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温泉のやすらぎ

小説投稿サイト「あいぺん」に投稿された作品

📅 公開日: 2026/7/27 📚 シリーズ: イケメンにも恋の病は必要だよね! 📝 1,988文字 🤖 AI創作支援作品 ✅ 全年齢

あらすじ

大学2年生の橘ひなたは、ごく普通の女子大生。ある日、学校一のイケメンと噂される林武蓮と同じゼミになったことで、自然と彼を意識するようになる。 しかし蓮は恋愛に全く興味がなく、女の子から告白されても断り続けるクールな男。ひなたが話しかけても素っ気ない態度ばかり。 それでも一緒にいる時間が増えるうちに、ひなたは彼の不器用な優しさに少しずつ惹かれていく。 恋愛に無関心なイケメンが、初めて「恋の病」にかかるまでのドキドキラブコメ!

本文

旅館に着いたのは、昼過ぎだった。

山の中腹にある小さな旅館で、建物は古いけれど手入れが行き届いていた。玄関を入ると、畳の匂いと木の香りが混じったような、落ち着いた空気が漂っていた。

「いい感じだね」とひなたが言うと、林武が小さく頷いた。

「……悪くない」

チェックインを済ませて、仲居さんに部屋まで案内してもらった。部屋は隣同士だった。廊下で別れる時、林武が「夕食は何時だ」と聞いてきた。

「六時だって。それまで自由にしていていいみたい」

「……わかった」

林武は自分の部屋に入っていった。ひなたも自分の部屋に入って、荷物を置いた。

部屋は和室で、窓から山の景色が見えた。まだ雪が残っている山の頂が、遠くに白く光っていた。縁側に出ると、冷たい空気が頬をなでた。

来てよかったな。

ひなたはそう思いながら、お茶を一口飲んだ。

しばらくぼんやりと景色を眺めてから、ひなたは温泉に行くことにした。夕食まではまだ時間がある。せっかく来たのだから、早めに入っておきたかった。

大浴場は、旅館の一番奥にあった。暖簾をくぐって中に入ると、脱衣所はひなた一人だった。時間帯のせいか、他に客はいないようだった。

湯船に浸かった瞬間、体の力がふっと抜けた。

「……気持ちいい」

思わず声が出た。お湯は少し熱めで、全身がじわじわと温まっていく。窓の外には木々が見えて、風が吹くたびに枝が揺れていた。

ひなたは目を閉じた。

何も考えなくていい時間だった。講義のこと、バイトのこと、将来のこと。そういうものが全部、湯気の中に溶けていくような気がした。

しばらくそのまま浸かっていると、自然と林武のことが頭に浮かんできた。

強制的に考えようとしたわけではなかった。ただ、ぼんやりとした意識の中に、自然と彼の顔が浮かんできた。

今頃、何してるんだろう。

部屋でのんびりしているのか、それとも外の景色を眺めているのか。林武が旅館でくつろいでいる姿というのが、なんとなく想像しにくかった。いつも静かで、どこにいても落ち着いているように見えるけれど、こういう場所ではどんな顔をするのか。

お母さんと会ってから、ずっと気になっていた。

あの日の林武の顔。門の前で固まった表情。お母さんの言葉を受け止めながら、少しずつ疲弊していくような目。コンビニでアイスを食べながら、少しだけ和らいだ横顔。

春休みに実家に帰るのだろうか。帰ったら、またあの空気の中に戻るのだろうか。

しんどくないといいな。

ひなたはそう思いながら、お湯の中で足を伸ばした。

林武のことを心配している。それは確かだった。でも、それだけじゃないことも、今はわかっていた。心配と、好きという気持ちが、ひなたの中でぐるぐると混ざり合っていた。

最初に隣の席に座って、「なに」と言われた時のこと。カフェで見かけて、必死に目を逸らそうとしたこと。告白されているのを見て、嫌だと感じたこと。熱を出した時に家まで送ってもらったこと。バレンタインに手作りのチョコを渡した時、「嬉しい」と言ってくれたこと。

色々なことが、ぽつぽつと頭の中に浮かんできた。

最初は感じ悪いと思っていた人が、いつの間にかこんなに大切な存在になっていた。自分でも不思議だった。でも、不思議だとは思っても、後悔はなかった。

湯気が白く立ち上っている。窓の外の木々が、また風に揺れた。

林武も、この旅館に来てよかったと思ってくれているだろうか。

気分転換になっているだろうか。少しでも、肩の力が抜けているだろうか。

そんなことを、ぼんやりと考えていた。結論を出そうとしているわけではなかった。ただ、湯船の中で、林武のことをただ思い浮かべていた。

それだけで、なんだか温かい気持ちになった。お湯の温かさとは、少し違う温かさだった。

どのくらい経っただろうか。のぼせる前に出なければと思って、ひなたはゆっくりと立ち上がった。

脱衣所に出ると、少し頭がくらりとした。長く入りすぎたかもしれない。冷たいタオルで顔を拭いて、ひなたは着替えた。

廊下に出ると、ちょうど向こうから林武が歩いてくるのが見えた。手にタオルを持っている。温泉に行くところなのだろう。

「あ、今から?」

「……ああ」

「ゆっくり浸かってくるといいよ。気持ちいいから」

林武がひなたの顔をちらりと見た。

「……顔、赤いぞ」

「のぼせた。長く入りすぎた」

「……気をつけろ」

「うん。じゃあ部屋戻るね」

「……ああ」

林武は大浴場の暖簾をくぐっていった。ひなたはその背中を見送ってから、自分の部屋に戻った。

縁側に出て、山の景色を眺めながら、ひなたはさっき温泉の中で考えていたことをもう一度思い返した。

特に結論は出なかった。でも、それでよかった。

ただ、林武のことを考えながら温泉に浸かっていた、それだけの時間が、なんだかとても贅沢な気がして、ひなたは小さく笑った。

夕食まで、あと一時間。

山の空気は冷たくて、でも部屋の中は温かかった。

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作者について

たかの岳

毎日1話投稿! AI連載作品をたくさん出したいなと思います!

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