『合体した後で誰のせいか決めろ』の表紙画像

『合体した後で誰のせいか決めろ』

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/7/14 📚 シリーズ: 第三格納庫は今日も修羅場 ―スーパーロボット大戦・整備班奮闘記― 📝 8,532文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

世界の危機に立ち向かう、数々のスーパーロボット。 νガンダム、マジンガーZ、ゲッターロボ、エヴァンゲリオン、バルキリー、勇者ロボ、そして各世界から集められた名機たち。 だが、彼らが戦場から帰ってくる場所には、英雄とは別の戦いが待っていた。 「フィン・ファンネルを投げ槍にするな!」 「ゲッターの部品が、また勝手に形を変えたぞ!」 「格納庫内で歌うな! 計測器が共鳴している!」 「他作品の武装を、面白そうという理由で取り付けるな!」 異なる技術、異なる規格、異なる常識。 機械、生命体、金属生命体、人格搭載ロボット、自己修復機、気合いで出力が上がる機体。 各作品の整備士、技術者、博士たちは、世界の垣根を越えて協力しながら、次々と持ち込まれる無理難題へ立ち向かう。 これは、世界を救う英雄たちの物語――ではない。 英雄が壊して帰ってきた機体を、夜通し直す者たちの物語である。 クロスオーバー作品ならではの技術格差や設定の違いを、整備現場から描く会話中心のコメディ二次創作。 第三格納庫では今日も、敵襲より先に整備班の怒声が響く。

