玉座は座標(x, y)に寄せてくれ――袁術様の高度な戦術的移動演算――
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あらすじ
「朕の気運が下がるのだ!」 戦場のど真ん中で、皇帝・袁術が要求したのは「右に3度、座標 (x+5, y-2) へのスライド」だった。 高度な空間制御理論に基づく「動的要塞化」なのか、それとも単なるワガママな肉体労働なのか。 参謀たちが恐れ慄く袁術軍の真実と、玉座を担ぐ兵たちの悲劇を描く、抱腹絶倒の三国志コメディ!
本文
玉座は座標 (x, y) に寄せてくれ
曹操軍の陣営にて、斥候が震えながら報告している。
「……あり得ません。袁術の軍勢、本日も我が軍の包囲網を『直角』に旋回し、完全にすり抜けていきました」
眉をひそめ、曹操は疑問を口にした。
「精鋭を引き連れていながら、なぜあんな敗走軍を捕らえられん?」
「袁術軍の移動、すべてが数学的な陣形なのです!」
「敵の攻撃ベクトルに対し、常に袁術を盾にして……」
「いや違う!最高位の『防壁』として最適角度で配置し、物理的な死角をゼロにしている。」
「あれは単なる逃走ではない……高度な空間制御理論に基づく『動的要塞化』です!」
袁術恐るべし、曹操軍の参謀達は誰もが恐れ慄いている。
その頃、当の袁術軍。
「違う! 違うのだ陳紀! 朕(ちん)の椅子が! 朕の椅子が北を向いておる!」
「袁術様、今は北から曹操軍が来ています! その向きだと対応できません!」
「うるさい! 朕の気運が下がるのだ! 右に3度、座標 (x+5, y-2) に朕をスライドさせろ!」
陳紀が叫び、雷薄が玉座の脚を滑らせる。
袁術は、敵の矢が飛び交う戦場の中で、玉座の上から「風水が悪い!」と喚き散らしている。
「……陳紀、今のズレは 0.1 秒遅かったぞ。敵の矢が、陛下の冠を掠めた」
「すまん雷薄! 陛下が『今の位置だと顔が良く見えない』と、重心を前に出しやがったんだ!」
「あのバカ……! 朕の顔より、まずは生存率の演算をしろ!」
二人が必死に「皇帝」という名の巨大な荷物を動かす姿を、遠くから双眼鏡で覗いていた曹操軍の参謀達は、
「見てください! あの目まぐるしい位置調整! 袁術という核を常に最適な『防壁』にしている……」
「あれは必ず皇帝を守るという、古代秘伝の『八卦移星陣(はっかいせいじん)』ではないか?」
「陣形の回転一つ一つが、天体の運行と連動して計算されている!」「
「あの配置では、逆に我が軍が動けない!」
曹操軍にとっては、「恐るべき皇帝護衛演算を起動している袁紹軍」
袁紹軍にとっては、「ワガママな重荷を運ぶための、命がけの肉体労働」
「陳紀! 次の座標 (x', y') だ! あそこの掘っ立て小屋の柱を軸にして、陛下を左に30度傾ければ、敵軍の突撃路を完全に物理遮断できるぞ!」
「おお!これなら敵の戦術級突撃ベクトルを相殺できる。天才か、雷薄!」
「……俺はただ、もうこれ以上、このブタ野郎を運びたくないだけだ」
曹操軍が「奴らは計り知れん……」と戦慄している隙に、陳紀と雷薄は、ひーひー言いながら玉座を担ぎ、矢の雨が降る荒野を駆けていく。
「陳紀! 朕が揺れておるぞ! 揺れを吸収する防振演算をかけろ!」
「陛下、黙って座っていてください。生存率が下がります!」
「朕を誰だと思っておる! 皇帝だぞ!」
袁術を捉えれぬまま夕闇の中、曹操軍は「あの完璧な陣形を崩す手立てが見つからない」と夜通し会議を開いていた。
玉座の上でふんぞり返る袁術を運びながら、雷薄がささやいた。
「……なあ、陳紀。『皇帝』を座標 (0, 0) に置いて逃げないか?」
「……それが最適解かも知れん。」
(完)
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