林武君の母親の表紙画像

林武君の母親

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/7/24 📚 シリーズ: イケメンにも恋の病は必要だよね! 📝 2,177文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

大学2年生の橘ひなたは、ごく普通の女子大生。ある日、学校一のイケメンと噂される林武蓮と同じゼミになったことで、自然と彼を意識するようになる。 しかし蓮は恋愛に全く興味がなく、女の子から告白されても断り続けるクールな男。ひなたが話しかけても素っ気ない態度ばかり。 それでも一緒にいる時間が増えるうちに、ひなたは彼の不器用な優しさに少しずつ惹かれていく。 恋愛に無関心なイケメンが、初めて「恋の病」にかかるまでのドキドキラブコメ!

本文

その日、ひなたは講義が終わった後、なんとなく林武の後をついていた。

ついていた、というのは少し語弊がある。たまたま帰る方向が同じで、たまたま林武が前を歩いていて、たまたまそのまま並んで歩くことになっただけだ。

「今日、バイトは?」

「休み。久しぶりに早く帰れる」

「……そうか」

二人で並んで、キャンパスの外へ続く道を歩いた。夕方の空はまだ明るくて、春に近づいてきた空気が少し柔らかかった。

キャンパスの門を出たところで、林武が不意に足を止めた。

「……母さん」

ひなたも足を止めた。

門の脇に、一人の女性が立っていた。五十代くらいだろうか。背筋がまっすぐに伸びていて、きちんとしたコートを着ている。髪は綺麗にまとめられていて、表情は穏やかに見えたが、目だけは違った。値踏みするような、静かな鋭さがあった。

「武、ちょうどよかった。少し話があって」

「……なんで来た」

「近くに用があったから。ちょっとだけ時間ある?」

林武の表情が、一瞬だけ固まったのをひなたは見逃さなかった。いつもの無表情とは違う。もっと深いところで、何かが閉じていくような顔だった。

林武の母親がひなたに気づいた。

「あら、お友達?」

「……同じ講義の人」

「そう」

母親はひなたをざっと見て、にこりとした。表面上は丁寧な笑顔だった。でも、ひなたはなんとなく、その笑顔の奥にある温度の低さを感じた。

「橘です。はじめまして」

「林です。武がお世話になってます」

「いえ、こちらこそ」

短いやり取りだった。母親の視線がひなたからさっと外れて、林武に戻った。

「武、少しだけいい?」

「……何の話」

「春休みのこと。帰ってくるでしょ?」

「……考える」

「考えるじゃなくて、はっきりして。お父さんも待ってるからさ」

林武は何も言わなかった。ひなたは少し離れた場所に立って、自分のスマートフォンを眺めるふりをした。聞くつもりはなかったけれど、声は聞こえてきた。

「帰ってきたら、ちゃんと部屋の整理もしてほしいし。あと就職のことも、そろそろ真剣に考えないと。あなたの将来のことだから、お母さんも心配だから言ってるのよ」

「……わかってる」

「わかってるなら、なんで返信が」

「……忙しかった」

「忙しいのはわかるけど、親への連絡くらいできるでしょ」

林武は何も言わなかった。ひなたはスマートフォムの画面を見つめたまま、横目でそっと様子を窺うかがった。

林武の顔が、どんどん固くなっていくのがわかった。言葉を返せば返すほど、どこか疲弊していくような、そんな顔だった。

これが、お母さんか。

番外編で話してくれたわけではないけれど、林武が以前匂わせていた言葉を思い出した。誰かと深く関わることに踏み込めない。親を見ていて、そう感じるようになった。

今、目の前で見ている光景が、その言葉の意味を少し教えてくれた気がした。

悪い人ではないのだろう。子供のことを心配している、それは本当なのだと思う。でも、その心配の形が、少し息苦しかった。

「とにかく、春休みは帰ってきなさい。話はそれだけ」

「……わかった」

「連絡、ちゃんとするのよ」

「……する」

「じゃあ、お友達もいるから行くわね」

母親がひなたの方に向き直って、また丁寧な笑顔を向けた。

「橘さん、武と仲良くしてあげてね。この子、不愛想だから」

「いえ、そんなことないです」

「あら、そう言ってくれると助かるわ」

母親はそれだけ言って、来た道を戻っていった。その背中が見えなくなるまで、林武はずっと黙って立っていた。

ひなたもしばらく黙っていた。

何か言うべきか、それとも言わない方がいいか。迷ったけれど、今は言葉よりも先にすることがある気がした。

「ねえ、コンビニ寄っていかない?」

林武がひなたを見た。

「……コンビニ」

「なんか買いたくて。アイスとか」

「……今の季節にアイスか」

「寒い時のアイスが一番美味しいんだよ」

林武はしばらくひなたの顔を見ていた。それから、小さく息を吐いた。

「……わかった」

二人で近くのコンビニに入った。ひなたはアイスのコーナーに向かって、チョコのアイスバーを二本取った。一本を林武に渡すと、林武は少し戸惑った顔をした。

「……いいのか」

「奢り。今日くらいは」

「……今日くらい、とは」

「なんとなく」

それだけ言って、ひなたはアイスの包装を開けた。林武もしばらく眺めてから、包装を開けた。

コンビニの前のベンチに並んで座って、二人でアイスを食べた。会話はなかった。でも、ひなたはそれでいいと思っていた。今日は、隣にいるだけでよかった。

「……母さんのこと、見てたか」

しばらくして、林武が言った。

「ちょっとだけ」

「……そうか」

「うん」

林武はアイスを一口食べて、前を向いたまま続けた。

「……変な感じだっただろ」

「そんなことない」

「……本当か」

「本当。心配してるんだなって、思った」

林武は何も言わなかった。ひなたも何も付け加えなかった。

ただ、アイスを食べながら、夕暮れの空を二人で眺めた。

「美味しかった」とひなたが言った。

「……ああ」

「また寒い日に食べよう」

「……お前は変なやつだな」

「それ、何回目」

林武が小さく口元を緩めた。それだけで、さっきまでの固い表情が、少し和らいだ気がした。

立ち上がりながら、ひなたは思った。今日のことは、何も聞かなくていい。ただ、隣にいられたことで、少しでも楽になってくれていたらいい。

ほんと、それだけ。

ジャンル・タグ

,

作品統計

👁️ 閲覧数: 0 👍 いいね: 0 📚 本棚登録: 0

作者について

たかの岳

毎日1話投稿! AI連載作品をたくさん出したいなと思います!

👥 フォロワー: 2人

作者ページを見る