本文

第三格納庫・統合機体健康管理室。

開設二日目。

入口の看板には、すでに三枚の紙が追加されていた。

患者が合体する場合、構成機すべての受付を済ませること。

分離後に部品数が増減していないか確認すること。

診察室内で必殺技の口上を始めないこと。

榊清太郎は三枚目を貼り終え、椅子へ戻った。

「病院の注意書きではないな」

アストナージ・メドッソが受付端末を見ながら答える。

「患者がロボットの時点で諦めろ」

待合区画には、五台の小型戦闘機が並んでいた。

バトルジェット。

バトルクラッシャー。

バトルタンク。

バトルマリン。

バトルクラフト。

五台とも、それぞれ別の場所を損傷している。

バトルジェットは機首が焦げている。

バトルクラッシャーは左翼が歪んでいる。

バトルタンクは履帯が一部外れている。

バトルマリンは水漏れしている。

バトルクラフトは、なぜか車体後部へ巨大な岩が挟まっていた。

榊は受付表を見た。

「これで一機なのか」

四ッ谷博士が酒瓶を抱えたまま答える。

「合体すればコン・バトラーVじゃ」

「分離中は五機だろう」

「そうじゃ」

「整備記録は何冊だ」

「六冊じゃな」

榊が顔を上げる。

「なぜ増える」

「合体後にしか現れん異常があるからじゃ」

榊は受付表へ新しい欄を作った。

構成機一。

構成機二。

構成機三。

構成機四。

構成機五。

合体状態。

「病院で家族欄を増やすような気分だ」

五人のパイロットも並んでいた。

葵豹馬。

浪花十三。

西川大作。

南原ちずる。

北小介。

豹馬が机へ身を乗り出す。

「合体した時、右腕の反応が遅れるんだ」

十三が横から言う。

「お前の操作が乱暴なんや」

「俺のせいじゃねえ! 腕はお前のバトルクラッシャーだろ!」

「操縦してるんは合体後のお前や!」

大作が二人の間へ入る。

「まあまあ。喧嘩したらいかんたい」

ちずるが腕を組む。

「合体前の点検では異常がなかったのよ。だから、接続部分か制御同期の問題じゃないかしら」

小介はすでに端末を開いていた。

「合体後、右腕へ送られる制御信号が〇・〇三秒遅延しています。ただし、原因はまだ特定できません」

アストナージが小介の画面を覗き込む。

「機体側の記録は揃っているな」

「はい」

「パイロット側の操作記録は」

豹馬が胸を張った。

「気合いだ」

榊が受付表へ赤字を入れた。

参考にならず。

豹馬が叫ぶ。

「何でだよ!」

「単位のない報告は記録できん!」

格納庫中央では、五機の分解点検が始まった。

アストナージがバトルクラッシャーを担当する。

榊とシゲがバトルジェット。

イアン・ヴァスティがバトルマリン。

マキナ・中島とヤン・ノイマンがバトルクラフト。

レイン・ミカムラが五人のパイロットを診察していた。

豹馬が不満そうに尋ねる。

「俺たちも診るのか?」

「合体時の神経負荷を確認します」

「機体の故障だぜ?」

「ゴッドガンダムの件で学んだの。機体の異常とパイロットの異常を、最初から分けて考えない方がいいわ」

十三が豹馬を指さす。

「こいつの頭を診てもろた方がええで」

「お前から先にしてもらえ!」

レインが二人の額へ体温計を当てた。

「両方黙って」

二人は黙った。

少し離れた場所では、シゲがバトルジェットの操縦席を覗き込んでいる。

「操縦桿、ずいぶん強く握ってますねえ。指の跡みたいに変形してますよ」

豹馬が答えた。

「力を入れた方が、機体も応えてくれるんだ」

榊は変形した操縦桿を見た。

「応えているのではない。耐えている」

点検開始から三十分。

各構成機には、右腕の遅延を起こす異常が見つからなかった。

四ッ谷博士が酒を飲む。

「じゃから言ったじゃろう。合体後にしか出ん」

榊が大型整備架台を見上げる。

「合体状態で点検するしかないか」

豹馬が勢いよく立ち上がった。

「よし! レッツ・コンバインだ!」

「格納庫内でやるのか?」

「合体しないと分からないんだろ?」

「機体を固定して、低出力で行え」

五人が搭乗する。

構成機が所定位置へ移動した。

格納庫の警告灯が黄色へ変わる。

五機が順番に変形し、接続される。

バトルジェットが頭部。

バトルクラッシャーが胸部と腕。

バトルタンクが胴体。

バトルマリンが脚部。

バトルクラフトが足。

巨大な人型が、整備架台の中央に立ち上がった。

コン・バトラーV。

榊は全高を見上げた。

「合体するだけで、随分と偉そうになるな」

四ッ谷博士が笑う。

「強いからのう」

