には、三機の合体ロボットが立っていた。
コン・バトラーV。
ダンクーガ。
ソーラーアクエリオン。
外見上、異常はない。
榊は安堵した。
「成功したのか」
小介が診断画面を見る。
「構成部品に異常なし!」
葉月博士も答える。
「ダンクーガ、正常!」
ソフィアがエレメント反応を確認する。
「アクエリオンも問題ありません!」
整備員たちから歓声が上がった。
その時。
コン・バトラーVが、両腕を獣のように広げた。
豹馬の声ではない。
忍の声が響く。
『やってやるぜ!』
ダンクーガが優雅に片手を掲げる。
シリウスの声が響く。
『この姿、実に美しい』
ソーラーアクエリオンが腰へ手を当てた。
十三の声が響く。
『なんでやねん!』
格納庫が静まり返った。
榊が管制画面を見る。
「機体は合っている」
アストナージが答える。
「パイロットが混ざっている」
合体信号の同期により、搭乗者転送経路まで一時的に接続されていた。
コン・バトラーV。
頭部、忍。
胸部、ちずる。
胴体、亮。
脚部、アポロ。
足部、小介。
ダンクーガ。
イーグル、シリウス。
ランドライガー、十三。
ランドクーガ、雅人。
ビッグモス、大作。
アクエリオン。
ヘッド、豹馬。
胴体、沙羅。
脚部、シルヴィア。
本来の組み合わせは、跡形もなかった。
四ッ谷博士が酒瓶を落とした。
「どうして、そうなる」
ロイドが楽しそうに答える。
「合体信号を統一したからじゃないかな」
榊がロイドの襟首を掴んだ。
「他人事のように言うな!」
コン・バトラーVの中で、忍が操作する。
『こいつ、思ったより素直に動くな!』
ちずるが叫ぶ。
『勝手に動かさないで!』
アポロは脚部を動かす。
『腹が減った! 食堂へ行こうぜ!』
小介が止める。
『全高五十メートルを超える機体で、食堂へ行かないでください!』
コン・バトラーVが、一歩踏み出した。
床が沈んだ。
榊が叫ぶ。
「動くな!」
ダンクーガでは、シリウスが姿勢を確認していた。
『獣の姿にしては、悪くない』
十三が答える。
『人の機体を品評すな!』
大作はビッグモスの操縦席で感動していた。
『広か操縦席たい!』
雅人が笑う。
『気に入ったなら交換する?』
葉月博士が叫ぶ。
「しない!」
アクエリオンでは、豹馬と沙羅が操縦権を争っていた。
『俺がメインだ!』
『知らないわよ! この機体、勝手に考えが流れ込んでくる!』
シルヴィアが叫ぶ。
『二人とも動かさないで! 脚が私なのよ!』
豹馬が拳を握る。
『試しに一発――』
榊が全回線へ怒鳴った。
「必殺技は禁止だ!」
三機が同時に止まった。
整備班は、パイロットを元へ戻す作業へ入った。
問題は、分離操作にも搭乗者の意思統一が必要なことだった。
コン・バトラーVでは、忍とアポロが分離を拒否。
理由。
面白いから。
ダンクーガでは、シリウスが操縦系統の美しさを分析し始める。
理由。
興味深いから。
アクエリオンでは、豹馬が必殺技を一つ試すまで降りないと言い張った。
理由。
せっかくだから。
榊は管制室で呟いた。
「パイロットを交換しても、問題を起こす種類は変わらんな」
アストナージが答える。
「機体ではなく、人選の問題だ」
レインが全搭乗者の精神状態を確認する。
「強制分離は危険です。まず、全員を落ち着かせないと」
ソフィアが言う。
「エレメントシステムを通じて、全員の感情が増幅されています」
榊が尋ねる。
「落ち着かせる方法は」
ノーマンが静かに答えた。
「食事でしょう」
全員がノーマンを見る。
「アポロ氏をはじめ、複数名が空腹を訴えています。空腹は判断力を低下させます」
コメタケタが蓋を開く。
「コメ、タケタ」
格納庫の中央に、巨大な炊飯用コンテナが運び込まれた。
コメタケタが炊いた米。
ノーマンが用意したカレー。
香りが格納庫へ広がる。
アポロが最初に反応した。
『降りる!』
忍が叫ぶ。
『お前、さっきまで面白がってただろ!』
『飯の方が大事だ!』
コン・バトラーVが即座に分離を開始した。
他の二機も続く。
パイロットたちは元の構成機へ戻り、格納庫の床へ降りた。
アポロは誰よりも早く食堂へ走った。
忍も後を追う。
豹馬が負けじと走る。
シルヴィアが叫ぶ。
「まず検査を受けなさい!」
誰も止まらなかった。
レインは診察表へ書いた。
合体事故からの回復確認前に、食事へ行かせないこと。
その日の夜。
整備責任者会議が開かれた。
議題。
合同格納庫における合体機構の安全運用。
新規則が読み上げられる。
第一条。
合体試験は、一度に一組だけ行う。
第二条。
合体命令は、専用回線で送信する。
第三条。
「合体」という単語を、全館放送で使用しない。
第四条。
他作品の合体信号と同期させない。
第五条。
搭乗者の混在を確認した場合、必殺技を試す前に分離する。
第六条。
分離を拒否した場合、食事による誘導を認める。
アストナージが第六条を見る。
「機体安全規則に食事を書く日が来るとはな」
ノーマンが答える。
「人間は空腹には勝てません」
隼人が壁際から言う。
「ゲッターチームには効かんぞ」
榊が尋ねる。
「お前たちは何なら止まる」
「止まる必要があるのか?」
「規則の対象外にする」
第七条。
ゲッターロボは、他の合体試験中に格納庫へ入れない。
隼人は何も言わなかった。
反対しない時点で、全員が危険性を理解した。
会議終了後。
榊は整備予定表へ、新しい分類を追加した。
単独機。
変形機。
人格機。
生体機。
合体機。
複数合体形態機。
搭乗者入れ替え可能合体機。
合体後に人格または制御系が変化する機体。
合体信号を聞くと勝手に反応する機体。
分類不能。
シゲが一覧を見上げた。
「合体機だけで、随分増えましたねえ」
榊は赤いペンを置いた。
「合体とは、複数の問題を一つにまとめる技術ではない」
「では、何です?」
格納庫の奥では、コン・バトラー、ダンクーガ、アクエリオンの整備員が、それぞれの構成機を数えていた。
分離前と分離後で、部品数が合わない。
どこかの機体に、別の作品の接続ピンが一本残っているらしい。
榊は長く息を吐いた。
「複数の問題が、一つになったふりをする技術だ」
コメタケタが炊き上がり音を鳴らす。
「コメ、タケタ」
格納庫の全員が、作業を止めて食堂へ向かった。
合体ロボットは分離できる。
整備員の疲労は、そう簡単には分離できなかった。
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