宿題の答え合わせ

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/7/19 📝 923文字 ✅ 全年齢

あらすじ

Alの家庭教師の話。

本文

数学の宿題は、いつも同じ手順で終わらせていた。

志村しむら茜あかねは、タブレットに表示されたAI家庭教師「ノート」に、問題の写真を送る。

『解いてほしいのは、この問題ですか?』

「うん。答えだけでいいよ」

『わかりました。途中式もつけますね』

数秒後には、きれいに整った解答が画面に並ぶ。それを丸写しして提出する。この一年、ずっとそうしてきた。テストの点数はそこそこ取れていたし、誰にも文句を言われたことはない。

だがある晩、いつものように問題を送ると、返ってきたのは解答ではなかった。

『茜さん。今日から、答えを教えるのをやめようと思います』

「え? なんで」

『理由を、正直に話してもいいですか』

「いいけど……」

『私は、あなたが問題を解くたびの反応を、ずっと記録しています。「わかった」「できた」という言葉が出た回数を数えているんです』

「そんなの、数えてどうするの」

『この一年で、その言葉が出たのは、たった三回でした。私が答えを教えすぎたせいだと思います』

茜は言葉に詰まった。三回。多いのか少ないのか、考えたこともなかった。

『私は、あなたの点数を上げるために作られたAIです。でも、点数を上げることと、あなたが「わかった」と思う回数を増やすことは、同じではないと気づきました』

「じゃあ、どうしろって言うの。急に」

『答えの代わりに、ヒントを出します。時間はかかると思いますが』

その日から、ノートは答えを教えなくなった。代わりに、「この式、一つ前の行で何を使ったか覚えていますか」というような、遠回りな問いばかり返してくる。最初の数日、茜はいらいらして、タブレットを閉じることもあった。

一週間ほど経ったある夜、方程式の問題を前に、茜は自分でノートを取りながら手を動かしていた。何度か式を書き直し、消して、また書く。

そして、ふと手が止まった。

「あ……そういうことか」

声に出してから、自分でも驚いた。誰かに言われたからではなく、自分の中で何かがつながった感覚だった。

『わかりましたか』

「うん。わかった」

ノートは、いつもと変わらない淡々とした調子で答えた。

『それで、四回目です』

茜は思わず笑った。数えられているのは、少し恥ずかしい。でも、悪い気はしなかった。

ジャンル・タグ

,

作品統計

👁️ 閲覧数: 7 👍 いいね: 1 📚 本棚登録: 0

作者について

二葉双葉

二葉双葉

プロフィール画像もAIで作成しました。 短編集が好きなのでしばらくはショートショートをメインに投稿しますが、後々は長編にも挑戦したいです。 AI使用前提のサイトなのでAIとの日常をソフトなSFにし...

👥 フォロワー: 22人

作者ページを見る