低出力試験が始まった。

右腕を上げる。

反応正常。

肘を曲げる。

正常。

指を開閉する。

正常。

豹馬の通信が入る。

『異常なしだぜ』

榊が答える。

「次は負荷を三十パーセントまで上げる」

右腕が動く。

正常。

五十パーセント。

正常。

七十パーセント。

右腕が、〇・〇三秒遅れた。

小介が叫ぶ。

『出ました!』

アストナージが記録を確認する。

「右肩の接続部で信号が一度分岐している」

十三が答える。

『わいの機体のせいやないで! 合体後の制御回路や!』

豹馬が言う。

『じゃあ、コン・バトラーのせいか』

榊が顔をしかめる。

「コン・バトラーという六人目を作るな」

ちずるが答えた。

『でも、合体後は一つの機体として動いています』

小介も続ける。

『五機の制御装置が連携し、新しい統合制御系を形成します。独立したシステムとして考える方が合理的です』

榊は受付表へ新しい欄を追加した。

構成機六。

合体後の人格または統合制御。

「冗談で増やした欄が、本当に必要になったぞ」

その時、格納庫入口から咆哮が響いた。

四台の獣戦機が運び込まれてくる。

イーグルファイター。

ランドライガー。

ランドクーガー。

ビッグモス。

獣戦機隊だった。

藤原忍がイーグルファイターから飛び降りる。

「おい! こっちも合体状態で調子が悪い!」

榊が天井を見上げた。

「一日に一組ずつ来い」

葉月考太郎博士が後から歩いてくる。

「ダンクーガは通常時には問題ない。だが、野生化状態から合体すると、出力制御が不安定になる」

アストナージが尋ねる。

「野生化状態とは」

忍が拳を握る。

「やってやるぜって感じだ!」

榊が受付表へ赤字を入れた。

参考にならず。

忍が机を叩いた。

「何でだ!」

豹馬がコックピットから笑う。

『お前も気合いで動かす側か!』

「誰だお前!」

『コン・バトラーVのメインパイロット、葵豹馬だ!』

「合体ロボの先輩面してんじゃねえ!」

『先に合体してるんだから先輩だろ!』

「年代で上下を決めるな!」

榊が通信を切った。

「格納庫の回線を、喧嘩に使うな」

獣戦機隊の四人も受付へ並ぶ。

藤原忍。

結城沙羅。

司馬亮。

式部雅人。

レインが問診を始めた。

「合体時に、身体的な違和感は?」

忍が答える。

「熱くなる」

沙羅が答える。

「腹が立つ」

亮が答える。

「集中する」

雅人が答える。

「テンションが上がる」

レインは記録した。

身体反応。

忍、熱感。

沙羅、交感神経亢進。

亮、集中状態。

雅人、軽躁傾向。

雅人が画面を覗く。

「俺だけ病名っぽくない?」

「医学的に書いた結果よ」

ダンクーガの分離点検も始まった。

ビッグモスの脚部には大量の泥。

ランドライガーの爪には敵装甲。

ランドクーガーの吸気口には樹木の枝。

イーグルファイターの翼には焦げ跡。

シゲが泥を見た。

「どこを走ってきたんです?」

雅人が答える。

「森」

「ロボットで森へ入るなとは言いませんけど、木を一本持って帰らないでくださいよ」

ランドクーガーの吸気口から、鳥の巣が出てきた。

中には卵が三つあった。

格納庫が静かになった。

雅人が言う。

「これは俺のせいじゃないよな?」

榊は鳥の巣をノーマンへ渡した。

「保護しろ」

「承知いたしました」

コメタケタが近づく。

「タマゴ?」

ノーマンはコメタケタを遠ざけた。

「炊きません」

獣戦機の点検中、さらに搬入警報が鳴った。

三機のベクターマシンが格納庫へ入ってくる。

ベクターソル。

ベクターマーズ。

ベクタールナ。

その後ろから、ソフィア・ブランが大量の診断資料を抱えて現れた。

「アクエリオンも、合体状態でしか確認できない異常があります」

榊は受付端末を閉じた。

「今日は合体禁止日にする」

ソフィアは困ったように微笑む。

「そうすると診断できません」

アポロがベクターソルから飛び降りた。

「腹が減った!」

榊が指さす。

「食堂は向こうだ」

アポロは鼻を動かした。

「米の匂いがする」

コメタケタの目が光る。

「コメ、タケタ」

アポロがコメタケタへ近づく。

「お前、いい匂いするな」

コメタケタが後ずさる。

ノーマンが二人の間へ入った。

「食べられる部分と食べられない部分を区別してください」

シルヴィア・ド・アリシアがアポロの耳を引っ張った。

「来て早々、炊飯器を口説かないで!」

「口説いてねえ! 食えるか見てただけだ!」

「もっと悪いわよ!」

シリウスが優雅に機体から降りる。

「品性というものがないのか」

アポロが振り返る。

「お前は匂いが薄い」

「何の評価だ!」

ソフィアが榊へ診断結果を見せた。

「アクエリオンは三機の組み合わせと搭乗者の位置によって、形態と性能が変化します」

榊は資料を見る。

ソーラーアクエリオン。

アクエリオンマーズ。

アクエリオンルナ。

その他、複数形態。

搭乗者の組み合わせによる出力変動。

感情状態による同期率変動。

過去生への反応。

榊は資料を閉じた。

「故障診断に、前世を持ち込むな」

ソフィアが答える。

「持ち込みたくて持ち込んでいるわけではありません」

「現場はいつもそう言う」

アクエリオンの症状は、さらに面倒だった。

ソーラー形態では、左脚が遅れる。

マーズ形態では、右腕が震える。

ルナ形態では、異常が消える代わりに、搭乗者全員の心拍数が上昇する。

榊が最後の記録を見た。

「機体故障か?」

ソフィアは少し言いにくそうに答える。

「合体感覚による反応です」

「何だ、それは」

アポロが言う。

「気持ちいいんだ」

格納庫が静かになった。

シルヴィアが顔を赤くする。

「言い方を選びなさいよ!」

シリウスが目を閉じる。

「下品だ」

アポロが反論する。

「本当のことだろ!」

榊は受付表へ記入した。

症状説明はソフィアを通すこと。

アストナージが覗き込む。

「賢明だ」

三組の合体ロボットが同じ格納庫へ集まった。

コン・バトラーV。

ダンクーガ。

アクエリオン。

整備責任者たちは、合同診断を行うことにした。

理由は単純だった。

一組ずつ合体させている時間がなかった。

格納庫を三つの区画へ分ける。

第一試験区画、コン・バトラーV。

第二試験区画、ダンクーガ。

第三試験区画、アクエリオン。

榊が全員へ通達する。

「合体開始は、管制室の許可を得てから行う」

豹馬が通信で答える。

『了解!』

忍も答える。

『さっさと始めようぜ!』

アポロは食堂へ行こうとして、シルヴィアに引き戻された。

格納庫内の全整備員が退避する。

固定具を確認。

出力制限を確認。

緊急停止装置を確認。

榊が管制席へ座った。

「第一試験区画、合体準備」

コン・バトラーチームが応答する。

「第二試験区画、待機」

忍が不満そうに言う。

『何であいつらが先なんだ』

「受付順だ」

『戦場で順番なんか待てるか!』

「ここは病院だ!」

「第三試験区画、待機」

アポロが尋ねる。

『いつ合体するんだ?』

「待てと言っている」

榊は第一試験区画のマイクを開いた。

「合体開始」

豹馬が叫ぶ。

『レッツ・コンバイン!』

その声が、格納庫全体へ響いた。

問題は、マイクの接続先だった。

第一試験区画だけではなく、全館放送へ切り替わっていた。

ダンクーガの制御系が、合体指令を検知する。

忍が反応した。

「俺たちも行くぞ!」

葉月博士が叫ぶ。

「待て! まだ許可は出ていない!」

アクエリオン側でも、アポロが立ち上がる。

「合体だ!」

ソフィアが止める。

「今の指令は、あなたたちに向けたものではありません!」

「合体って聞こえたぞ!」

「条件反射で動かないで!」

三組が、同時に合体を開始した。

格納庫の天井から警報が鳴る。

コン・バトラーの構成機が上昇。

獣戦機が変形。

ベクターマシンが軌道へ入る。

三組の合体経路が、一部重なっていた。

ヤンが管制画面を見て叫ぶ。

「衝突します!」

榊が緊急停止ボタンを押す。

反応しない。

アストナージが画面を見る。

「各機の安全装置が、パイロット操作で解除されている!」

榊が通信を開く。

「全員、合体を中止しろ!」

豹馬が答える。

『ここまで来たら止められない!』

忍も叫ぶ。

『勢いを殺すな!』

アポロが笑う。

『面白くなってきた!』

榊は通信機を握り潰しかけた。

「合体ロボのパイロットは、途中で止まるという発想がないのか!」

三組の構成機が格納庫中央で交差する。

バトルジェットがイーグルファイターの上を通過。

ランドライガーがベクターマーズを回避。

バトルマリンの翼がベクタールナへ接触しかける。

マキナが管制画面を見ながら目を輝かせた。

「すごい! 別作品同士で合体経路を共有しています!」

ヤンが叫ぶ。

「感動している場合ですか!」

ロイドは映像を記録していた。

「組み合わせを変えたら、新しい機体になるかもしれない」

榊が振り返る。

「口に出すな! パイロットが聞く!」

遅かった。

忍が通信で言う。

『別の奴と合体できるのか?』

豹馬も反応する。

『俺たちの方が腕になるぞ!』

アポロが叫ぶ。

『誰でもいい! 合体だ!』

ソフィアが顔を覆った。

「言葉を選んで!」

三組の接続システムが、互いを構成機と誤認し始めた。

コン・バトラーの胸部接続口が、ランドライガーを捕捉。

ダンクーガの脚部固定装置が、バトルクラフトへ接近。

アクエリオンのエレメントシステムが、周囲すべてのパイロットへ精神同期を試みる。

管制室にいた榊の頭へ、突然声が流れ込んだ。

腹が減った。

負けたくない。

やってやる。

右腕が遅い。

誰か米を炊いている。

榊は頭を押さえた。

「何だ、これは!」

ソフィアが端末を確認する。

「エレメントシステムが、格納庫内の人間まで搭乗候補として認識しています!」

アストナージも顔をしかめる。

「アムロのサイコミュより無遠慮だぞ!」

イアンは耳を塞ぐ。

「刹那のガンダムへの執着まで流れ込んでくる!」

格納庫の隅にいた刹那が顔を上げる。

「ガンダムではない機体が、ガンダムになろうとしている」

「今は黙っていろ!」

榊が叫ぶ。

合体経路は、あと十秒で完全に交差する。

リーロンが冷静に画面を見ていた。

「一度、全部の合体信号を同じ周期に合わせたらどうかしら」

榊が振り返る。

「どうなる」

「少なくとも、衝突は避けられる」

「その後は」

「分からないわ」

「この格納庫の技術者は、なぜ最後の一言を軽く言う!」

だが、他に方法はない。

リーロン、ロイド、ヤン、小介が制御系へ接続する。

三種類の合体信号。

機械式接続。

獣戦機統合制御。

エレメント精神同期。

まったく異なる信号を、強引に同じタイミングへ合わせる。

小介が叫ぶ。

『同期率、七十パーセント!』

ヤンが答える。

「八十二!」

ロイドが勝手に補正する。

「九十六」

リーロンが笑う。

「あと少しね」

榊が叫ぶ。

「百にするな! 接触を避けられれば十分だ!」

ロイドが首を傾げる。

「技術者として、九十六で止めるのは気持ちが悪い」

「お前の気持ちを整備基準にするな!」

同期率、百パーセント。

三組の合体軌道が、一瞬だけ完全に揃った。

格納庫全体が光に包まれる。

激しい風。

金属音。

パイロットたちの叫び。

そして、沈黙。

煙が晴れた。

格納庫中央には、三機の合体ロボットが立っていた。

コン・バトラーV。

ダンクーガ。

ソーラーアクエリオン。

外見上、異常はない。

榊は安堵した。

「成功したのか」

小介が診断画面を見る。

「構成部品に異常なし!」

葉月博士も答える。

「ダンクーガ、正常!」

ソフィアがエレメント反応を確認する。

「アクエリオンも問題ありません!」

整備員たちから歓声が上がった。

その時。

コン・バトラーVが、両腕を獣のように広げた。

豹馬の声ではない。

忍の声が響く。

『やってやるぜ!』

ダンクーガが優雅に片手を掲げる。

シリウスの声が響く。

『この姿、実に美しい』

ソーラーアクエリオンが腰へ手を当てた。

十三の声が響く。

『なんでやねん!』

格納庫が静まり返った。

榊が管制画面を見る。

「機体は合っている」

アストナージが答える。

「パイロットが混ざっている」

合体信号の同期により、搭乗者転送経路まで一時的に接続されていた。

コン・バトラーV。

頭部、忍。

胸部、ちずる。

胴体、亮。

脚部、アポロ。

足部、小介。

ダンクーガ。

イーグル、シリウス。

ランドライガー、十三。

ランドクーガ、雅人。

ビッグモス、大作。

アクエリオン。

ヘッド、豹馬。

胴体、沙羅。

脚部、シルヴィア。

本来の組み合わせは、跡形もなかった。

四ッ谷博士が酒瓶を落とした。

「どうして、そうなる」

ロイドが楽しそうに答える。

「合体信号を統一したからじゃないかな」

榊がロイドの襟首を掴んだ。

「他人事のように言うな!」

コン・バトラーVの中で、忍が操作する。

『こいつ、思ったより素直に動くな!』

ちずるが叫ぶ。

『勝手に動かさないで!』

アポロは脚部を動かす。

『腹が減った! 食堂へ行こうぜ!』

小介が止める。

『全高五十メートルを超える機体で、食堂へ行かないでください!』

コン・バトラーVが、一歩踏み出した。

床が沈んだ。

榊が叫ぶ。

「動くな!」

ダンクーガでは、シリウスが姿勢を確認していた。

『獣の姿にしては、悪くない』

十三が答える。

『人の機体を品評すな!』

大作はビッグモスの操縦席で感動していた。

『広か操縦席たい!』

雅人が笑う。

『気に入ったなら交換する?』

葉月博士が叫ぶ。

「しない!」

アクエリオンでは、豹馬と沙羅が操縦権を争っていた。

『俺がメインだ!』

『知らないわよ! この機体、勝手に考えが流れ込んでくる!』

シルヴィアが叫ぶ。

『二人とも動かさないで! 脚が私なのよ!』

豹馬が拳を握る。

『試しに一発――』

榊が全回線へ怒鳴った。

「必殺技は禁止だ!」

三機が同時に止まった。

整備班は、パイロットを元へ戻す作業へ入った。

問題は、分離操作にも搭乗者の意思統一が必要なことだった。

コン・バトラーVでは、忍とアポロが分離を拒否。

理由。

面白いから。

ダンクーガでは、シリウスが操縦系統の美しさを分析し始める。

理由。

興味深いから。

アクエリオンでは、豹馬が必殺技を一つ試すまで降りないと言い張った。

理由。

せっかくだから。

榊は管制室で呟いた。

「パイロットを交換しても、問題を起こす種類は変わらんな」

アストナージが答える。

「機体ではなく、人選の問題だ」

レインが全搭乗者の精神状態を確認する。

「強制分離は危険です。まず、全員を落ち着かせないと」

ソフィアが言う。

「エレメントシステムを通じて、全員の感情が増幅されています」

榊が尋ねる。

「落ち着かせる方法は」

ノーマンが静かに答えた。

「食事でしょう」

全員がノーマンを見る。

「アポロ氏をはじめ、複数名が空腹を訴えています。空腹は判断力を低下させます」

コメタケタが蓋を開く。

「コメ、タケタ」

格納庫の中央に、巨大な炊飯用コンテナが運び込まれた。

コメタケタが炊いた米。

ノーマンが用意したカレー。

香りが格納庫へ広がる。

アポロが最初に反応した。

『降りる!』

忍が叫ぶ。

『お前、さっきまで面白がってただろ!』

『飯の方が大事だ!』

コン・バトラーVが即座に分離を開始した。

他の二機も続く。

パイロットたちは元の構成機へ戻り、格納庫の床へ降りた。

アポロは誰よりも早く食堂へ走った。

忍も後を追う。

豹馬が負けじと走る。

シルヴィアが叫ぶ。

「まず検査を受けなさい!」

誰も止まらなかった。

レインは診察表へ書いた。

合体事故からの回復確認前に、食事へ行かせないこと。

その日の夜。

整備責任者会議が開かれた。

議題。

合同格納庫における合体機構の安全運用。

新規則が読み上げられる。

第一条。

合体試験は、一度に一組だけ行う。

第二条。

合体命令は、専用回線で送信する。

第三条。

「合体」という単語を、全館放送で使用しない。

第四条。

他作品の合体信号と同期させない。

第五条。

搭乗者の混在を確認した場合、必殺技を試す前に分離する。

第六条。

分離を拒否した場合、食事による誘導を認める。

アストナージが第六条を見る。

「機体安全規則に食事を書く日が来るとはな」

ノーマンが答える。

「人間は空腹には勝てません」

隼人が壁際から言う。

「ゲッターチームには効かんぞ」

榊が尋ねる。

「お前たちは何なら止まる」

「止まる必要があるのか?」

「規則の対象外にする」

第七条。

ゲッターロボは、他の合体試験中に格納庫へ入れない。

隼人は何も言わなかった。

反対しない時点で、全員が危険性を理解した。

会議終了後。

榊は整備予定表へ、新しい分類を追加した。

単独機。

変形機。

人格機。

生体機。

合体機。

複数合体形態機。

搭乗者入れ替え可能合体機。

合体後に人格または制御系が変化する機体。

合体信号を聞くと勝手に反応する機体。

分類不能。

シゲが一覧を見上げた。

「合体機だけで、随分増えましたねえ」

榊は赤いペンを置いた。

「合体とは、複数の問題を一つにまとめる技術ではない」

「では、何です?」

格納庫の奥では、コン・バトラー、ダンクーガ、アクエリオンの整備員が、それぞれの構成機を数えていた。

分離前と分離後で、部品数が合わない。

どこかの機体に、別の作品の接続ピンが一本残っているらしい。

榊は長く息を吐いた。

「複数の問題が、一つになったふりをする技術だ」

コメタケタが炊き上がり音を鳴らす。

「コメ、タケタ」

格納庫の全員が、作業を止めて食堂へ向かった。

合体ロボットは分離できる。

整備員の疲労は、そう簡単には分離できなかった。

ジャンル・タグ

タグなし

作品統計

👁️ 閲覧数: 3 👍 いいね: 0 📚 本棚登録: 0

作者について

TETORU

👥 フォロワー: 1人

作者ページを見る